(この記事の下にある「ぼくのお日さま」の感想のつづきです。先に下の記事を読んでください。)
私は他人の批評は読まないのだが、ある人が、ユーチューブの「ぼくのお日さま」の批評について、わざわざ教えてくれた。
「シネマサロン、ヒットの裏側」
https://www.youtube.com/watch?v=ywPcv9iU9LM
これが、とんでもない「批評」。
「最後の詰めが甘い」というのだが、その詰めのシーンで彼らはいちばんのポイントを見落としている。ラストシーンは、少女が遠くから歩いてくる。少年がその姿を見つける。ふたりは、久々に出合う。そのとき少年は何かを語ろうとする。そこで映画は終わる。少年が何を語ったかは、わからない。
でもねえ。
この少年は何を持っていたか。ただ学生鞄を持っていただけか。胸に大事にかかえていたのは何か。それはコーチがくれたスケート靴である。それを袋(鞄?)にいれてかかえている。コーチが少年にスケート靴を渡したときの袋(ケース?)の色は覚えていないが、同じ色だったかもしれない。違っていたかもしれない。しかし、どう見てもスケート靴を入れている袋にしか見えない。野球のグラブやバットが入った袋ではない。
少女はスケート場から帰ってくる。少年はスケート場へ向かっている。少年は再びスケート(フィギュア・スケート)を始める気持ちになったのだ。そして、初めてその気持ちとなったときと同じように少女に出会ったのだ。少年は少女を、少年が初めて少女を見たときの目で見ている。そして、そこで「初めてのことば」を交わすのだ。これ以上に美しいハッピーエンドはない。
さらに。
驚いたことに、このユーチューバーたち(3人)は、一種の裏切りをした少女がどう立ち直っていくか(こころに傷を背負っていく)というようなことを語っているのだが、まあ、なんというか。「不潔な理想」だ。男の願望丸出しの感想。少年を、そしてコーチを裏切った少女には、罪の意識を持ってほしい、と思っているようだ。
少女に、そんな「責任感」を押しつけて、いったいどうなるのだ。
どうして、いろいろなことがあったけれど、スケートをつづけて立派な選手になってほしいと思わないのだろう。
コーチが北海道を離れようが、少年がたとえスケートをやめようが(実際は、やめはしない)が、そんなことは少女には関係がない。少女は自分の気持ちに純粋にしたがっただけ。スケートが好きだし、コーチが好きだから、ちょっと自分の方を向いてほしかっただけ。裏切りも、自分をもっとみつめて、という叫び。幼いから、それをことばにできないだけ。
少年は、そうした少女の「こころ」を知っているかどうか、わからない。少女の裏切りの背後に何があったかも、はっきりとは知らないはずである。
でも、少年がスケートを再開すれば、それは少女の励みになる。そうなることは、見ている観客にはわかる。ふたりがペアでアイスダンスをするかどうか、そんなことは関係がない。ただ、ふたりはスケートをする。スケートをすれば、それだ楽しい。その喜びが、もう一度始まるのだ。
「不純な中年(もう、高年?)」の、時代後れの「少女観」が、映画を台無しにしている。上記のURLの感想を聞くと、ただただあきれる。「世界のおきく」のときも、信じられないようなことを語っていた。はっきり書いておこう。上記のユーチューバーたちは、映画業界で金稼ぎをしているだけの人間である。
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