■버닝 「(直)バーニング」 2018年5月 〇〇〇〇-
(405)
2018年5月公開の新しい作品。「ヲタク」好みのノワール風サスペンスだ。
△地平線には北朝鮮の山並みが見えるパジュ市(映画より)
北朝鮮の対南放送が聞こえるパジュ(坡州)市とソウルを舞台に、
大学の文芸創作科を卒業し、バイトをしながら小説を書いている
青年を主人公に描いた映画。
幼なじみの女性が、社会から孤立した女性ばかりをねらった完全
犯罪(連続殺人)の犠牲になったことを確信した主人公が、犯人に
対し、私的制裁を加える。
物静かな彼が、自分の中に眠っていた暴力性を爆発させるラスト
シーンは、衝撃的だった。
実に見ごたえのある映画だった。
(終わり)
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■소공녀 「(直訳)小公女」 2018年 〇〇---
(404)
2018年3月公開の新しい作品。
どんなに苦しい境遇の中にあっても、人としてのプライドと優しさを
忘れず、誠実に生きていれば、きっといいことがある、と子どもたちに
教えてくれる児童文学が「小公女」。
もし、現代の韓国社会に、そんな小公女のような女性が生きていたら、
どんな物語になるのだろうか?
一服の清涼剤のような物語を期待しつつ、鑑賞してみた映画だった。
結果、「ヲタク」の期待は肩透かしを食らった。
ソウルに住む主人公の女性は、家政婦の仕事で現金を稼ぎながら、
バーで飲むグラス1杯のウィスキーとタバコ、そして彼氏さえいれば、
後は何もいらないという無欲でユニークな生活を送っている。
実際、簡易アパートの狭い部屋には、テレビもなければ冷蔵庫も
洗濯機もない。
そんな彼女が、家賃の上がったアパートを出て、キャリーバックを
引きずりながら、寝床を求めて昔の友人たちの家を訪ね歩く。彼氏は
工場の寮に住んでいて、主人公を泊めることはできない。
主人公が訪ねる友人たちにしても、皆、それぞれに生活と事情があり、
快く主人公を泊めてあげれる状況にはない。
最終的に彼女がたどり着いた寝床は、ソウルを流れる漢江の河畔に
張った小さなキャンプ用テント。
現代韓国の「小公女」は、屋根裏部屋ではなく、河畔のテントという
「Microhabitat」(映画の英語題名)に暮らしている、ということか。
彼氏は、借金を清算し彼女との結婚資金(アパートの入居保証金)を
稼ぐため、2年間の予定でサウジアラビアに出稼ぎに行った。
さて、主人公と彼氏に、どんな未来が待っているのだろう。
海外の映画祭などで高評価を得た映画ではあるが、「ヲタク」の趣向には
合わない映画だった。
(終わり)
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■홈 「(直訳)ホーム」 2018年 〇〇〇--
(403)
2018年公開の家族ドラマ。
主人公はプサンに暮らす中学生。
母と父親違いの弟と3人で暮らしていたある日、母親が弟の父親の
妻の車に乗せられ話し合いの場所に向かう途中、交通事故に会い、
2人とも意識不明の重体に陥ってしまう。
母親が死亡した後、弟の父親が、弟といっしょに主人公を引き取り、
養子にしようとするが、弟の父親の妻の姉から強い反発をくらい、
結局、主人公は1人、児童養護施設に入ることになる。
一時期は、アジョシ(弟の父親)、そして異父弟と血縁のない妹
(弟から見れば異母姉)といっしょに暮らすことを夢みた主人公だった
だけに、物語の展開は実に冷酷なものになった。
はたして彼は、施設で幸せに育っていくのか。あるいは、もし、妹の
母親がなくなれば、弟や妹たちといっしょに暮らせることになるのか。
映画が終わった後、しばらく、主人公の将来が気になって頭から
離れなくなってしまった。
切ない内容ではあるが、なかなか見ごたえのある映画だった。
(終わり)
日本ではほとんど注目されていないが、2018年のジャカルタ・アジア
競技大会で、日本発祥の柔術(Ju-Jitsu、JJIFルール)が初めて正式
種目として採用された。
ここで言う柔術とは、おおざっぱに言えば、柔道の寝技や関節技、
締め技をメインにしたスポーツ格闘技だが、柔道とは異なり、最初
から相手を畳(マット)に引き込んで寝技に持ち込むことが許され
ている。
△アジア大会公式HPより
その日本発祥の柔術競技に、どうしたことか日本からは代表選手が
1人も参加していない。
△若かりし日の「ヲタク」(上で攻めている選手:某動画サイトより)
講道館柔道2段で、大学時代には柔術に似た旧高専柔道なるものを
経験した「ヲタク」としては、ちょっとさみしい話である。
△「攻めてる場面だけか...」
△若かりし日の「ヲタク」(上で攻めている選手:某動画サイトより)
韓国からは2人の代表選手(男1女1)が参加し、女子は金メダル、
男子も銅メダルを獲得し、メディアでもそこそこの関心を集めて
いた。
ここでは、興味深く読ませてもらった関連記事から、一部を翻訳練習
させてもらった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
■[아시안게임]
성기라 "부모님 반대…하고 싶은 주짓수 하게 해주세요"
■[アジア大会]
ソン・ギラ「両親の反対に..やりたい柔術をやらせてください」
(ニュース1 8月25日)
성기라(21·대한주짓수회)가 '최강'이라는 명성에 걸 맞게
아시안게임 정상에 올랐다.
