中国に対しては、称賛か酷評か、かなりニュアンスの違った書籍が店頭を賑わせているのだが、私は、主に米国人著者の中国関係本、それも、大学教授や著名ジャーナリストが著した本が多いのだが、かなり、中国に対しては辛口の本が多い。
この本の著者ピーター・ナヴァロは、カリフォルニア大の教授で、「ブラジルに雨が降ったらスターバックスを買え」の著者でもあり、経済紙誌やTVなどでも活躍している著名な学者だが、この本のタイトル「中国は世界に復讐する 原題は The Coming China Wars」どおりで、如何に、中国が危険な国であるかと言うことを、徹頭徹尾分析して、中国脅威論を展開している。
わずか1年で改訂増補版を出したフリードマンの「フラット化する世界」を引き合いに出して、緊急に改訂版を出さざるを得なくなったのは、初版の「中国を震源とする問題」が、想像以上に深刻で猛烈な勢いで悪化しており慄然としているからだと言う。
現在、尖閣列島近海での中国船船長逮捕問題を契機に、日中関係が緊張関係にあるが、いずれにしろ、日本にとっては最も重要な隣国であるので、このナヴァロの辛口中国脅威論をテキストにして、中国の現状を、何回かに亘って論じてみたいと思う。
先に、ロサンゼルス・タイムスのジェームス・マンの「危険な幻想」やカリフォルニア大のスーザン・シャーク教授の「中国 危うい超大国」のブック・レビューでも触れたが、これらの中国本は、極めて学術的にも時事報道においても正確を期した立派な書籍であり、日本の経済的中国依存礼賛論的な多くの書物とは一線を画しており、十分信頼に足るので、恰好の題材だと思っている。
このナヴァロの本は、中国経済がグローバリゼーションを如何にスキューしているかから始まり、知財に対する海賊行為、飽くなき軍拡、環境破壊、恐怖政治と内紛等々多岐に亘っており、今話題になっているノーベル平和賞問題の深層をも炙り出すような迫力で、中国に迫っているのだが、最後に、中国が唯一のアメリカの中央銀行になってしまってアメリカの首根っこを押さえこんでしまった現実や中国に現れつつある民主化への燭光などについても振れていて、一寸、アメリカの苦悩などが垣間見えていて興味深い。
冒頭の日本版への序文で、すべての国の中で、来るべきチャイナ・ウォーズの最前線に立つのは日本だとして、経済関係においても、短期的には、中国の経済大国化で経済的恩恵を受けるであろうが、最終的には、日本のライバルにのし上がって世界中の市場で日本を凌駕しようとしており、そうなれば日本経済は壊滅的な打撃を受ける。
更に、深刻な日本への影響は環境問題で、中国に生産拠点を移している日本にも責任があるが、メイド・イン・チャイナの大気汚染や酸性雨の被害は甚大だとして、アメリカ本土まで及んでいる環境汚染を糾弾する。
もっと憂慮すべきは、中国国内が混乱すると必ず、日本を「身代わり」にして非難の矛先をかわそうとする傾向で、占領時の歴史を「血染めのシャツ」のように振りかざして反日感情を煽る光景は、世界中でもすっかりお馴染みで、中国政府が、若者の間に過激なナショナリズムを焚き付ける所為で、ジャパン・バッシングは余計に発生しやすくなる。
要するに、中国で何か問題が発生する度に日本が巻き込まれるので、そんな事態を防ぐためにも、日本は中国に警戒心を抱かせない程度に、主権を守るための防衛力を強化しなければならない、と言う。
日本の防衛力強化の必要性は、中国が、日本の「正中線」を無視して尖閣列島近海に最先端で最高ランクのミサイル駆逐艦を派遣するなど、東シナ海、それに、南沙・西沙諸島などのアジア海域での石油や天然ガスを巡って、すべてを囲い込む傍若無人な「中国の湖」政策を推進しており、更に、圧倒的な軍事力、特に海軍力の強化によるアジア海域支配の中国の脅威を考慮すれば、日本の「核保有国」への道への選択肢も考え得るとまで説いている。
