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「臨時特別」編ケレン・ハオール第10号より1

2011年03月09日 08時18分06秒 | イスラエル・パレスチナ

ユダヤ・アラブ青少年共学共存推進日イ支援会の機関誌「ケレン・ハオール第10号」が山崎さんからおくられてきたのでその中から三つの文章を紹介します。全文をお知りになりた方はご連絡ください。

 山崎さんは2010年のイスラエル旅行でのイスラエル国籍を持つ日本人現地ガイドさんでした。彼および「ケレン・ハオール」についてはこのブログ2010年4月4日6日、6月17日19日 7月19日23日25日に紹介しているので参考にしてください。 

 

ユダヤ・アラブ青年共学共存推進日イ支援会の目的  

私達日本人とユダヤ人は、20世紀に人類史上前例のない最悪の惨事、広島と長崎への原爆投下とユダヤ人大量虐殺を経験した。私達は、ノー・モア・広島、長崎、ノー・モア・ホロコーストを叫び、核兵器や戦争、そして大量虐殺のない真の世界平和と民族の共存共生を希求する。  

本支援会は、上記の考えに基づいて、イスラエルにおけるユダヤ人とアラブ人青少年の共同教育推進のために、内外に向けて献金依頼活動を行う。そして、イスラエル国内における二民族の青少年共学共存を推進する団体・組織や施設の共学共存教育活動を支援する。本会の機関誌「ケレン・ハオール」を通し、広く協力を求める。 

 

 

 

  アラブ・ユダヤ共学共存の背景にあるもの   山崎智昭

 

現在「アラブ」と呼ばれている人たちの「アラブ」という言葉の由来は、多種多様だと思います。これを明確に定義することは、かなり難しいのが現状です。「アラブ」にはさまざまな定義がありますが、イスラム文化を誇りとし、アラビア語を愛する者がアラブであるという点で大筋一致しています。

さて、イスラエル国内において、アラブという表現で具体的な問題があります。現在、国内には2つの「アラブ」があります。一つはイスラエル・アラブ人という場合、二つ目はパレスチナ・アラブ人という場合です。同じアラブ人なのにこの両者には大きな違いがあります。イスラエル・アラブ人たちは、イスラエル国籍を持ち、パスポートもイスラエル・パスポートで海外旅行も自由にできます。一方、パレスチナ・アラブ人たちは、国籍もなく(パレスチナは国連で承認されていない)パスポートもありません。海外旅行をするときはヨルダン政府の許可を受けてパスポートを取得するか、イスラエル政府の許可を受けて取得するかしかなく、とにかく手続きがとても面倒で、彼らは通常の場合は、不可能だと思っているのが現状です。

そもそも、パレスチナ人とは1948年以降、イスラエル国となった地域を除くパレスチナに住むアラブ人、および周辺諸国に難民として逃れたアラブ人を意味することが多いのですが、イスラエル国内に住みイスラエル国籍を持つイスラエル・アラブ人を含める場合もあります。昨年妻のエステルと彼女の仲間たちが行った「イスラエル・アラブ人の子供たちへのアンケート」の回答では、自分たちはパレスチナ人だと回答している人が多くいました。しかし、ここにはイスラエル・アラブ人としての、明らかな政治的思考も多分に含まれていることも見逃せません。つまり、パレスチナのまま現在まで頑張っているパレスチナ・アラブ人たちへの遠慮があるのです。

こうした理由から、パレスチナ人が「パレスチナ人」としてのアイデンティティーをいつからどのように保持していたのかは、当然ながら一義的には決められないというのが現状だと思います。

パレスチナを唱えるアラブ人と、イスラエル国籍を取得したアラブ人はそもそも同じアラブ人なのですが、イスラエル建国を境に明確に違う形となってしまったのです。当然のことながら、パレスチナ・アラブ人の方が建国以来、貧しく苦しい生活を続けてきたのです。パレスチナ・アラブ人たちはその現実を思い、心の底では、経済的に裕福となったイスラエル・アラブ人を疎(うと)ましいと考えています。このような現状からユダヤ・アラブの共学共存を語る際には、対イスラエル・アラブ人の場合と対パレスチナ・アラブ人の場合とでは、微妙な点で「共学共存」の理解に差があります。ハンド・イン・ハンド校もエステルたちの学校も、この枠組から言えば、イスラエル・アラブのグループとの共学共存が主流です。パレスチナ・アラブは、自治区と呼ばれる、国ではない地域なので、共学共存活動を実現するためには、イスラエル政府から特別許可を得てはじめて、イスラエル・アラブ人たちとの交流活動が可能になるのです。

そうした現状のもと、現在私たちはそれらの現存する問題や枠組みをとりあえず外に置いて、私たちにしかできない活動として、違いを一つにまとめて「合同の共学共存大集合イベント」を開こうと計画しています。この企画では、イスラエル・アラブ人とパレスチナ・アラブとが直接会って面談することにより、双方の真の会話が必然的に体験できることになるのです。

ここまではアラブ側内部の問題でしたが、一方で、ユダヤ人の側を、宗教に対する考え方で区分けしてみると、そこには幾つかの内部的問題が見えてきます。そもそも、ユダヤ人内部にもユダヤ・アラブ共学共存に対して賛否両論があります。この問題では、ユダヤ人の原点であるユダヤ教における「信者」の内容を調べてみる必要があります。近年の統計によると、イスラエルに住むユダヤ人の30%は敬虔なユダヤ教信者です。そして35%が都合の良い時だけユダヤ教を守る「ヒロニーム」と称するユダヤ人たちで、残る35%は、ユダヤ人なのだが、全くユダヤ教を信じる気配を見せないユダヤ人たちというわけです。このようにイスラエルの全ての国民が敬虔なユダヤ教信者ということではない「現実」も把握しておかねばなりません。

敬虔なるユダヤ教信者たちは、基本的には共学共存活動に積極的に参加するようなことはありません。それはお互いに信じる神が違うのですから、妥協点が見つけにくいからです。ということで、共学共存活動に前向きに参加してくる人たちは、純真な宗教家とは異なる70%のユダヤ人たちの中から構成されています。初歩的な段階で両者が接近できる道を見出すためには、宗教を前面に出さずに共通の話題を選択して、共学共存へ歩みだす環境にある人たちから始めるのが賢明です。環境問題などで、清掃活動を一緒にすることも、ひとつの良い例なのです。サッカーの試合や音楽の演奏などに合同で取り組むのも、同様に良い例です。

ケレン・ハオールの活動はハンド・イン・ハンド校支援と並行して、草の根活動の支援も行っています。それは不特定多数の声なき声を聞くための活動でもあります。「シャニー・ガールズ」のように、日本へ遠征して大きな舞台に登場し、大勢の日本のお客様から喝采を受ける活動も素晴らしいことです。そして、今回の問題のように、脚光は浴びないし、雑草の狭間で目立たない動きながら、アラブ・ユダヤの共存共学の静かな歩みを着実に進めている活動も素晴らしいと思います。それらの活動は、現在イスラエル全土のあちこちで継続しています。ケレン・ハオールは新鮮な話題も積極的に取り上げて、読者の皆様にお届けしていきたいと思います。今後とも皆様の暖かいご支援を宜しくお願い致します。

 

 

 

 

 

 


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