熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

鎌倉散策・・・鶴岡八幡宮の牡丹苑、国宝展

2008年05月01日 | 生活随想・趣味
   鶴岡八幡宮のぼたん庭園が美しいと言うので、参道を真っ直ぐに朱の鮮やかな鳥居とその奥の本宮を目指して歩いた。
   皐月やツツジが鮮やかだが、周りから覆いかぶさる桜並木は新緑でむんむんしているが、桜の季節には、素晴らしい花のトンネルが続いていたのであろう。
   大鳥居を、盛りが過ぎて哀れになった八重桜が伸びる池畔を右折れすると、すぐに、ぼたん庭園の表門が見える。

   鎌倉時代の八幡宮だが、この庭園は、創建800年を記念して昭和55年に開園した全く新しい庭園で、神池・源氏池に面した回遊式日本庭園だが、広々としたオープンな雰囲気が中々素晴らしい。
   第一印象は、どうしても、こじんまりして狭い空間に設えられた上野の東照宮のぼたん苑と比較するので、そんな感じがするのだが、関西の石光寺や長谷寺のような全くオープンなぼたん園とは違って、あくまで、伝統的な日本庭園の中のぼたん庭園なので、その分、庭園として鑑賞出来る楽しみがある。
   景石や御簾垣、杉苔などがぼたんと調和して素晴らしいが、バックを少しづつ盛上げて起伏をつけた景観が奥行きを演出していて、鬱蒼とした背後の森と良く調和している。
   木々を渡りながら啼き続けるウグイスの声が爽やかで気持ちが良い。
   約100品種、1000株のぼたんが植えられていると言うのであるから、花のバリエーションも豊かで楽しめるが、黄色やクロの勝ったぼたんは少ない。

   冬のぼたんの藁囲いは風情があって良いのだが、春ぼたんの白い傘はどうしても目障りで邪魔になるので、少し屈み加減で腰を低くして下から見上げるようにする方が良い。
   ぼたんは、やはり中国の花で、獅子とぼたんは中国の極彩色の装飾に良く調和していると思うのだが、日本に渡来してから既に1000年以上経っていて、もう、日本の花に生り切ってしまっている感じである。
   ところが、小輪で一重のワビスケ椿や東洋蘭のようなワビサビに通じる日本趣味から行くとどうしてもハレの花と言う感じで、普通の日本人の生活には中々馴染まないような気がする。
   私の庭にも、ぼたんが何株かあって、今、4株が豪華に花を咲かせているが、どこか余所行きである。

   庭園内に、中国の蘇州から庭師が来て太湖石を使って作庭した中国式の「湖石の庭」がある。(口絵写真は、その一角)
   太湖石は、複雑な形をした石灰岩で出来た太湖の湖底から掘り出させた奇岩で、中国の名園に行くと必ず見られる名石だが、最近では天然記念物で国外持ち出し禁止となっているようだが、この太湖石を鏤めた石組みの庭園にぼたんが植えられていて花を咲かせている。
   私が見た北京や上海や蘇州での太湖石の庭園には、花があしらわれていなかったので、何となく新鮮な感じがしたが、美しいと言う感じではなかった。
   これが、中国式のぼたん庭園だとすると、日本でのぼたん鑑賞法は大分日本的に変わって来ているのだなあと思った。

   ぼたん園が、池に面してオープンになったところに赤い毛氈を敷いた床机が置かれていて、広い池を隔てた対岸のたわわに花房をつけた美しい藤棚が見晴かせて気持ちが良い。
   その背後の山の緑が、さ緑、黄緑、濃緑と新緑の装いで、実に爽やかで光り輝いていて、ウグイスの鳴き声を楽しみながら小休止していた。

   この庭園にある唯一の出店である柚子柿を売っているオバサンと暫く話をしていた。
   今年は入園者が少なくて商売が上がったりである。ここは入園料の500円が高くて、建長寺はもっと大きなぼたん園で300円なので勝負にならないと言う。
   確かに、八幡宮の本宮の方は、観光客や遠足の子供たちで一杯だが、ぼたん庭園の客は殆ど居ない。
   それに、入園して来ても殆どの人は、花など関心がなく素通りして行くだけだと言う。
   私のように、ぼたんを見たくて来る客は目的を持って来るのだが、ついでに見に来たと言う客は、ハイチーズで記念写真を撮ればそれで済むのかも知れない。
   人が見る見ないに拘わらず、静かに咲いて、自然の創造主に生きる喜びを感謝している素晴らしいぼたんの花を見ていると、感動さえ覚える。勿体ないような気がするのは気のせいかも知れない。

   その後、八幡宮の境内にある鎌倉国宝館に行き、「鎌倉の至宝展」を鑑賞した。
   鎌倉にある国宝や重要文化財などが展示されており、何故か仏像には特別なものがなかったが、国宝の建長寺の蘭渓道隆の肖像や墨蹟、頼朝が後白河法皇から下賜された「籬菊螺鈿蒔絵硯箱」など興味深い作品を見ることが出来た。
   ここも、何故か、入館者はちらほらで非常に少ない。
   美術鑑賞には、絶対に人込みを避けるべきで、東京での特別展など大変な人出となる。
   入館者の少なくなる閉館間際に出かけたり、世界の名画名品などの特別展は、これまで殆ど現地の美術館などで鑑賞済みなので行かないことにするなど自衛策を取っているが、地方の博物館や美術館は、そんな心配がなくじっくりと鑑賞出来るのが良い。
   

   
   

   
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