読んだ本は、橋本治の「橋」近著です。
著者は1948年東京生まれ。
彼の名前を知ったのは「桃尻娘」とか、奇を衒ったタイトルの本の出版のときです。70年頃の学生運動の時代は、映画では高倉健や藤純子のヤクザ映画全盛でもありました。そのころ、私の大学の美術部にサイケデリックな色調の東大駒場祭のポスター「とめてくれるなおっかさん 背中の銀杏がないている 男東大どこへいく」が、貼ってありました。私は諧謔的で上手いなー、と眺めていた記憶があります。
そのポスターの製作者が橋本治という学生だったと知ったのは、作家としてデビューの話題の時だったと思います。その後、小説や評論の文筆業で身を立てるひとになったと知っているものですから、彼の生い立ちが絡んでいる内容かしら、という私的興味もあって、読書会の課題本として、仲間に推薦したのですが、違っていました。因みに、私はこれまで彼の本を読んではいません。
あのころの東大は(地方の私の大学も、規模こそ違え)学生運動で荒れていて、69年3月の卒業式も入試もなく、4月に入学する新入生はいないのです。大企業に就職するのは資本家側に加担することになるから、と、企業に就職するのを嫌う人種もいました。今、政権の中枢にいらっしゃる仙谷由人さんは、東大中退だと、最近知りました。年齢から察すると、その頃に学生時代をすごしていらっしゃいます。季節はずれの時期に卒業式があったり、安田講堂で卒業式という集会をすると、何が起こるかと危惧した大学は、証書だけを交付したりと、そんな時代だったのです。
そんな大学キャンパスで、件のキャッチコピーで時の人になった彼はどういう人かな、という興味で読み始めたのでしたが・・・。
この本の内容は、数年前に起きた殺人事件が基になっている話です。かつて、三島由紀夫が金閣寺を書いたように。
ひとつは、新潟の出身の比較的裕福な育てられ方をした女性が夫を殺してバラバラにして捨てた事件。
もうひとつは、畠山鈴香が近所の男の子を殺し、自分の娘を橋から落として殺した事件。
結論の事件があって、犯罪者がどういう生い立ちで、事件を巻き起こさなくてはならない状況になっていったか、と、カメラを逆回転させて、始めから見せてもらっている、という感覚でした。
但し、コレは作り物語です。
なんだか、事件を起こす人たちが送っている人生の、どうしようもなさ、に気が重くなります。
プロの作家橋本氏の情報収集と、人間観察力で組み立てられた小説ですが、普通の生活の中に、闇へ落ちてしまう穴は、あいているのだ、と。そして、それらは、身近にあったりもするのだと、そんなあれこれを想像しながら読了しました。
付け加えると、金閣寺ほど、センセーショナルさは持ち合わせていません。
著者は1948年東京生まれ。
彼の名前を知ったのは「桃尻娘」とか、奇を衒ったタイトルの本の出版のときです。70年頃の学生運動の時代は、映画では高倉健や藤純子のヤクザ映画全盛でもありました。そのころ、私の大学の美術部にサイケデリックな色調の東大駒場祭のポスター「とめてくれるなおっかさん 背中の銀杏がないている 男東大どこへいく」が、貼ってありました。私は諧謔的で上手いなー、と眺めていた記憶があります。
そのポスターの製作者が橋本治という学生だったと知ったのは、作家としてデビューの話題の時だったと思います。その後、小説や評論の文筆業で身を立てるひとになったと知っているものですから、彼の生い立ちが絡んでいる内容かしら、という私的興味もあって、読書会の課題本として、仲間に推薦したのですが、違っていました。因みに、私はこれまで彼の本を読んではいません。
あのころの東大は(地方の私の大学も、規模こそ違え)学生運動で荒れていて、69年3月の卒業式も入試もなく、4月に入学する新入生はいないのです。大企業に就職するのは資本家側に加担することになるから、と、企業に就職するのを嫌う人種もいました。今、政権の中枢にいらっしゃる仙谷由人さんは、東大中退だと、最近知りました。年齢から察すると、その頃に学生時代をすごしていらっしゃいます。季節はずれの時期に卒業式があったり、安田講堂で卒業式という集会をすると、何が起こるかと危惧した大学は、証書だけを交付したりと、そんな時代だったのです。
そんな大学キャンパスで、件のキャッチコピーで時の人になった彼はどういう人かな、という興味で読み始めたのでしたが・・・。
この本の内容は、数年前に起きた殺人事件が基になっている話です。かつて、三島由紀夫が金閣寺を書いたように。
ひとつは、新潟の出身の比較的裕福な育てられ方をした女性が夫を殺してバラバラにして捨てた事件。
もうひとつは、畠山鈴香が近所の男の子を殺し、自分の娘を橋から落として殺した事件。
結論の事件があって、犯罪者がどういう生い立ちで、事件を巻き起こさなくてはならない状況になっていったか、と、カメラを逆回転させて、始めから見せてもらっている、という感覚でした。
但し、コレは作り物語です。
なんだか、事件を起こす人たちが送っている人生の、どうしようもなさ、に気が重くなります。
プロの作家橋本氏の情報収集と、人間観察力で組み立てられた小説ですが、普通の生活の中に、闇へ落ちてしまう穴は、あいているのだ、と。そして、それらは、身近にあったりもするのだと、そんなあれこれを想像しながら読了しました。
付け加えると、金閣寺ほど、センセーショナルさは持ち合わせていません。