この日本の核保有問題だが、かってキッシンジャーも、「日本は核武装に向かう」と言う日高レポートで、「日本はミサイルと核兵器を開発するだろう。日本は既に準備していなければ驚きだ。」と言っている。
私自身は、これには異論があるが、ならず者国家や強大な軍事国家に囲まれていて絶えず平和の脅威に晒されている日本が、何故、核武装して自国を自分で守ろうとしないのか、大方の欧米人が、不思議に思っていることは事実のようである。
平和憲法と平和外交故に、核クラブへの参加に抵抗している日本の現状を踏まえながら、ナヴァロは、貿易やエネルギー、環境汚染など中国との摩擦への国内の不満などの深刻な問題以外に、アメリカからの圧力に言及している。
アメリカは、極東地域で新たな大国として台頭してきた中国に対する重要な対抗勢力として、日本に大いに期待を寄せており、同じようにインドにも圧力をかけていると言う。
日本の再軍備を迫るアメリカの圧力が更に強まり、極東地域での中国の影響力への対抗勢力としての期待を膨らませて行けば、それが引き金となって本格的な戦争が始まる可能性は否定できないとまで言うのである。
このアメリカ政府の日本の核開発への圧力が、現実なのかどうかは別として、問題は、日本の国連常任国入りを頑なに拒否し続けるなど日本の国際外交の舞台で足を引っ張り続けて弱体化を狙い、尖閣列島や経済外交などで問題を惹起し続ける中国に対して、日本が如何なるカウンターヴェイリング・パワー(拮抗力)を構築して対抗するのかと言うことである。
戦略的互恵関係などと言う現実とは遊離した意味不明の観念論が独り歩きしている感じだが、政治的にも経済的にも、中身はともかくとしても、巨大な国際勢力として台頭してきた隣国中国に対して、どのように立ち向かうべきなのか、今日ほど日本自身の確固たる信念と戦略が求められている時はないであろう。
私自身の考え方については、以降の各論で論じてみたいと思っている。
この本の著者ピーター・ナヴァロは、カリフォルニア大の教授で、「ブラジルに雨が降ったらスターバックスを買え」の著者でもあり、経済紙誌やTVなどでも活躍している著名な学者だが、この本のタイトル「中国は世界に復讐する 原題は The Coming China Wars」どおりで、如何に、中国が危険な国であるかと言うことを、徹頭徹尾分析して、中国脅威論を展開している。
わずか1年で改訂増補版を出したフリードマンの「フラット化する世界」を引き合いに出して、緊急に改訂版を出さざるを得なくなったのは、初版の「中国を震源とする問題」が、想像以上に深刻で猛烈な勢いで悪化しており慄然としているからだと言う。
現在、尖閣列島近海での中国船船長逮捕問題を契機に、日中関係が緊張関係にあるが、いずれにしろ、日本にとっては最も重要な隣国であるので、このナヴァロの辛口中国脅威論をテキストにして、中国の現状を、何回かに亘って論じてみたいと思う。
先に、ロサンゼルス・タイムスのジェームス・マンの「危険な幻想」やカリフォルニア大のスーザン・シャーク教授の「中国 危うい超大国」のブック・レビューでも触れたが、これらの中国本は、極めて学術的にも時事報道においても正確を期した立派な書籍であり、日本の経済的中国依存礼賛論的な多くの書物とは一線を画しており、十分信頼に足るので、恰好の題材だと思っている。
このナヴァロの本は、中国経済がグローバリゼーションを如何にスキューしているかから始まり、知財に対する海賊行為、飽くなき軍拡、環境破壊、恐怖政治と内紛等々多岐に亘っており、今話題になっているノーベル平和賞問題の深層をも炙り出すような迫力で、中国に迫っているのだが、最後に、中国が唯一のアメリカの中央銀行になってしまってアメリカの首根っこを押さえこんでしまった現実や中国に現れつつある民主化への燭光などについても振れていて、一寸、アメリカの苦悩などが垣間見えていて興味深い。
