2020年夏、長女を除く「ヲタク」家族と愛犬は、
佐賀県の鳥栖市郊外に位置する大型アウトレット
モールを訪れた。
△この商業施設の正式名称は「鳥栖プレミアムアウトレット」
商店や商品に全く関心のない「ヲタク」は、例に
よって、1人でうろうろとハングルを探した。
モール内で一度、中国語と韓国語の放送は耳に
したが、表示の面では、「ヲタク」の期待は
見事に裏切られた。
モール内にはハングルを含む4言語表示が、ほぼ、
なかったのだ。
特に、確信を持って訪れたトイレの内部でも、
この種の施設としては珍しい3言語表示しか
なかった。
せっかくなので(?)、ハングルのない説明書きを、
スマホの無音カメラで撮影しておいた。
△小さく「면세가능한 상점(免税可能な商店)」の文字
結局、その日の鳥栖アウトレットモールでは、ハングルの
撮影は、たったの1枚。
それも、非常に小さなハングルだった。
(終わり)
■KT 「KT」 〇〇〇--
(1158)
2002年に公開された政治サスペンス。
1973年に起きた金大中事件を題材にした日韓合作
作品で、謎の多い現代史の大事件に推理で迫った
フィクション映画だ。
題名の「KT」は金大中のイニシャル。
主人公の自衛隊情報部員は、深入りを戒める上司の
制止を無視し、最後まで韓国の情報部員と行動を
共にし、最後は、口封じのため抹殺される。
△自衛隊情報部員と民主化運動で拷問された経験のある韓国人女性<映画より>
結末部をはじめ細部についてリアリティに欠ける
部分が散見された点は残念だったが、主人公を
演じた佐藤浩市の韓国語には驚いた。
「ヲタク」の耳には実に自然で流ちょうな韓国語
だった。少なくとも、よく韓国メディアで揶揄される
ような、日本人風のカタカナ韓国語では全くなかった。
(終わり)
■싸이보그지만 괜찮아 「サイボーグだけど大丈夫」 〇〇---
(1157)
2006年に公開された異色のラブファンタジー。
物語の舞台はシュールでナンセンス、同時に
幻想的で哲学的でもあり、それでいて優しく
暖かい、実に不思議な精神病院。
自分のことをサイボーグだと信じている主人公の
患者女性は、過度の拒食症で命の危機に瀕して
いる。
△患者青年が患者女性の体に特別な部品を埋め込む<映画より>
彼女のことを心配した自称電気技師の患者青年が、
ご飯を体内で電気に変える装置を開発し、彼女の
体にその装置を取り付けることで、彼女が食事を
取れるようにしてあげた(全て幻想)。
△改造はこれで終了<映画より>
装置のアフターサービス期間は永久。
2人の共同幻想の中では、この装置さえあれば、
サイボーグでも大丈夫。ご飯も食べることができるし、
おそらく、恋もできる・・・。
難解でわかりにくい部分もあり、「ヲタク」の
趣向には合わない作品だったが、それなりに
見ごたえはあった。
(終わり)
■은밀한 유혹 「密やかなる誘惑」 〇〇〇〇-
(1156)
2015年に公開された犯罪サスペンス。
△マカオで大成功を収めた韓国人富豪の遺産をめぐる陰謀劇<映画より>
物語の舞台は、マカオから大型クルーザー船、そして
プサン。
△マカオからプサンに向かう富豪所有の大型クルーザー船<映画より>
主人公である元旅行会社添乗員の女性が、カジノ事業で
大成功を収めた韓国人富豪の遺産相続をめぐる陰謀に
巻き込まれ、命の危機を乗り切りながら、最後に劇的な
逆転勝利を収める。
△プサン市海雲台に到着したクルーザー船<映画より>
非常に見ごたえのあるサスペンスで、結末には
大きなカタルシスもあった。
(終わり)
■불륜의 시대 「不倫の時代」 〇〇〇--
