自民党憲法改正草案再読(33)
(現行憲法)
第81条
最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。
(改正草案)
第81条(法令審査権と最高裁判所)
最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する最終的な上訴審裁判所である。
「終審裁判所」と「最終的な上訴審裁判所」は、どうちがうのか。改正草案は「三審制」を踏まえての表記なのかもしれないが、よくわからない。
一審、二審で「違憲判決」が出ても、それは「確定」ではない。最高裁に上訴し、最高裁が判断しないかぎり「違憲」にはならない、と言うことなのかもしれない。
つまり、二審で「違憲判決」が出たとき、政府はあえて上訴しない。上訴しないことで「違憲」であることを受け入れない。つまり、「上訴審裁判」で確定したわけではないから、「違憲ではない」と主張するための「逃げ道」なのかもしれない。
こういう問題は、法律の専門家がもっと国民向けに語らないといけないのではないのか。すでに語り尽くされているのかもしれないが、テレビも見ないし新聞もろくに読まない私のような人間には、議論がどこまで進んでいるのか、さっぱりわからない。
(現行憲法)
第82条
1 裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。
2 裁判所が、裁判官の全員一致で、公の秩序又は善良の風俗を害する虞があると決した場合には、対審は、公開しないでこれを行ふことができる。但し、政治犯罪、出版に関する犯罪又はこの憲法第三章で保障する国民の権利が問題となつてゐる事件の対審は、常にこれを公開しなければならない。
(改正草案)
第82条(裁判の公開)
1 裁判の口頭弁論及び公判手続並びに判決は、公開の法廷で行う。
2 裁判所が、裁判官の全員一致で、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあると決した場合には、口頭弁論及び公判手続は、公開しないで行うことができる。ただし、政治犯罪、出版に関する犯罪又は第三章で保障する国民の権利が問題となっている事件の口頭弁論及び公判手続は、常に公開しなければならない。
「対審」が「口頭弁論及び公判手続」と変更されている。裁判には、民事裁判と刑事裁判があるが、そのふたつの違いに配慮して、こうなっているのか。
第2項でも「対審」をすべて「口頭弁論及び公判手続」と書き直しているのは、何か意味があるのかもしれない。ことばの経済学から「これを」を「削除する」のが改憲草案の大きな特徴である。それは2項でもおこなわれている。一方で、「口頭弁論及び公判手続」はしつこく書きつらねている。奇妙な印象を受ける。たぶん「政治犯罪、出版に関する犯罪又はこの憲法第三章で保障する国民の権利」が関係しているのだと思う。何を狙っているか、予測がつかないが。