ソン・ギラ(21、大韓柔術会)が、「最強」の名にふさわしく
アジア大会で頂点に輝いた。
성기라는 25일(현지시간) 인도네시아 자카르타의 자카르타컨벤션센터
어셈블리 홀에서 열린 '2018 자카르타-팔렘방 아시안게임' 주짓수
네와자 여자 62㎏급 결승전에서 싱가포르의 리엔 티엔-엔 콘스탄스를
4-2로 꺾었다. 강력한 우승후보로 꼽히던 성기라는 예상대로
금메달을 목에 걸며 환한 미소를 보였다.
ソン・ギラは25日(現地時間)、インドネシア・ジャカルタの
ジャカルタコンベンションセンター・アセンブリーホールで開催された
「2018年ジャカルタアジア競技大会」柔術・寝技女子62㎏級決勝戦で
シンガポールのリエンティエン・エンコンスタンスを4-2で破り、
優勝した。有力な優勝候補と見られていたソン・ギラは、予想通り
金メダルを獲得し、会心の笑みを見せた。
-中略-
세계를 누비며 주짓수 선수로 명성을 쌓았지만 아쉬움은 있다.
바로 집안의 반대. 주짓수를 두고 '여자가 남자를 제압할 수
있는 스포츠'라고 하지만 딸이 격투기 대회에 나서는 것을
마음 놓고 볼 수 있는 어머니는 흔치 않다.
これまで世界を舞台に柔術選手としての名声を積んできた彼女だが、
残念な思いも抱えている。それは、他でもない家族の反対。「柔術は
女が男を制することのできるスポーツ」とは言うものの、娘を格闘技の
試合に安心して送り出せる母親はそういない。
이에 성기라는 "집에서, 특히 어머니가 반대를 많이 했다.
이번 아시안게임에 나와서 내가 이만큼 한다고 보여주고
싶어 이 악물고 했다"고 말했다.
ソン・ギラは「家で、特に母の反対が強かった。このアジア大会に
出て、私の実力がどれくらいのものか、見せてやりたくて、歯を
食いしばってがんばった」と語った。
이어 어머니에게 하고 싶은 말로 "이제 아시안게임도 우승했다.
성적도 낼만큼 낸 것 같다. 하고 싶은 것 하게 해줬으면 한다"고
전했다.
さらに、母親に伝えたい言葉として「これでアジア大会も優勝した。
結果も十分出したと思う。私がやりたいことをやらせてほしい」と
語った。
(終わり)
■시간위의 집 「時間回廊の殺人」 2017年 〇〇---
(402)
2017年公開のホラーファンタジー。
ベネズエラ映画「マザーハウス 恐怖の使者」(2013年)のリメイク作。
時間の隙間に存在する奇妙な家で、主人公の女性が、25年前の家から
息子を現在に連れ戻す。
「ヲタク」の趣向には合わない映画だったが、日本統治時代にその
家に住んでいて「失踪」した(時間の隙間に閉じ込められた)日本人の
婦人が現在に現われ、いきなり「出ていけ」と日本語で叫ぶシーンなどは、
実に不気味であった。
■오목소녀 「(直)五目少女」 2018年 〇〇---
(401)
2018年公開の映画。
囲碁に挫折し、囲碁から遠ざかっていた、かつての囲碁の天才少女が、
「五目並べ」の打ち手として再生し、新しい人生を歩む物語。
囲碁のルールは知らない「ヲタク」も、五目並べは知っているので、
退屈せずに見れた。
(終わり)
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■게이트 「(直)ゲート 完結版」 2018年 〇〇---
(400)
2018年6月公開の新しい映画。
闇社会の大富豪マダムの隠し金庫からお金を奪う犯罪コメディ。
「ヲタク」の趣向には全く合わない映画であったが、それでも、
主人公らが悪戦苦闘の末、金庫破りに成功した時には、ちょっとした
爽快感を感じた。
映画とは言え、こんなに大量の山積みの5万ウォン札を見るのは初めて
だった。
■시크릿 「シークレット」 2009年 〇〇〇--
(399)
2009年公開のサスペンス。
主人公の男は刑事。妻は胡弓の演奏家。
夫の浮気と一人娘の事故死により精神のバランスを失った妻が、
裏組織の幹部に夫の殺害を依頼し、しかも、夫の浮気相手である
友人を突発的に殺害してしまう。夫は、それを知らない。
さらに、裏組織の幹部を殺害し麻薬を横取りした知能犯の男が、
自らの犯行をカムフラージュするため、事件に刑事夫婦を
