詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

田原「キリギリス」ほか

2021-02-23 09:23:25 | 詩(雑誌・同人誌)
田原「キリギリス」ほか(「カルテット」7、2月2日発行)

田原「キリギリス」は、私の知らない世界を書いている。
私は田舎育ちだから、昆虫は身近にいた。そして、あまりにも身近だったから、その鳴き声を観賞するということもなかった。
田原はキリギリスをとっている。
なるほどと納得したのが、サツマイモ畑で捕まえるのが簡単という説明である。ここには具体的な肉体が書かれている。キリギリスは、葉っぱから葉っぱへ飛ぶ。葉っぱが多い方がどこへ飛んだかわかる。サツマイモの濃い緑、キリギリス(私の田舎ではギッチョンと呼んでいた)の黄緑。くっきりと色の対比まで目に浮かぶ。
そういう肉体的描写(ただし、間接的)があるから、「指を二本の歯に噛まれて、血が出た」が説得力を持つ。さらに最後の三行でキリギリスと田原の肉体が一体になる感じが、とても説得力がある。

吉田義昭「林檎の重力」は、「林檎畑だから一面に墜落できぬ林檎」という一行がおもしろい。落下ではなく墜落。そのことばの変化のなかにすばやく潜り込む暗喩。
最後が、その暗喩から抜け出せず、抒情になるのは残念だけれど、必然という人もいるだろうなあ。

服部誕「昼下がりの幸福について」は4、5連が美しい。

山田兼士「詩集カタログ」。全部調べたわけではないが、多くの詩集が6行で紹介されている。器用だ。
コメント
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