熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

ドナウ川を遡るビジネス機会到来・・・大前研一・東欧チャンス

2005年07月03日 | 経営・ビジネス
   1989年にベルリンの壁が崩壊し、共産社会への風穴が開いたときに、一時、ミッテル・オイロッパ(中欧)ブームが起こり、日本のビジネス界が、中・東欧に注目した時期があった。
   バブル経済の盛期でもあり、それ行けドンドンの時代であり、新しいビジネス機会を模索していた日本経済界には恰好のターゲットの登場でもあった。
   しかし、その後、日本経済が悪化し、中国経済の異常な拡大とアメリカの好況に支えられて、ヨーロッパへの関わりが少しずつ薄れてヨーロッパからの撤退企業が出始め、中・東欧への関心はフェーズアウトして行った。

   ところが、ハンガリー、チェッコ等の旧共産圏の中欧諸国のEU参入を皮切りに、東欧諸国の相次ぐEU加盟に伴って拡大EUの実現することとなり、再び、中・東欧の重要さが脚光を浴びる事となった。
   丁度、中国との摩擦が再燃し、中国リスクが懸念し始めた時に、新しいビジネスチャンスとしてのBRIC’sの内、インドが注目を集め、トヨタがロシアへの進出を決めるなど、グローバル・フォーカスが少しづつ移動し始めた。
   ブラジルはどうなのか、1970年代のブラジルブーム時期にサンパウロに駐在して、その狂奔振りを経験しているので、ブーム到来と言われる市場へは、世界と世の中の趨勢を十分見極めてから対応しても遅くはないと思っている。

   私は、1985年の秋からヨーロッパに駐在し東欧との関わりは、最初の東欧訪問が、1987年、ハンガリーのブダペストで、その後、ベルリンの壁崩壊直前の東ベルリンが皮切りであった。
   その後、壁崩壊直後の東ベルリンを訪れ、少し落着いてから、市場調査の為に、東ベルリンから、ライプチッヒやドレスデン、プラハ、ブダペストを訪問した。
   
   ブダペストには、提携会社もあり、開発プロジェクトの為に何度か出かけて政府高官とも交渉の機会を持ったので、ベルリンの壁崩壊直後の新生ハンガリーの対応は、分かっている心算であるが、今日でも相変わらず官僚的な対応であることを大前氏が書いており、世界有数の知恵者で商才の長けた民族の筈なのに、やはり、誇り高いマジャール魂が抜けないのかと思うと感無量である。
   
   バルト3国のうち、エストニアのタリンには、経団連のミッションで出かけ、やはり、フィンランドと姉妹の国であることが良く分かったが、ソ連時代の搾取政策が酷かったのか、荒廃しながらも美しい風景が、貧しい生活にかき消されていて寂しかった。
   ドイツとの割譲密約によって終戦直後ソ連に併合され、豊かで革新的だったバルト3国が歴史から消えてしまった悲哀をこの時知った。ライカのフルサトなのである。

   その後、10年ほど経って、ヴェルディ・イヤーに、プラハを訪れた。世界一美しいと思っているプラハでの休日とヴェルディのオペラを楽しみたかったからである。
   中心市街全体が、博物館と言うか文化財のこの街、修復されて美しくなっていたが、変わってしまったところと、そのまま維持されているところが残っていて歴史を感じた。
   映画「モーツアルト」の雰囲気を醸し出す場所がウイーンにはなくなってしまい、このプラハでロケされたとか、裏町の路地に入ると、フーっとモーツアルトやサリエリが飛び出して来ても不思議ではない。

   ところで、大前研一氏の「東欧チャンス」のレビューは次回にまわすが、興味深いのは壁崩壊後の、東欧の経済悪化と投資先延ばしが良かったと言う話。
   ソ連の東欧経済支配の根幹COMECON(経済相互援助会議)政策によって、各東欧諸国の産業が、域内分業体制により分断されて、一つの完成品の部品が分解されて各国に分担されてしまって一国では独自に最終生産まで完結することが出来なかったのである。
   従って、一国がコメコンから離脱すると、その国からの原材料・部品の供給が途絶えてボトルネックを生じて生産全体が頓挫する、従って、いくらソ連圏から離れて自由を勝ち得て独立しても、自国だけで最終生産まで自足できないので経済が麻痺してしまい経済の悪化を招くのである。
   その上、ソ連主導の分割統治なので、一貫生産のノウハウは蓄積されず、技術革新や生産性アップの努力もなされて来なかった為に、ベルリンの壁崩壊後、ソ連離れした瞬間に、各国経済は、産業構造が急激に悪化して、今日の経済回復までに大変な努力と時間を要したのである。
   従って、インフラの整った今がチャンス、と言うことであろうか。
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