(1155)
2013年に公開された社会派ドラマ。
主人公は出版社を経営する中年の既婚男性。長らく
女流作家と不倫中(過激なベッドシーンあり)で、
妻には無関心。
もう一人の主人公である妻は、夫の不倫に気づかない
ふりをしつつも、心の闇を広げて行く。
そして妻は、ひょんなことで出会った、ソウルに
暮らすアラブ系カナダ人青年との関係に急速に
のめり込んで行く。彼は、流ちょうな韓国語を
話し、繊細で心優しい人物だった。
彼は、幼児期に両親をイスラエルの爆撃で失った後、
カナダ人の養父母に引き取られ、カナダで大学教育
まで受けたことを打ち明けてくれた。
△青年を追い、インドのバラナシを訪れた妻<映画より>
その後しばらくして妻は、夫には弟の家に行くと
嘘を言い、青年を追ってインドのバラナシを訪れるが、
その地でテロに巻き込まれ、あっけなく命を落として
しまう。
青年は、イスラムの過激派団体のメンバーで、
インドのテロ事件も青年の属する組織が起こした
ものだった。
△爆発事件が起きたバラナシの繁華街<映画より>
全くのフィクション映画ではあるが、現在のように
急速にグローバル化が進む韓国では、全くあり得ない
話とも言えない(日本も同じだが)。
そこそこ見ごたえのある映画だった。
(終わり)
■돈 텔 파파 「Don't Tell Papa」 〇〇---
(1154)
2004年に公開されたハートフルコメディ。
高校生の時に子どもをつくってすぐ、離れ離れに
なっていた父子と母親が、7年後に再会し、家族の
絆(きずな)を回復していく物語。
△父親の背中からは物凄い量の垢が<映画より>
この映画では、高校の便所での出産シーンや
銭湯での垢すりシーン(本物そっくりの大量の垢)を
始め、どぎつく、えげつないシーンの数々が印象に
残った。
とは言え、劇中、父母の思い出の曲として重要な役割を
果たしたシン・スンフンの「날 울리지마」(僕を泣かせ
ないで)に似合う(?)ハッピーエンドは、なかなか
爽やかな余韻を残してくれた。
(終わり)
■커터 「カッター」 〇〇〇--
(1153)
2016年に公開された社会派犯罪映画。
高校生が引き起こした実際の殺人事件に着想を得て
制作されたフィクション映画。
家庭的に恵まれないイケメン少年たちが、夜の
ネオン街で悪い大人たちに利用され、裕福そうな
女性たちに睡眠薬を飲ませた上、窃盗したり
強姦を斡旋したりする凶悪犯罪に巻き込まれて
いく様は、大人の「ヲタク」が見ても怖かった。
△バナナ味牛乳<映画より>
ところで、この映画にも、韓国人のソウルドリンク、
バナナ味牛乳が登場していた。
△女子高生はあこがれの先輩(オッパ)にバナナ味牛乳を差し入れ<映画より>
殺人事件の被害者になる女子高生が、あこがれの
先輩であり、自分を殺害することになる男子高生に、
毎日のように差し入れしていたのが、このバナナ味
牛乳だった。
(終わり)
■수업료 「授業料」 〇〇〇〇-
(1152)
韓国映像資料院のYouTubeチャンネルを通じて、日本
統治時代(1940年)に制作された朝鮮映画を見た。
題名は「수업료」(授業料)。
△劇中の人物名も役者名も朝鮮名<映画より>
原作は、京城(ソウル)の新聞社主催の作文コンクールで
「朝鮮総督賞」を受賞した小学生の作文。
△朝鮮の地理を教える日本人教員<映画より>
病弱な祖母と2人で水原に暮らす男子小学生が
主人公。
彼は、学業優秀で模範的な生徒ではあるが、
授業料を3か月分も滞納していることが気に
かかり、学校に行けなくなってしまう。
