東京医科歯科大、東京外大、東京工大、一橋大と言う在京トップ単科大学付置研究機関から講師が出て、専門的な見地から講演を行う興味深い講演会も、既に4回目で、今回は「安心・安全」をテーマに実施された。
聴講者は、大体、OBと思しき人や学識経験者と言った感じの年配者が大半である。
話の内容だが、夫々、思い思いに専門的な見地から自分の研究テーマを中心に語るのであるから、統一性がある訳でもなく、私のような文科系の人間には、医学や工学関係の話は、いくら易しく語られても、正直なところ、殆ど理解が難しい別世界の話である。
この口絵写真は、玉村啓和教授の「ペプチドとくすり」の時のスライドの一枚である。
艶かしいメスのネズミが描かれているが、抗利尿作用のあるバソプレッシンと言うペプチドは、浮気抑制剤としても利くと言う話で、メスと見れば何でもアタックする助兵衛の乱婚性のアメリカハタネズミに、これを注射するとメスを追っかけなくなるとかで、
一夫一婦制のプレーリーハタネズミには、前脳腹側領域に多数のバソプレッシン受容体があると言うのが分かったと言う。
このペプチドを、20組かの夫婦に服用してもらって実験したら、飲んだ夫婦は口げんかしなかったということらしいが、とにかく、アミノ酸とたんぱく質の間のペプチドは、そのままでも、あるいは製薬にしても役立つらしい。
元素記号の羅列やHやCやOHなどが延々と繋がった難しい話などは異次元の世界で、私に分かるのは、この程度の話なのである。
「ハードウェアに基づく安全と安心(圧縮性流体の計測制御)」をテーマに、香川利春教授は、新幹線700系の先端は何故長いのか、上海のリニアモーターカーとの比較から話を始めたが、列車の水洗便所などの仕組みや聴診器の成り立ちなどから易しく原理を紐解きながら、空気圧分野の発明発見、新製品の開発など面白い話が続いた。
しかし、とにかく、私には、全く別世界のことだと言う感じで、学問研究と言うのは専門化すれば途轍もない世界に入り込み、専門が違うと殆ど理解できない世界に踏み込むのだなあと言うのが良く分かった思いである。
一方、外大床呂郁哉准教授の「グローバルな不安の時代の『安心・安全」:伝統と生活文化からの視点」や、一橋大青木玲子教授の「安全・安心の経済学」は、私の専門でもあり、非常に興味深く聴講させて貰った。
床呂准教授の話は、ボルネオやミンダナオなどでのフィールドワークを通じて蓄積したそこに住む人々の民族文化や生活が、如何に時代の潮流によって安全・安心が危機的な状態に陥っているか、そして、それに抗して自分たちの伝統文化や生活を如何にして守ろうとしているのかを示しながら、現在社会の抱えている深刻な問題を語った。
アマゾンなど地球上に僅かに残っている熱帯雨林とそこに生息する生物の多様性で抜きん出ているボルネオだが、グローバル経済の発展に巻き込まれて、ジャングルは焼き払われてアブラヤシのプランテーションに変わり果て、商業的漁業の進展によって海洋資源が乱獲されるなど自然環境が大きく破壊されている。
ボルネオでは、伝統的に、森林や河川・海などの資源を守るために「タガル制度」を実施して、タガルに指定された場所では、個人による勝手な生物の捕獲や採取が禁止されて、村全体で生物資源の維持管理がなされていると言うのだが、焼け石に水であろうか。
フィリピンの南部・ミンダナオには、少数民族のイスラム教徒が住んでいるのだが、政府の弾圧と殺戮による圧政に苦しみ、100万人以上の難民が住んでいて、イラクよりもアフガニスタンよりもはるかに深刻だと言う。
政府そのものが暴走して国家安全保証の逆説を実施するなど信じられないが、圧倒的な力を持つキリスト教を代表するフィリピン政府の民族浄化政策(?)の一端なのであろうか。
フィリピンでのイスラム過激派の動きが、治安悪化の元凶として、日本では一方的に報じられる情報が多いような気がするが、考え方改めなければならない。
床呂准教授は、自助のために活躍するイスラム系NGOの社会福祉・難民支援活動についても語っていた。
青木教授は、電子レンジの安心品と心配品を例にして、「安全・安心の経済学」を語った。
安全・安心社会を実現するためには、生産者、消費者が合理的に判断できる環境を作り上げて、結果として心配品が排除されることが大切で、その為には、信頼できる情報の提供が必須だと言う。
罰を使って社会的に望ましい行動の動機付けをすることが重要だが、そのルールに有効なインセンティブ効果があることが重要だと説く。
ビールに税金をかければ発泡酒が生まれ、発泡酒に税金をかければ第三のビールが生まれるなどと言うのは、意図しない結果を生むインセンティブなしの拙い政策なので、正しい効果的なインセンティブがあるかないかが、ポイントだと締めくくった。
