△ビートルから見た曇りの博多湾 (2005年12月30日)
外国語を翻訳する場合、時として「言葉」ではなく「生活文化」を
翻訳しなければならない場合がある。
例えば、博多港とプサン港を行き来する「ビートル」号のトイレには、
このような張り紙がしてある。
△ビートルの便所の中の張り紙
一見、何の変哲もない張り紙だが、韓国語を読んでみると
사용하신 휴지는 변기에 넣어 주십시오.
(御使用になったトイレットペーパーは便器にお流し下さい)
と書かれている。これは、上下の日本語や英語の訳としては
全く間違った翻訳だと言えるだろう。
しかし、一般的にトイレットペーパーを水洗便器に捨てる習慣の
ない韓国人客向けの張り紙としては「正しい」のである。
また同時に、乗務員にとっては、おそらく切実な「願い」でも
あるだろう。
韓国では、一般的に便器のつまりを防ぐためにトイレットペーパーを
ゴミ箱に捨てるという習慣がある。この習慣は単に便宜的な
ものではなく、かなり強度な生活習慣と見ていい。
その証拠に、同じく玄界灘を往復している韓国の高速船「コビー」の
便所には、便器の紙詰まりの心配など全くないにも関わらず、
狭い空間の前後左右に日本語で「トイレットペーパーは便器に
流さずゴミ箱に捨ててください」という趣旨の注意書きが
なされていた。(現在の状況は未確認)
おそらく、そうした注意書きに従う日本人客は限りなく「0」に
近いのではないかと思われるが、一部の韓国人からすれば、
便器にペーパーを流す日本人(その他の外国人)の習慣が
「許せない」という意識レベルにまで達しているのではないかと
思われる。
△博多港に接岸したビートル号
外国語は時として、背景にある生活習慣まで含めて「文化」訳
しなければならない。
そんなことを考えながらビートルを降りた「オタク」であった。
(終わり)
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