△担任の日本人教員が家庭訪問し、学費を支援<映画より>
しかし、担任の教師(日本人)や平沢の親せき、
級友たち、地域の人々、それに教員集団の善意に
支えられながら学校に復帰する。
△級友、学校職員らが少年の学費をカンパした「友情箱」<映画より>
そして最後はハッピーエンド。
行商に出ていた父母の商売も上向き始め、チュソク
(中秋節)には、父母も家に戻り、久しぶりに家族
団らん、幸せな時間を過ごすことができたのだった。
△人の肩に乗って踊る伝統舞踊は現代では珍しい<映画より>
原作やプロパガンダ的な映画の性質上、日本の
植民地支配に対する批判的な視点は全く欠落して
いるが、それでも、十分に見ごたえのある作品
だったと言える。
特に、過去、学校では流ちょうな日本語、家では
朝鮮語という2言語生活を、当たり前のように
こなしていた(強いられていた)朝鮮人(韓国人)が
多数存在していた、という歴史的事実。
△帰り道の平沢から水原までは、親戚の援助でバスに乗れた少年<映画より>
政治体制の激変に加え、80年という長い歳月を
隔ててなお、この映画に登場する少年たちの日本語と
朝鮮語(韓国語)は、現代日本を生きる「ヲタク」の
耳にも、驚くほどストレートに伝わってきた。
当然と言えば当然の話なのかもしれないが、現代の
日本語も韓国語も、1940年の朝鮮に、今に近い形で
存在していたのだ。
言葉が伝えていたメッセージは別にして、彼らの
日本語と朝鮮語だけは、1940年の真実と見ていい。
この映画を通じて、何だか、歴史を皮膚感覚で
感じさせられたような気がする。
△平沢の親せきからもらった森永キャラメル(関連過去記事)<映画より>
さらに、森永キャラメルやバス(劇中、水原・平沢
間を走っていた)など、映画に反映していた当時の
朝鮮の世相は、「ヲタク」にとって新鮮でさえあった。
△キャラメルを頬張る少年。親戚からは学費ももらい一安心。<映画より>
たまには古典映画を見るのも悪くはない。
△「自動車」は1940年でも今と同じ「자동차」(自動車)。<映画より>
つくづくそう思った「ヲタク」である。
(終わり)
■인류멸망보고서 「人類滅亡報告書」 〇〇〇--
(1151)
2012年に公開されたSFブラックコメディ。
人類を滅亡の危機に陥れるゾンビウィルス、人間に
悟りを説くようになったロボット僧、そして地球に
衝突する小惑星。
映画は、この3つの物語のオムニバス。
△「自分は何者なのか?」を仏に問うロボット僧<映画より>
「ヲタク」には、自我が生まれ、解脱の境地に達した
お寺の案内ロボットの話が一番、おもしろかった。
ただし、物語はハッピーエンドでは終わらなかった。
△自ら全機能を停止し「成仏」したロボット僧<映画より>
ロボットは自分の存在をめぐって「仏様だ」「誤作動だ」
と争いを始めた衆生たちを前に、自らの一切の機能を
自ら停止し、「涅槃」の世界に入ることを選択した。
(終わり)
■경마장 가는 길 「競馬場に行く道」 〇〇〇--
(1150)
1991年に公開されたヒット作。
主人公女性の場合、フランスに留学しフランスの
大学で博士号を取得したのは事実だった。だから、
彼女の博士号は紛れもない本物である。
△主演女優はカン・スヨン<映画のポスターより>
しかし、彼女にはフランス語で博士論文を書く
だけの知識も実力もなかったし、今もない。
実際、論文を書いたのは、韓国に妻子を残し
フランスに留学していた韓国人男性で、当時、
女性とは不倫関係にあり、同棲もしていた。
男性は、彼女のために留学期間を1年間延長し、
彼女の博士論文を代筆してあげたのだった。
