ビジネスの成功の要は、競争力にある。競争力とは、競合他社と如何に差別化できるかである。
ところが、現実には、企業は、競争が激しすぎて、本来の競争ではない競争に入り込んで、特殊な模倣の達人となり、異質的同質性、いわば異種のクローンであふれる製品カテゴリーを作り出して、差別化どころか、その差が細かくなり過ぎて模倣品の氾濫となっている。
このことは、たとえば、デジカメでも、薄型TVでも、パソコンでも、沢山のブランドが氾濫しているが、殆ど企業間の製品には差がなく、3Dがブームだと言えば、どの企業も3D搭載に目の色を変えているのを見ても分かるし、洗剤や歯磨き、シリアル等々の一般の日常食品・雑貨に至っては、類似性の海に埋もれてその区別さえ付かなくなり、何を買っても大差ないので、消費者は、完全にブランド音痴となっている。
企業やマーケターは、類似品を差別化と称して製品を増殖させ、どうでも良いような違いを強調する才のみ長けてくるので、シニカル、実利一辺倒、全くの無関心等々へと消費者を追いやり、ブランドロイヤリティを削いでいる。
このような、いわば、マーケターのジレンマから脱却するためには、どのような戦略を打つべきかを、この著者のムン教授は、存在感際立つ「アイデア・ブランド」を打ち立てて成功している革新的な成長企業を例に引きながら、製品開発のイノベーション戦略を展開している。
興味深いのは、「アイデア・ブランド」の創出、すなわち、ブルー・オーシャン市場を目指す無消費者商品の開発と言う差別化戦略には、市場調査を無視していることである。
ムン教授は、イノベーションは、既存の世界の延長線上にはなく、お粗末なほど不完全である市場調査から得られるデータの先にあるものを見なくてはならないし、自らの想像力を働かせなければ生まれて来ないと言うのである。
もう一つユニークなのは、この「アイデア・ブランド」は、言ってみれば、住宅の建て替えに匹敵すると言っていることである。
ムン教授は、夫々の商品カテゴリーで、消費者に提案されていたものを根底から覆す、発想のブレイクスルーによる独創性を発揮し、これまでにない画期的な商品をイノベ―トして、それまでの競争を無意味にするばかりではなく、カテゴリー全体をも一変するような「アイデア・ブランド」の創出を意図しているのである。
この考え方は、このブログで、大分以前に取り上げたリノベーション論とも交錯するのだが、シュンペーターの理論そのものが広義である所為もあり、同じイノベーションでも、元々、既存のカテゴリー商品を基にしてイノベーションを追及する時には、リノベーションの色合いが強くなり、リノベーションそのものがイノベーションともなる。
後述するが、ムン教授の列挙する「アイデア・ブランド」を生んだイノベーションの殆どは、完全に新しい破壊型イノベーションではなく、既存の商品やサービスのリノベーションから生まれているので、住宅のリフォーム、リノベーションのようなものだと言うのであろう。
さて、ムン教授の指摘する「アイデア・ブランド」の例だが、やはり、エクセレント・カンパニーの所以だが、分類・名付けが面白い。
トップページが検索窓しかないGoogle、組み立て運搬など総てを客にやらせるIKEYAと言った顧客の期待している拡張を意図的に断ち切る、他社がyesと言う時にnoと言う世の流れの逆を行く「リバース・ブランド」。
反応の鈍い不完全なロボットを「遊び仲間ペット犬」に仕立てて人気を博したSonyのAIBO、高級スイス製腕時計を派手なポップアートをあしらって流行のファッションブランドにしたスウォッチと言った既存の分類を書き換える「ブレークアウェー・ブランド」。
大型自動車全盛のアメリカ市場に打って出た超小型車ミニクーパー、吐き気を催すほど拙いエナジードリンクのレッドブルと言った文化の摩擦からエネルギーを得ている好感度に背を向ける「ホスタイル・ブランド」etc.
アップルなどは、これらの複合体とも言うべきイノベーションの達人で、競争のもたらす同質性の海の中で、カリスマ的な違いがどのようなものかを見せつけている、と言う。
そう、この本の原書のタイトルは、「DIFFERENT」。ムン教授は、違いの分かる会社、違いの分かる商品やサービスを生み出すイノベーションを追及しなければ、会社の将来は危ういと警告しているのである。
このDIFFERENTは、単なる差別化ではなく、徹底した差別化、すなわち、全く市場にはなく完全に無消費者のブルーオーシャン商品やサービスでなければならないと言うことである。
言うならば、この本は、ムン教授の専門であるコンシューマー・マーケティング戦略、戦略的マーケテイング経営、マーケテイング・イノベイティブ・テクノロジー論から説き起こしたブルー・オーシャン戦略論と言う位置づけであろうが、高度な経営学書で有りながら、家族や友人の例を引くなど語り口が実に暖かくて人間的で、優秀教授として名誉ある地位にあるのも十分に頷ける。
さて、もう何十年も前になるが、私がウォートン・スクールで勉強していた頃から、マーケテイングと言えば、コトラーで、今でも、コトラーのマーケテイング本が書店の経営書コーナーの常連である。
手元に、読もうと思って、コトラーの最新版「コトラーのマーケティング3.0」があるが、その前に、「顧客志向は捨ててしまえ!」とモダン・マーケティングの権威フィリップ・コトラーに敢然と挑戦を挑んだスティーブン・ブラウンの「ポストモダン・マーケテイング FREE GIFT INSIDE!!」が、ある意味では、ムン教授の理論を先取りした、もっと過激なマーケティング論を展開していて面白い。
