成長と環境を考えると言うテーマで恒例の「賢人会議」が、品川のグランドプリンスホテルで開催され、沢山の聴衆で埋め尽くされ盛会であった。
今回は、吉川弘之前東大総長の「サステイナビリティ 成長と環境」と言うテーマの基調講演に始まり、
実業界からは、富士ゼロックス山本忠人社長と日産自動車志賀俊之社長によって、自社の環境戦略など産業および企業ベースの取り組みについて報告があり、
最後に、各方面の環境専門家によるパネルディスカッション「低炭素時代の企業経営と成長戦略を考える」が展開された。
ここ数年、持続可能と言う意味合いでサステイナビリティと言う言葉が頻繁に枕詞として使われ、持続可能な経済成長を意図し、如何に、制限要因となる環境破壊や地球温暖化、資源の枯渇等の外部不経済を克服しながら、希望の持てる人類社会の未来を実現すべきかが論じられてきた。
結論は、タダ一つ。このまま現状の経済社会システムを維持し続ければ、人類の滅亡は必定なので、如何にして、持続可能な経済社会を構築して行くのかが人類にとって緊急の課題だと言うことである。
しかし、結論から言えば、人類の危機意識は極めて弱く、煮え蛙の状態で、笛吹けど汝等踊らずと言った段階から一歩も進まず、この第4の排出国である日本でさえ、国論さえ統一出来ずに、福田首相は、セクター別アプローチで地球温暖化問題をリードするのだと意気込んでいる。
いくら産業界の事情があろうとも、2050年にCO2半減を目標にしておきながら、何のキャップも嵌めずに自主規制だけで数値目標抜きで、人類の生存が存亡の危機に瀕している現状を乗り切れると思っている神経が時代錯誤も甚だしいのである。
イヤでもオウでも世界は、キャップ&トレードで10兆円以上の国際市場を形成して動いており、総枠規制は既に世界的なコンセンサスであり、グローバル経済を手中に収めて覇権を握りたいアメリカの新大統領も、一挙に、ヨーロッパ方式に乗るのは間違いない。(日本だけが、蚊帳の外である。)
日産自動車の志賀社長は、自動車業界としてはっきりと次のように明言する。
2000年基準で、2050年目標を達する為には、自動車のCO2排出量を70%削減しなければならない。
しかし、現実的には、内燃機関やハイブリッド車では逆立ちをしても実現不可能で、電気自動車か燃料電池車を実用化して、その電気や水素も再生可能なエネルギーから生み出されたものでなければならない。
日産は、2010年には日米で電気自動車を生産し、2012年に量産体制に入り、ゼロ・エミッション車で世界のリーダーになるのだと宣言している。
セクター別アプローチの推進者で、CO2を40%も排出している地球環境破壊の旗頭である電気業界の森本宜久電気事業連合会副会長が、提言していたのは、原子力発電とヒートポンプによるCO2削減であったが、質量共において、抜本的な解決策は、原子力発電の推進以外にはない筈なのである。
早い話、太陽や風や水などと言った天然現象で供給が不安定なエネルギー源に多くを期待出来るはずがないし、それ以上の斬新かつ未知のイノベーションについては全く予測不可能だからである。
私が主張したいのは、ブレイクスルーの為には、地球温暖化を阻止してサステイナブルな経済成長を維持するためには、一歩二歩も先を見た破壊的イノベーションを実現しない限り無理なので、ここで、はっきり、未来のあるべき開発技術を想定してイノベーションの方向を見定めるべきだと言うことである。
私には、さし当たって、はっきり見えているのは、エネルギーの原子力シフトと、自動車の電気化と燃料電池化、それに、あらゆる部門での遺伝子組み換え技術の開発と推進くらいしかないが、現状の生産技術や生活技術を徐々に改良するような持続的イノベーションへを進めて行くようでは、2050年目標のクリアなど絶対に出来ないと思っている。
極論すれば、電力、鉄鋼、運輸、セメントだけで全体の70%近くのCO2を排出しているのだから、セクター別方式でこれらの分野だけに絞って斬新なイノベーションを推進するために人類の総力を結集するという方法もあろう。
いずれにしろ、これからのイノベーションは、すべからく、ニーズ・オリエンテッド、目的指向の破壊的イノベーションでなければならないと思っている。
吉川氏の話で興味深かったのは、ブーム時代の日本において、製造業の生産性の上昇が非常に高くコンスタントに上昇傾向を示していたので、このトレンドを、ITを活用することによって同じ様な生産性の上昇を実現できないかと言う提言である。
70年代のTQC世界一、産業等ロボットやFMSやCAD/CAMなどの発明、量産自動化が、80~90年代に花開いて普及し日本の工業力を大きく上昇させたが、この時の労働生産性向上技術をエネルギー生産性向上技術へ転換することによって、環境問題のブレイクスルーを図るべきだと言うのである。
ところが、時代が根本的に変わってしまった。
今や、経済行為を推進すれば、絶えず、外部不経済を起こす心配、サステイナビリティ・リスクを引き起こす心配が発生する。
企業による経済行為は、絶えず、企業の社会的責任CSRと隣り合わせであり、コスト最小化と同時に、リスク最小化が求められ、天井知らずの生産性向上のためのイノベーションなど考えられなくなってしまっている。
とうとう、臨界点を超えてしまって、ゼロ・エミッションでも、地球環境はさらに悪化する状態になってしまっているのである。
サステイナブルなどと言う、本来矛盾を孕んだ概念を推進すること自体が幻想なのかも知れない。
ところで、地球温暖化の元凶として嫌われているCO2だが、一挙に集めて固定化して地中に埋め込むイノベーションを生み出せないものであろうか。
これこそ人類にとって最高の知的発明オリンピックである。
