芥川賞作品を読んだ。
文章はこなれているが、魅力的とはいえない。
335ページに、プールに肉が溶け出すというような刺激的な表現がある。それが主人公の感じている重さと交錯する。
かなり期待して読み進むが、この肉と重さが、精神、背骨に変わる。この変化が、なんというか、象徴主義のようで面白くない。
プールと肉との関係はベーコンの描く肉体の不気味なリアルに通じるが、背骨になるとジャコメッティになってしまう。
私が興味を持ったのは、ふいにあらわれる402ページの、洗濯物の描写。ここだけ、文体が違う。簡単に言い直せば松本清張が描くような女が動いている。つまり、私のようなおじさんにもわかる「現実」(作者が、現実ということばをつかっている)が書かれている。
若い人だけれど、幅広く「文学」を読みこなし、それを「いま、ここ」という形で展開できる作家なのだろう。
(ページ数は、文藝春秋のページ)
文章はこなれているが、魅力的とはいえない。
335ページに、プールに肉が溶け出すというような刺激的な表現がある。それが主人公の感じている重さと交錯する。
かなり期待して読み進むが、この肉と重さが、精神、背骨に変わる。この変化が、なんというか、象徴主義のようで面白くない。
プールと肉との関係はベーコンの描く肉体の不気味なリアルに通じるが、背骨になるとジャコメッティになってしまう。
私が興味を持ったのは、ふいにあらわれる402ページの、洗濯物の描写。ここだけ、文体が違う。簡単に言い直せば松本清張が描くような女が動いている。つまり、私のようなおじさんにもわかる「現実」(作者が、現実ということばをつかっている)が書かれている。
若い人だけれど、幅広く「文学」を読みこなし、それを「いま、ここ」という形で展開できる作家なのだろう。
(ページ数は、文藝春秋のページ)