詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

ソンチャンホ「赤い豚たち」

2021-02-25 12:05:56 | 詩集
ソンチャンホ「赤い豚たち」(ハンソンレ訳)(書肆侃侃房、2月4日発行)

「月明かりは何でも曲げて作る」は、続けて「花の香りを曲げて蜜を作り」と展開する。
この「曲げる」という動詞の使い方は魅力的だ。
そして、これが「動物園の檻越しの一頭の花」では「腰を曲げてその強いにおいを嗅ぐ」と変化する。
腰を曲げては、肉体を近づける、である。私が対象に近づく。
ここに、ソンの思想を感じた。
曲げるとは何かに近づき、それを、遠くから見ていたものとは違う視点でとらえ直すこと、新しい存在の可能性を引き出すこと。
詩の比喩とは、そういう暴力的で絶対的な運動である。
比喩に出会ったら、作者はいま、自分の肉体を折り曲げ、対象そのものの内部に入り込み、対象を作り替えているのだ、と考えればいいのだ。
対象が形を変えるだけでなく、作者も自分の肉体をねじ曲げ、変形し、生まれ変わろうとしている。
ソンの比喩が激烈なのは、このためである。
(まだ途中までしか読んでいないが、メモとして記しておく。)
コメント
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