シリアは政治に翻弄されて、国民は遺棄されてしまった。アナ
ンが放棄し、国連がまったく手を出せない状態になったのである。ロシアが、自国の艦船が地中海で帰国できるところを、確保したい。中国がこれに同調する。
イランは、レバノン支援のためには、シリアの地は不可欠である。レバノンはパレスチナ支援のために、イランの支援が欠かせない。
少数宗派のアサドは非支配地域で、自らの出自のアラウィー
派の人たちが殺害されているため、攻撃の手を休めない。反アサドは、これらの殺害をネットで流し、自由シリアが殺害されているとしているフシがある。
イランはイラクと対峙する歴史があるが、アメリカ侵攻の時にはかなり、シリアに助けられている。
イスラエルは、こうした混乱が微妙にバランスを保っていてくれる状況を巧みに利用していた。彼らはシリアが混乱する状況は好んではいないが、ヒズボラ支援のイランが手詰まりになるのは喜んでいる。
アメリカと西欧は、カダフィとアサドを資源の過多と、地政学的な複雑さから、全く異なる姿勢を示している。反政府側の再三の要請にもかかわらず、空爆などの支援をやらない。
かつて訪れたことのある、ロレンスが駆け抜けたシリア砂漠の民善良なベドウィンの子供たちが、大量に殺害されているのかと思うといたたまれない。
要するにシリアは、西欧列強が強引に国境をつくり国家を建設させたのであるが、地政学的に周辺国家や民族にとって都合のいい国家であったのである。
それが崩壊すると困る国家と、これを利用しようとする国家のせめぎ合いの中で、多くの人々が無為な殺戮にあっているのである。
国家は国民を救うことなく、国家の都合や権力者の意思で遺棄するのである。