(追記)写真は、eco japan から借用。
今回は、吉川弘之前東大総長の「サステイナビリティ 成長と環境」と言うテーマの基調講演に始まり、
実業界からは、富士ゼロックス山本忠人社長と日産自動車志賀俊之社長によって、自社の環境戦略など産業および企業ベースの取り組みについて報告があり、
最後に、各方面の環境専門家によるパネルディスカッション「低炭素時代の企業経営と成長戦略を考える」が展開された。
ここ数年、持続可能と言う意味合いでサステイナビリティと言う言葉が頻繁に枕詞として使われ、持続可能な経済成長を意図し、如何に、制限要因となる環境破壊や地球温暖化、資源の枯渇等の外部不経済を克服しながら、希望の持てる人類社会の未来を実現すべきかが論じられてきた。
結論は、タダ一つ。このまま現状の経済社会システムを維持し続ければ、人類の滅亡は必定なので、如何にして、持続可能な経済社会を構築して行くのかが人類にとって緊急の課題だと言うことである。
しかし、結論から言えば、人類の危機意識は極めて弱く、煮え蛙の状態で、笛吹けど汝等踊らずと言った段階から一歩も進まず、この第4の排出国である日本でさえ、国論さえ統一出来ずに、福田首相は、セクター別アプローチで地球温暖化問題をリードするのだと意気込んでいる。
いくら産業界の事情があろうとも、2050年にCO2半減を目標にしておきながら、何のキャップも嵌めずに自主規制だけで数値目標抜きで、人類の生存が存亡の危機に瀕している現状を乗り切れると思っている神経が時代錯誤も甚だしいのである。
イヤでもオウでも世界は、キャップ&トレードで10兆円以上の国際市場を形成して動いており、総枠規制は既に世界的なコンセンサスであり、グローバル経済を手中に収めて覇権を握りたいアメリカの新大統領も、一挙に、ヨーロッパ方式に乗るのは間違いない。(日本だけが、蚊帳の外である。)
日産自動車の志賀社長は、自動車業界としてはっきりと次のように明言する。
2000年基準で、2050年目標を達する為には、自動車のCO2排出量を70%削減しなければならない。
しかし、現実的には、内燃機関やハイブリッド車では逆立ちをしても実現不可能で、電気自動車か燃料電池車を実用化して、その電気や水素も再生可能なエネルギーから生み出されたものでなければならない。
日産は、2010年には日米で電気自動車を生産し、2012年に量産体制に入り、ゼロ・エミッション車で世界のリーダーになるのだと宣言している。
セクター別アプローチの推進者で、CO2を40%も排出している地球環境破壊の旗頭である電気業界の森本宜久電気事業連合会副会長が、提言していたのは、原子力発電とヒートポンプによるCO2削減であったが、質量共において、抜本的な解決策は、原子力発電の推進以外にはない筈なのである。
早い話、太陽や風や水などと言った天然現象で供給が不安定なエネルギー源に多くを期待出来るはずがないし、それ以上の斬新かつ未知のイノベーションについては全く予測不可能だからである。
私が主張したいのは、ブレイクスルーの為には、地球温暖化を阻止してサステイナブルな経済成長を維持するためには、一歩二歩も先を見た破壊的イノベーションを実現しない限り無理なので、ここで、はっきり、未来のあるべき開発技術を想定してイノベーションの方向を見定めるべきだと言うことである。
私には、さし当たって、はっきり見えているのは、エネルギーの原子力シフトと、自動車の電気化と燃料電池化、それに、あらゆる部門での遺伝子組み換え技術の開発と推進くらいしかないが、現状の生産技術や生活技術を徐々に改良するような持続的イノベーションへを進めて行くようでは、2050年目標のクリアなど絶対に出来ないと思っている。
極論すれば、電力、鉄鋼、運輸、セメントだけで全体の70%近くのCO2を排出しているのだから、セクター別方式でこれらの分野だけに絞って斬新なイノベーションを推進するために人類の総力を結集するという方法もあろう。
いずれにしろ、これからのイノベーションは、すべからく、ニーズ・オリエンテッド、目的指向の破壊的イノベーションでなければならないと思っている。
吉川氏の話で興味深かったのは、ブーム時代の日本において、製造業の生産性の上昇が非常に高くコンスタントに上昇傾向を示していたので、このトレンドを、ITを活用することによって同じ様な生産性の上昇を実現できないかと言う提言である。
70年代のTQC世界一、産業等ロボットやFMSやCAD/CAMなどの発明、量産自動化が、80~90年代に花開いて普及し日本の工業力を大きく上昇させたが、この時の労働生産性向上技術をエネルギー生産性向上技術へ転換することによって、環境問題のブレイクスルーを図るべきだと言うのである。
ところが、時代が根本的に変わってしまった。
今や、経済行為を推進すれば、絶えず、外部不経済を起こす心配、サステイナビリティ・リスクを引き起こす心配が発生する。
企業による経済行為は、絶えず、企業の社会的責任CSRと隣り合わせであり、コスト最小化と同時に、リスク最小化が求められ、天井知らずの生産性向上のためのイノベーションなど考えられなくなってしまっている。
とうとう、臨界点を超えてしまって、ゼロ・エミッションでも、地球環境はさらに悪化する状態になってしまっているのである。
サステイナブルなどと言う、本来矛盾を孕んだ概念を推進すること自体が幻想なのかも知れない。
ところで、地球温暖化の元凶として嫌われているCO2だが、一挙に集めて固定化して地中に埋め込むイノベーションを生み出せないものであろうか。
これこそ人類にとって最高の知的発明オリンピックである。
(追記)写真は、eco japan から借用。