巻き込んでいったことで、刑事をめぐる状況は錯綜していく。
結局、裏組織はボスも死に壊滅に追い込まれるが、刑事と妻は
破滅することなく和解し、知能犯も海外逃亡に成功する。
妻の友人の件など、モヤモヤ感の残る結末ではあったが、総じて
なかなか見ごたえのある映画だった。
(終わり)
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■로마의 휴일 「(直)ローマの休日」 2017年 〇〇〇--
(398)
2017年公開のコメディ映画。
カトリック系の児童養護施設出身の3人組が仁川市で現金輸送車を襲い
大金を奪うが、車で逃走途中に警察の網にかかり、ナイトクラブ
「ローマの休日」に逃げ込む。
そして、客や従業員を人質に取って立て籠もり、繰り広げられる
ドタバタ劇をコミカルに描いている。
刑事の働きかけで子どもの頃、養子としてスウェーデンに渡った
リーダーの妹も来韓するなど、随所にヒューマンな場面を織り交ぜ
ながらの展開であった。
なお、映画の冒頭で3人組が銃や弾丸を購入する場面があったが、
取り引き相手はロシアマフィアだった。
△3人組に武器を売ったロシアマフィア(映画より)
近年の韓国映画では、麻薬や銃の取り引きの場面にロシアマフィアが
登場することが多い。
真偽のほどは別問題としても、これも、韓ロの人的・物的交流が拡大して
いることを示す、一つの現われなのだろう。
■노크 「(直訳)ノック」 2012年 〇----
(397)
2012年公開のホラー映画。
主人公の女子大生が友人であるムダン(霊能者)の力を借りながら、
悪霊を封じようとする物語。
(終わり)
■레슬러 「(直訳)レスラー」 2018年5月 〇〇〇--
(396)
2018年5月公開の新しい映画。
妻の死後、男手一つで育てた息子も、ようやく一人立ちする年齢に
なった40才の中年男の前に、男との結婚を熱望する20才の女性が
現われた。
△ヒロインを演じた女優はイ・ソンギョン
その女性とは、男が兄のように慕う知人の娘で、男の息子がひそかに
思いを寄せる相手でもあった。
△女性の「アジョシ(おじさん)」に対する思いは真剣だった
これまで娘のように接してきた相手からの突然の告白に驚き、断念
させようとしながらも、女性を強く意識し始める中年男の心理の
変化が、実におもしろかった。
結局、苦悩し始めた男から女性が身を引き、2人が結ばれる展開とは
ならなかったが、中高年「ヲタク」は、気が付いた時には、すでに
この「年の差恋愛」を応援していた。
△女性の末の妹が、中年男の息子に自分を「イモ(母の妹)」と呼ぶように頼むシーン
また、映画も、そうした展開を予感させるような終わり方をして
いた。
中高年男性以外が見れば、腹が立ってくるような映画かもしれない。
■비밀은 없다 「荊棘の秘密」 2016年 〇〇〇〇-
(395)
慶尚道のある選挙区が舞台。
保守与党公認の国会議員候補として初出馬した男の家庭で起きる
衝撃的な惨劇を描いている。
選挙が始まるや、いきなり、一人娘が失踪し死体で発見される。
そして、執拗に犯人を追う母親(男の妻、全羅道出身)の執念が、
醜悪な事件の背景を解明し、選挙に勝利した男は破滅する。
男は、若い女教師との情事の隠し撮り動画をネタに自分たちを
ゆすって来た何者かの殺害を闇の人物に依頼したのだが、その
ゆすりの犯人が一人娘だったのだ。
実に見ごたえのあるサスペンス映画だった。
(終わり)
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■사이비 「我は神なり」 2013年 〇〇〇〇-
(394)
2013年に公開された異色の社会派アニメ映画。
ダム建設により水没する予定の全羅道の某山村が舞台。
村民に支払われる補償金をねらい、キリスト教会を装った詐欺団が
村に仮設の教会を作り、芝居がかった布教活動や世話活動を始める。
多くの村民がマインドコントロールされていく中、一人の男が
教会のうそを暴くために、命がけの格闘を繰り広げる。
結果的に男は詐欺団の正体を暴き、一団を破滅に追い込むが、
皮肉にも、教会の教えに救いを見出していた彼の一人娘は絶望し、
自死してしまう。
いわゆる信仰やカルト問題という一筋縄ではいかないテーマに正面から