この映画のポイントを女性の視点から見ると、
1年遅れで韓国に帰国し、彼女との関係の継続を
望む「過去の男」を、いかに後腐れなくきれいに
清算し、次のステップに進むか、にあった。
△女性に捨てられた男性の独り言<映画より>
なお、映画の題名「경마장 가는 길」(競馬場に
行く道)は、大邱の実家に住む妻とも離婚できず、
不倫相手の女性からも捨てられた男性が、女性
との関係を整理するために書き始めた私小説の
題名。
「ヲタク」の趣向には全く合わない映画だったが、
それなりに見ごたえのある作品ではあった。
(終わり)
■반두비 「バンドゥビ(友だち)」 〇〇〇--
(1149)
2009年に公開されたインディーズ系の社会派ドラマ。
韓国で働くバングラデシュの青年と韓国人女子
高生の心の交流を描いた作品。
△部屋で礼拝するバングラデシュ人の青年<映画より>
青年が落とした財布を盗もうとした女子高生が、
罪滅ぼしに、賃金をもらえないまま困っている
青年を助けることになり、物語が展開して行く。
△青年からトゥピ(バングラのムスリム帽)をもらった女子高生<映画より>
結局、2人の交際は、2人の関係を心配した女子高生の
母親と母親の彼氏が入管に通報し、青年が不法滞在の
容疑で逮捕され、終わってしまう。
△女子高生にバングラデシュのカレーを振舞う青年<映画より>
この作品で印象に残ったのは、在韓バングラデシュ人の
男優(李マブップ)の非常に流ちょうな韓国語と、
バングラデシュの文化。
△イテウォン(梨泰院)のインド料理店を訪れ、右手で食べる主人公<映画より>
実際、南アジアの文化に疎い「ヲタク」が、右手で
食事する場面をこれほど丁寧に描いた映画を見るのは、
初めてのことだった。
(終わり)
■루비 「ルビー」 〇〇---
(1148)
2020年に公開されたインディーズ系の白黒映画。
舞台演劇風のシーンなども多用する実験的映画。
主役は、テレビの科学番組で契約職の放送作家と
演出サブを務めている同棲中の若い男女。
△世界の食料問題を解決するコオロギサンドを取り上げた回<映画より>
スタッフの努力にもかかわらず番組は視聴率が
低迷し、放送は打ち切りの危機にあった。そこで、
追い詰められたディレクターはとにかく視聴率を
上げようと、何と番組に手品師まで登場させる。
番組は完全に方向性を見失う。
そして、その結果、手品師の鳩(名はルビー)が
行方不明になるかと思えば、終いには、手品師本人が、
空中浮遊の最中、ワイヤーの破断による落下事故を
起こし死亡してしまう。
確たる未来も見えず、自分自身の信念をつらぬく
ことも難しい、滑稽なほど理不尽な現実。
主人公男女を取り巻く閉塞的な状況がよく描かれ
てはいたが、「ヲタク」の趣向には全く合わない
映画だった。
(終わり)
■소중한 날의 꿈 「大切な日の夢」 〇〇〇--
(1146)
2011年に公開されたアニメ。
1970年代の高校を舞台にした、韓国(「ヲタク」の
ような日本人も含め)の中高年世代の郷愁をさそう
ような、女子高生の成長物語。
今、思春期を生きる、現代の少女たちへの応援歌
にもなっている。
写実的な作風で、絵もきれい。
なかなか見ごたえのある映画だった。
△担任は中高年男性<映画より>
この映画で特に印象に残ったのが、担任の先生が持って
いた「출석부(出席簿)」と「교무수첩(教務手帳)」。
日本の学校と全く同じ漢字語だ。
△「特別活動」とは日本の「必須クラブ」のようなものか?<映画より>
こうした学校システムや漢字の使用法は、おそらく
日本統治時代の名残なのだろう。
(終わり)