階段を降りる
地下鉄が突然止まった日、
エレベーターのなかで閉じ込められた人がいた。
それはあとで知ったことだ。
私はだひたすら私は階段を降りた。
もうひとつ下のホームからは別の地下鉄が動いている。
それに乗って、三つ先の駅で乗り換えるために階段を降りる。
エスカレーターでは人を何人も追い抜いた。
私は遅れてはならない。
私にとってはいちばん大事な日だ。
そんなことを知っているひとはいない。
エレベーターに人が閉じ込められていることを私が知らないように。
私は、あのひとならどう考えるだろうかと考えながら、
考えが考えにつまずいていると考えていらいらした。
さらに乗り換えの地下鉄に乗るために
さらにさらに深いホームを目指し、また階段を降りる。
この上には名前の知らない川の底がある。
その次の乗り換え駅の地上にはロータリーがあって
タクシーがぐるぐるまわっている。
その円を激しく拡大した環状の地下鉄に乗って
私はいかなければならない。
そう考えてまた階段を降りる。
もうどこまで深く降りたかわからない。
地上に出るために何段階段を上がらなければならないのか
考えると怖くなるので、また階段を降りる。
*
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購読ご希望の方は、谷内修三(panchan@mars.dti.ne.jp)へお申し込みください。1800円(税抜、送料無料)で販売します。
ご要望があれば、署名(宛名含む)もします。
「リッツオス詩選集」も4400円(税抜、送料無料)で販売します。
2冊セットの場合は6000円(税抜、送料無料)になります。
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私は遅れてはならない。
私にとってはいちばん大事な日だ。
そんなことを知っているひとはいない。
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私は、あのひとならどう考えるだろうかと考えながら、
考えが考えにつまずいていると考えていらいらした。
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さらにさらに深いホームを目指し、また階段を降りる。
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その円を激しく拡大した環状の地下鉄に乗って
私はいかなければならない。
そう考えてまた階段を降りる。
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![]() | リッツォス詩選集――附:谷内修三「中井久夫の訳詩を読む」 |
ヤニス・リッツォス | |
作品社 |
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