詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

詩はどこにあるか

2005-04-27 15:15:49 | 詩集
ナボコフ「悪い日」(「ナボコフ短篇全集Ⅰ」作品社)

 主人公の少年が親類の家で出会った少女に恋こころを抱く描写。

彼がターニャ・コルフにはじめて会ったのもこのときで、それ以来よく彼女のことを考えるようになり、追い剥ぎもどきから彼女を救う自分の姿や、加勢に駆けつけたヴァシーリイ・トゥチコフが彼の勇気を一心に褒めそやす光景を想像したりした。

 恋こころを、空想そのものとして描く――この描写に「詩」がある。
 少年が少女に対してどう思ったかではなく、どう思われたいか――という描写の中に、今の少年と空想の中の少年の間に「断絶」が見えて来る。その「断絶」が「詩」である。

 「詩」は現実であり、同時に現実ではない。現実に急激に割り込んでくる「真実」である。
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