冒頭の日本版への序文で、すべての国の中で、来るべきチャイナ・ウォーズの最前線に立つのは日本だとして、経済関係においても、短期的には、中国の経済大国化で経済的恩恵を受けるであろうが、最終的には、日本のライバルにのし上がって世界中の市場で日本を凌駕しようとしており、そうなれば日本経済は壊滅的な打撃を受ける。
更に、深刻な日本への影響は環境問題で、中国に生産拠点を移している日本にも責任があるが、メイド・イン・チャイナの大気汚染や酸性雨の被害は甚大だとして、アメリカ本土まで及んでいる環境汚染を糾弾する。
もっと憂慮すべきは、中国国内が混乱すると必ず、日本を「身代わり」にして非難の矛先をかわそうとする傾向で、占領時の歴史を「血染めのシャツ」のように振りかざして反日感情を煽る光景は、世界中でもすっかりお馴染みで、中国政府が、若者の間に過激なナショナリズムを焚き付ける所為で、ジャパン・バッシングは余計に発生しやすくなる。
要するに、中国で何か問題が発生する度に日本が巻き込まれるので、そんな事態を防ぐためにも、日本は中国に警戒心を抱かせない程度に、主権を守るための防衛力を強化しなければならない、と言う。
日本の防衛力強化の必要性は、中国が、日本の「正中線」を無視して尖閣列島近海に最先端で最高ランクのミサイル駆逐艦を派遣するなど、東シナ海、それに、南沙・西沙諸島などのアジア海域での石油や天然ガスを巡って、すべてを囲い込む傍若無人な「中国の湖」政策を推進しており、更に、圧倒的な軍事力、特に海軍力の強化によるアジア海域支配の中国の脅威を考慮すれば、日本の「核保有国」への道への選択肢も考え得るとまで説いている。
この日本の核保有問題だが、かってキッシンジャーも、「日本は核武装に向かう」と言う日高レポートで、「日本はミサイルと核兵器を開発するだろう。日本は既に準備していなければ驚きだ。」と言っている。
私自身は、これには異論があるが、ならず者国家や強大な軍事国家に囲まれていて絶えず平和の脅威に晒されている日本が、何故、核武装して自国を自分で守ろうとしないのか、大方の欧米人が、不思議に思っていることは事実のようである。
平和憲法と平和外交故に、核クラブへの参加に抵抗している日本の現状を踏まえながら、ナヴァロは、貿易やエネルギー、環境汚染など中国との摩擦への国内の不満などの深刻な問題以外に、アメリカからの圧力に言及している。
アメリカは、極東地域で新たな大国として台頭してきた中国に対する重要な対抗勢力として、日本に大いに期待を寄せており、同じようにインドにも圧力をかけていると言う。
日本の再軍備を迫るアメリカの圧力が更に強まり、極東地域での中国の影響力への対抗勢力としての期待を膨らませて行けば、それが引き金となって本格的な戦争が始まる可能性は否定できないとまで言うのである。
このアメリカ政府の日本の核開発への圧力が、現実なのかどうかは別として、問題は、日本の国連常任国入りを頑なに拒否し続けるなど日本の国際外交の舞台で足を引っ張り続けて弱体化を狙い、尖閣列島や経済外交などで問題を惹起し続ける中国に対して、日本が如何なるカウンターヴェイリング・パワー(拮抗力)を構築して対抗するのかと言うことである。
戦略的互恵関係などと言う現実とは遊離した意味不明の観念論が独り歩きしている感じだが、政治的にも経済的にも、中身はともかくとしても、巨大な国際勢力として台頭してきた隣国中国に対して、どのように立ち向かうべきなのか、今日ほど日本自身の確固たる信念と戦略が求められている時はないであろう。
私自身の考え方については、以降の各論で論じてみたいと思っている。