詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

中井久夫訳『現代ギリシャ詩選』読む(61)

2023-12-28 22:12:48 | 中井久夫「ギリシャ詩選」を読む

 「ミニチュア」。女が紅茶にそえるレモンを薄く切っている。

レモンの薄い切れは黄色い車輪。

 一度読んだら忘れることのできない比喩である。読者が忘れらないように、レモンの輪切りをつくった女も、それを忘れることができない。
 なぜなら。
 これを書いてしまうと、詩を読む楽しみがなくなるから書かないが、「薄い」にも「切れ(る)」も、実は比喩なのだ。比喩は、ただ単に何かを別のもので言い換えることではない。言い換えられたもの(存在)と、言い換えたもの(比喩)が交錯し、その交錯する向こう側から、言い換えることでしか表現できなかったものがあらわれ、存在と比喩を超えて世界そのものに変わっていく。それを手助けする形で「薄い」と「切れ(る)」が動いている。
 ギリシャ語でも「薄い切れ」と書いてあるのか。私の勝手な想像だが「薄い一片」くらいではないだろうか。これを「切れ」と訳すところに、中井の「魔法/魔術」がある。「輪切りのレモンの薄い一片」の方が「黄色い車輪」を連想しやすい。しかし、その連想を隠すように「薄い切れ」という。そのとき、その「薄い切れ」自体が、もうひとつの比喩になっている。

 

 

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Estoy Loco por España(番外篇418)Obra, Joaquín Llorens

2023-12-28 20:45:38 | estoy loco por espana

Obra, Joaquín Llorens

 El hombre le preguntó al hierro.
 ¿Las líneas que se unificaron en una forma se dividirán en innumerables líneas? ¿Se unificarán varias líneas en una sola forma? Te conocí en medio de un sueño.

 El hierro le respondió al hombre.
 Para mí no existe la cuestión de si desmantelar o integrar. Sólo me muevo en busca de una forma que no existe. Había una forma en alguna parte. Hay una forma en alguna parte. Sin embargo, todavía no ha aparecido ninguna forma aquí. Mis sueños siguen moviéndose en busca de forma.

 O tal vez fuera el hierro quien hiciera la pregunta y el hombre quien respondiera.

 男が鉄に問いかけた。
 ひとつの形に統一されていた線が、無数の線に分かれていくのか。複数の線がひとつの形に統一されていくのか。私は夢の途中で君に出会った。

 鉄が男に答えた。
 解体か統合かという問いは、私には存在しない。わたしはただ存在しない形を求めて動いているだけだ。形はあった。形はある。しかし、まだ形は現れていない。形を求めて、私の夢は動きつづける。

 あるいは、問いかけたのは鉄で、答えたのは男だったかもしれない。

 

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