詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

憂鬱な男

2014-12-01 01:26:37 | 
憂鬱な男

憂鬱な男を描かなければならなくなって、
憂鬱な男が頭の中で何を考えているかを考えた。

りんごを剥くときは
包丁をまわすのではなく、りんごをまわすのだ。

左手にもっていた悲しみと、右手にもっていた怒りはどこへ行ったのか、
皿の上にとどきはじめた皮の形を憂鬱な男は頭のなかで思い出す。

最後までとぎれることもできずに剥けてしまった皮は
同心円をつくるのではなく、S字形になる。

想像は裏切られるためにある、

憂鬱な男は頭の中で憂鬱な男に剥かれるりんごの皮になって
憂鬱な男をことばにしている憂鬱な男を笑った。



*

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