詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

カルビーノ「パロマー」

2021-02-26 08:52:03 | その他(音楽、小説etc)
カルビーノ「パロマー」(再読)

カルビーノを最初に読んだのはいつか、何か。よく思い出せないが、たぶん「柔らかい月」である。
しかし、衝撃を受けたのは「難しい恋」の英語版を読んだとき。まだヨーロッパ便がアンカレッジ経由だったころ、給油の合間に本を買った。私は英語をろくに読めないが、この「難しい恋」はすらすら読める。知らない単語がつぎつぎに出てくるがつまずかない。
なぜか。
ことばの呼応が正確で、呼応のなかに強靭な論理があるからだ。だから、どんな翻訳にも適応するのだ。
村上春樹の大先輩だ。村上の場合は、論理はカルビーノほど強靭ではない。むしろ抒情に線が通っている感じがある。日本的。これが外国や若者に受ける理由か。

脱線した。
「クロウタドリの口笛」の35-36ページ。鳥の会話を分析し、

言葉が沈黙の間も忘れられることなく、

「俺はまだここにいるぞ(略)」とでもいうような、「まだ」の意味を付け加え

口笛は(略)句読点の記号でしかない

対話は可能なのだ、沈黙によっても

と展開する。
最初に引用した「沈黙」が結論の形で復活する。
このときの、軽快なスピードと明瞭さ。リズムの安定した動き。
大好きだなあ。
コメント
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