熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

文化三昧ミラノ・ロンドン旅・・・12 グローブ座のシェイクスピア

2005年07月28日 | 欧州紀行(文化三昧ミラノ・ロンドン旅)
   12時半から、サウスバンクのグローブ座で、「ペリクリーズ」がある。
   テロ直後なので地下鉄を敬遠して、散歩を兼ねて途中まで歩くことにして、少し早くRACを出た。
   トラファルガー広場に出て、ハンガーフォード橋を渡り、ロイヤル・フェスティバル・ホール横に出た。前回はここで、ポリーニのピアノでフィルハーモニアのコンサートを聴いたが、今回は、適当なコンサートがなく、隣のロイヤル・ナショナル・シアターにもシェイクスピアの公演がなかったので、諦めた。ウイーン・フィルの演奏会など、良く通ったホールなので感慨深い。
   劇場を外れた所でタクシーを拾ってグローブ座へ向かった。

   少し時間があったが、ショップ階から入ろうとしたら、アッパーギャラリー席は今日は閉鎖するので、ボックスオフイスで座席を交換して来いと言う。ローギャラリーの正面前列の良い席をくれた。
   この時、公演していたのは、「ペリクリーズ」「冬物語」「テンペスト」だったが、「ペリクリーズ」は、売れ残っていて、その所為か、或いはテロの所為か、とにかく、客が少なかったのであろう。

   この劇場は、1613年に消失したシェイクスピアの常設劇場グローブ座を、米人俳優サム・ワナメーカーの努力によって再現したもので、1997年6月にオープンした。夏季期間しか開業していないので、最初来たのは秋であり劇場ツアーだけに終わったが、その後3期通っている。
   丁度、映画「恋におちたシェイクスピア」に出てくる劇場と全く同じで、2階建ての舞台を囲んで3階分の円形の客席がある円筒形の建物で、屋根のない青天井で、平土間は立見席になっている。
   最初、田舎の旅籠屋等で、カタカナの「コ」型の建物の開放部分に舞台をしつらえて、各階の渡り廊下にイスを置いて客席にし、平土間を立見席にして、俄か劇場を作ったのが原型であろうか。丁度、出雲の阿国が、四条河原でカブキを踊っていた頃である。

   座席は、木製の床机様のベンチで、クッションを貸し出している。吹き曝しなので、舞台にも客席にも、晴れた日には強い太陽が照り付けるし、雨や嵐になると、容赦なく雨風が吹き付ける。
   太陽のカンカン照りつける炎天下の舞台で、漆黒の闇の中のハムレットを演じるのであるから、イギリスでは、シェイクスピアは「観る」ではなくて、「聴く」と言うのである。

   この「ペリクリーズ」は、エーゲ海を舞台にした旅と航海のお話で、主人公タイヤの領主ペリクリーズが、運命の悪戯で逃避行の旅を続ける。
   その間に、素晴らしいお妃を得て、美しい姫を儲けるのであるが、まさに波乱万丈の舞台展開で、この劇はそれほど有名ではないが、とにかく、楽しい舞台である。
   ペリクリーズを、エルダーとヤングのダブルキャストにしたり、船のマストを縦横に活用して舞台を所狭しと綱渡るサーカス団顔負けの演技が面白い。
   美しいマリーナ姫が、女郎屋に叩き売られるのであるが、気高く崇高なので客が総て説得されて悔い改めて帰るので商売にならない。
   シェイクスピア役者の常として、1人が何役かを兼務するのであるが、お妃セーザの父親サイモニディーズ王を重厚に演じたマルチェロ・マーニが、後半女郎屋の召使を演じるのだが、客席から登場し怪しげな写真をちらつかせながら観客をポンビクのだが、その演技がまた秀逸、さっきまで、マストでアクロバットを演じていた若い女優が、アラレモナイ娼婦姿で色気たっぷりに練り歩くのなど、その芸の達者ぶりには驚く。
   兎に角、素晴らしい3時間で、テロを忘れてしまっていた。
コメント
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