コトラーを読んでから、合わせて論述してみたい。
ところが、現実には、企業は、競争が激しすぎて、本来の競争ではない競争に入り込んで、特殊な模倣の達人となり、異質的同質性、いわば異種のクローンであふれる製品カテゴリーを作り出して、差別化どころか、その差が細かくなり過ぎて模倣品の氾濫となっている。
このことは、たとえば、デジカメでも、薄型TVでも、パソコンでも、沢山のブランドが氾濫しているが、殆ど企業間の製品には差がなく、3Dがブームだと言えば、どの企業も3D搭載に目の色を変えているのを見ても分かるし、洗剤や歯磨き、シリアル等々の一般の日常食品・雑貨に至っては、類似性の海に埋もれてその区別さえ付かなくなり、何を買っても大差ないので、消費者は、完全にブランド音痴となっている。
企業やマーケターは、類似品を差別化と称して製品を増殖させ、どうでも良いような違いを強調する才のみ長けてくるので、シニカル、実利一辺倒、全くの無関心等々へと消費者を追いやり、ブランドロイヤリティを削いでいる。
このような、いわば、マーケターのジレンマから脱却するためには、どのような戦略を打つべきかを、この著者のムン教授は、存在感際立つ「アイデア・ブランド」を打ち立てて成功している革新的な成長企業を例に引きながら、製品開発のイノベーション戦略を展開している。
興味深いのは、「アイデア・ブランド」の創出、すなわち、ブルー・オーシャン市場を目指す無消費者商品の開発と言う差別化戦略には、市場調査を無視していることである。
ムン教授は、イノベーションは、既存の世界の延長線上にはなく、お粗末なほど不完全である市場調査から得られるデータの先にあるものを見なくてはならないし、自らの想像力を働かせなければ生まれて来ないと言うのである。
もう一つユニークなのは、この「アイデア・ブランド」は、言ってみれば、住宅の建て替えに匹敵すると言っていることである。
ムン教授は、夫々の商品カテゴリーで、消費者に提案されていたものを根底から覆す、発想のブレイクスルーによる独創性を発揮し、これまでにない画期的な商品をイノベ―トして、それまでの競争を無意味にするばかりではなく、カテゴリー全体をも一変するような「アイデア・ブランド」の創出を意図しているのである。
この考え方は、このブログで、大分以前に取り上げたリノベーション論とも交錯するのだが、シュンペーターの理論そのものが広義である所為もあり、同じイノベーションでも、元々、既存のカテゴリー商品を基にしてイノベーションを追及する時には、リノベーションの色合いが強くなり、リノベーションそのものがイノベーションともなる。
後述するが、ムン教授の列挙する「アイデア・ブランド」を生んだイノベーションの殆どは、完全に新しい破壊型イノベーションではなく、既存の商品やサービスのリノベーションから生まれているので、住宅のリフォーム、リノベーションのようなものだと言うのであろう。
さて、ムン教授の指摘する「アイデア・ブランド」の例だが、やはり、エクセレント・カンパニーの所以だが、分類・名付けが面白い。
トップページが検索窓しかないGoogle、組み立て運搬など総てを客にやらせるIKEYAと言った顧客の期待している拡張を意図的に断ち切る、他社がyesと言う時にnoと言う世の流れの逆を行く「リバース・ブランド」。
反応の鈍い不完全なロボットを「遊び仲間ペット犬」に仕立てて人気を博したSonyのAIBO、高級スイス製腕時計を派手なポップアートをあしらって流行のファッションブランドにしたスウォッチと言った既存の分類を書き換える「ブレークアウェー・ブランド」。
大型自動車全盛のアメリカ市場に打って出た超小型車ミニクーパー、吐き気を催すほど拙いエナジードリンクのレッドブルと言った文化の摩擦からエネルギーを得ている好感度に背を向ける「ホスタイル・ブランド」etc.
アップルなどは、これらの複合体とも言うべきイノベーションの達人で、競争のもたらす同質性の海の中で、カリスマ的な違いがどのようなものかを見せつけている、と言う。
そう、この本の原書のタイトルは、「DIFFERENT」。ムン教授は、違いの分かる会社、違いの分かる商品やサービスを生み出すイノベーションを追及しなければ、会社の将来は危ういと警告しているのである。
このDIFFERENTは、単なる差別化ではなく、徹底した差別化、すなわち、全く市場にはなく完全に無消費者のブルーオーシャン商品やサービスでなければならないと言うことである。
言うならば、この本は、ムン教授の専門であるコンシューマー・マーケティング戦略、戦略的マーケテイング経営、マーケテイング・イノベイティブ・テクノロジー論から説き起こしたブルー・オーシャン戦略論と言う位置づけであろうが、高度な経営学書で有りながら、家族や友人の例を引くなど語り口が実に暖かくて人間的で、優秀教授として名誉ある地位にあるのも十分に頷ける。
さて、もう何十年も前になるが、私がウォートン・スクールで勉強していた頃から、マーケテイングと言えば、コトラーで、今でも、コトラーのマーケテイング本が書店の経営書コーナーの常連である。
手元に、読もうと思って、コトラーの最新版「コトラーのマーケティング3.0」があるが、その前に、「顧客志向は捨ててしまえ!」とモダン・マーケティングの権威フィリップ・コトラーに敢然と挑戦を挑んだスティーブン・ブラウンの「ポストモダン・マーケテイング FREE GIFT INSIDE!!」が、ある意味では、ムン教授の理論を先取りした、もっと過激なマーケティング論を展開していて面白い。
コトラーを読んでから、合わせて論述してみたい。