とにかく、3時間くらいの講演会だが、バリエーションに富んだ意図しないような新鮮な話題の飛び出す話ばかりで非常に有意義な時間を過ごさせて頂いたと思っている。
聴講者は、大体、OBと思しき人や学識経験者と言った感じの年配者が大半である。
話の内容だが、夫々、思い思いに専門的な見地から自分の研究テーマを中心に語るのであるから、統一性がある訳でもなく、私のような文科系の人間には、医学や工学関係の話は、いくら易しく語られても、正直なところ、殆ど理解が難しい別世界の話である。
この口絵写真は、玉村啓和教授の「ペプチドとくすり」の時のスライドの一枚である。
艶かしいメスのネズミが描かれているが、抗利尿作用のあるバソプレッシンと言うペプチドは、浮気抑制剤としても利くと言う話で、メスと見れば何でもアタックする助兵衛の乱婚性のアメリカハタネズミに、これを注射するとメスを追っかけなくなるとかで、
一夫一婦制のプレーリーハタネズミには、前脳腹側領域に多数のバソプレッシン受容体があると言うのが分かったと言う。
このペプチドを、20組かの夫婦に服用してもらって実験したら、飲んだ夫婦は口げんかしなかったということらしいが、とにかく、アミノ酸とたんぱく質の間のペプチドは、そのままでも、あるいは製薬にしても役立つらしい。
元素記号の羅列やHやCやOHなどが延々と繋がった難しい話などは異次元の世界で、私に分かるのは、この程度の話なのである。
「ハードウェアに基づく安全と安心(圧縮性流体の計測制御)」をテーマに、香川利春教授は、新幹線700系の先端は何故長いのか、上海のリニアモーターカーとの比較から話を始めたが、列車の水洗便所などの仕組みや聴診器の成り立ちなどから易しく原理を紐解きながら、空気圧分野の発明発見、新製品の開発など面白い話が続いた。
しかし、とにかく、私には、全く別世界のことだと言う感じで、学問研究と言うのは専門化すれば途轍もない世界に入り込み、専門が違うと殆ど理解できない世界に踏み込むのだなあと言うのが良く分かった思いである。
一方、外大床呂郁哉准教授の「グローバルな不安の時代の『安心・安全」:伝統と生活文化からの視点」や、一橋大青木玲子教授の「安全・安心の経済学」は、私の専門でもあり、非常に興味深く聴講させて貰った。
床呂准教授の話は、ボルネオやミンダナオなどでのフィールドワークを通じて蓄積したそこに住む人々の民族文化や生活が、如何に時代の潮流によって安全・安心が危機的な状態に陥っているか、そして、それに抗して自分たちの伝統文化や生活を如何にして守ろうとしているのかを示しながら、現在社会の抱えている深刻な問題を語った。
アマゾンなど地球上に僅かに残っている熱帯雨林とそこに生息する生物の多様性で抜きん出ているボルネオだが、グローバル経済の発展に巻き込まれて、ジャングルは焼き払われてアブラヤシのプランテーションに変わり果て、商業的漁業の進展によって海洋資源が乱獲されるなど自然環境が大きく破壊されている。
ボルネオでは、伝統的に、森林や河川・海などの資源を守るために「タガル制度」を実施して、タガルに指定された場所では、個人による勝手な生物の捕獲や採取が禁止されて、村全体で生物資源の維持管理がなされていると言うのだが、焼け石に水であろうか。
フィリピンの南部・ミンダナオには、少数民族のイスラム教徒が住んでいるのだが、政府の弾圧と殺戮による圧政に苦しみ、100万人以上の難民が住んでいて、イラクよりもアフガニスタンよりもはるかに深刻だと言う。
政府そのものが暴走して国家安全保証の逆説を実施するなど信じられないが、圧倒的な力を持つキリスト教を代表するフィリピン政府の民族浄化政策(?)の一端なのであろうか。
フィリピンでのイスラム過激派の動きが、治安悪化の元凶として、日本では一方的に報じられる情報が多いような気がするが、考え方改めなければならない。
床呂准教授は、自助のために活躍するイスラム系NGOの社会福祉・難民支援活動についても語っていた。
青木教授は、電子レンジの安心品と心配品を例にして、「安全・安心の経済学」を語った。
安全・安心社会を実現するためには、生産者、消費者が合理的に判断できる環境を作り上げて、結果として心配品が排除されることが大切で、その為には、信頼できる情報の提供が必須だと言う。
罰を使って社会的に望ましい行動の動機付けをすることが重要だが、そのルールに有効なインセンティブ効果があることが重要だと説く。
ビールに税金をかければ発泡酒が生まれ、発泡酒に税金をかければ第三のビールが生まれるなどと言うのは、意図しない結果を生むインセンティブなしの拙い政策なので、正しい効果的なインセンティブがあるかないかが、ポイントだと締めくくった。
とにかく、3時間くらいの講演会だが、バリエーションに富んだ意図しないような新鮮な話題の飛び出す話ばかりで非常に有意義な時間を過ごさせて頂いたと思っている。