切り込んだ秀作だと言える。
娘の自死には心痛んだが、実に見ごたえのあるアニメ映画だった。
■아름다운 청년 전태일 「(直訳)美しい青年、チョン・テイル」
(393) 〇〇〇〇-
1995年公開の社会派映画。
韓国労働運動のシンボル的存在であるチョン・テイル(全泰壱)氏が
抗議の焼身自殺(1970年)に追い詰められるまでの過程を、過剰な
演出を抑えつつ描いたノンフィクション風の作品だ。
△東大門近くのチョン・テイル橋に建つ氏の銅像(ネイバー地図より)
映画を通じて知る1960年代後半のソウルの縫製工場の劣悪な労働
実態や「岩に卵を投げつけるような」困難さに満ちた労働運動の実態は、
見る者の心を締め付ける。
人間の権利とは、決して偉い人たちから与えられるものではなく、
要求し続け、闘い続け、そして勝ち取るものであることを、改めて
痛感させられた。
(終わり)
■덕구 「(直訳)トック」 2018年4月公開 〇〇〇〇-
(392)
2018年4月公開の家族ドラマ。
慶尚北道高霊を舞台に、韓国人夫を失った多文化(国際結婚)家庭の
危機と絆(きずな)を描いている。
△トック(徳求)とトッキ(徳姫)の母はインドネシア人
息子が亡くなった後、一旦はインドネシア人の嫁を家から追い出した
舅(しゅうと)だったが、自分の行いを悔い、2人の孫のため、嫁を
連れ戻しにインドネシアや安山市まで出かける。
しかし、彼女を探し出すことはできなかった。
△冬の安山市の繁華街で母を探すトック(徳求)
一方、息子のトック(徳求)が安山市まで自分を探しに来ていた
ことを縫製工場の同僚に聞いたインドネシア人の母親は、居ても
立ってもいられなくなり、高霊の家を訪ねる。
そうして再会した舅と母と子ども2人の多文化家庭は、再び、一つの
家族として共に暮らし始める。
「ヲタク」自身、日本で多文化家庭を生きている身でもあり、自然と
物語の展開に引き込まれていった。
(終わり)
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■범죄의 여왕 「犯罪の女王」 2016年 〇〇〇--
(391)
2016年公開のサスペンス映画。
△息子と同年代の若い助手を引き連れたオバちゃん探偵
お節介焼きでちょっと色っぽいオバちゃんが、一人息子の暮らす
ソウルの「고시원/考試院」(司法試験等の浪人アパート)で起きた
殺人事件を解決していく物語。
実に見ごたえのある映画であった。
△「浪人アパート」(映画より)
ところで、ここでは「고시원/考試院」を仮に「浪人アパート」と説明して
みた。
韓国には、司法試験を始め各種公務員試験合格を目指し、大学卒業後も
専門の予備校に通いながら受験勉強に励む若者向けの専用アパートが
あるのだ。
部屋の広さや設備は家賃により千差万別のようだが、大半は狭い
ワンルームで予備校周辺に立地している。
(終わり)
■데자뷰 「(直訳)デジャブ」 2018年 〇----
(390)
2018年5月公開のミステリー映画。
主人公の女性に関わる3人の男たちは、みなそれぞれに病的で異常な
男たちばかり。
建設会社で働くエリート会社員の彼氏。彼氏と付き合いのあるヤクザ
(金融会社社長)。そして、刑事。
刑事の妹は、主人公が同乗した彼氏の車に轢かれ瀕死の重傷を負った
あげく、彼氏に殺害され、彼氏の会社が建設中のマンションビルに
埋められてしまう。
刑事は妹を失った衝撃で、徐々に精神のバランスを失っていく。
女性は、彼氏に自首を勧め、ついには警察に自首するが、彼氏から
妙な精神薬を飲まされ、過去の記憶があいまいになっていく。
そして、同時に激しい幻覚や幻聴に苦しめられるようになってしまう。
最後には、彼氏も、彼女を苦しめるストーカーのヤクザも、彼氏と
主人公に私的制裁を加えようとする刑事も、男たちは3人とも、みな
死んでしまう、という何とも陰惨な映画であった。
女性が一人、生き延びたことだけが、救いと言えば救いと言える。
考えてみれば、韓国映画には交通事故が付きものと思えるくらい、
交通事故のシーンが多いという印象を持っているが、この映画くらい、
残酷で罪深い交通事故はなかった。
(終わり)
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