熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

Why Obama has to get Egypt right~ジョージ・ソロス

2011年02月04日 | 政治・経済・社会
   昨夜、ジョージ・ソロスからのメールで、ワシントン・ポストへの投稿「Why Obama has to get Egypt right」記事が送信されてきたのだが、本日、同じ記事が、ヘッドラインとして、ワシントンポストからも送られてきた。
   オバマ大統領に、全面的に、エジプトのプロテターたちを、即座にサポートして民主主義革命を実現させようと言う趣旨の論文だが、今、ニューヨーク・タイムズの電子版を開くと、「White House, Egypt Discuss Plan for Mubarak’s Exit」と言うトップニュースで、「 The Obama administration is discussing with Egyptian officials a proposal for President Hosni Mubarak to resign immediately and turn over power to a transitional government headed by Vice President Omar Suleiman with the support of the Egyptian military, administration officials and Arab diplomats said Thursday.」ソロス案に沿った記事が掲載されていた。
   ムバラク大統領は、即刻退陣して、エジプト軍の支持を得たオマール・スレイマン副大統領を長とする暫定移行政府に政権を譲り渡すように、ホワイトハウスは、エジプト政府に提議したと言うのである。
   ムバラク側近のエジプト政府高官に対して、憲法の改正は勿論、ムバラク大統領に、今、退陣するよう説得せよ high-level Egyptian officials around Mr. Mubarak in an effort to persuade the president to step down now. と言うのであるから、一挙に、米国は、対エジプト政策を変更して、民主化実現へと外交政策の舵を切ったのである。

   ソロスの論文は、かなりトーンが控えめだが、冒頭で次のように説く。
   革命は、大抵の場合は熱狂で始まり涙で終わるのだが、この中東のケースは、オバマ大統領が、何故自分が大統領に選ばれたのか、その価値にしっかりと立脚しさえすれば、涙は避けられる。
   確かに、アメリカン・パワーとその影響力は弱体化したが、わが同盟とその軍隊は、法と秩序を維持し、この革命を平和裏に実現する力を持っており、アメリカ合衆国が、成すべきことは、堕落した圧政者を追放して、自由で公正な選挙で新しいリーダーを選ばせることである。

   エジプトは複雑で影響力ある国であり、正常化すことが必須だが、ターリル広場の群衆は、高学歴の一般人もおれば、老いも若きも、絶望的に貧しい人も居るなど雑多な人々の集合で、理論的なアジェンダさえなく集まっており、組織化されており唯一生き残れる組織と言えば、ムスリム同胞団だけである。
   選挙をすれば、このムスリム同胞団が、主要政党として躍り出るのは間違いないであろうから、その結果、エジプト軍も選挙結果を改ざんするとか、イスラエルが政権交代に反抗するとか、急進的な政治がドミノ倒して他国へ蔓延するとか、中東からの石油の供給に障害が生じるとかの恐れが生じてくると心配する向きがある。
   しかし、ソロスは、この考え方は、中東に関する古い伝統的な考え方であって、今こそ変える必要があり、ワシントンは、抵抗を試みたりせず、エジプトの政変への支援を躊躇すべきではないと言う。

   オバマ大統領は、個人的にも米国の為にも、威厳と民主主義を希求する民衆の側に立って、今こそ、不人気で圧政的な政権にばかり肩入れして築き上げてきた同盟関係をきっぱりと捨て去って名誉を挽回して、アメリカのリーダーシップを確立すべきであって、最も重要なことは、この地域に平和な前進への道を切り開くことである。
   ムスリム同胞団と次期大統領を目指すノーベル賞受賞者のエルバラダイ氏との協力は、民主主義的な政治体制の確立のために建設的な役割を果たすであろう望ましい兆候である。
   この波及効果は、米国の敵であるシリアやイランを更に窮地に追い込むこととなろう。と言う。
   
   ここで、ソロスは、エジプトの政変によるイスラエルへの影響について、言及している。
   イスラエルは、中東が米国のようにより民主主義的になればなる程、得るものが多いはずなのだが、変化が急激であり、多くのリスクが発生するので嫌うであろうし、米国のイスラエル支持派も非常に頑ななので、オバマ政権が、この急激な変化に如何に間髪を入れずに適応した政策を取れるかがカギだと言う。

   私自身は、ソロスほど楽観的にはなれないが、根本的な問題は、火薬庫を抱えた中東での力のバランス、それも、アメリカの覇権で支えられてきた非常に危険かつ脆弱な均衡状態が、今、音を立てて崩れ去ろうとしていることで、これまで、アメリカが中東の同盟国において、民主主義や国民生活の平安をないがしろにし、政治や権力者の腐敗などによる民衆の生活を犠牲にしてでも強権的な権力者を支持して維持してきた中東の政治体制が、どのような変化を来して、どのような形で解決を見て新しい平衡状態に到達するのかと言うことであろうと思う。
   アメリカが築き上げて来た中東のバランス オブ パワーは、謂わば、あくまで、イスラエルの安全、石油資源の確保などアメリカにとって良かれとした国益優先の人為的な平衡状態であって、現実との乖離が甚だしくなって、今や、民衆の自由と民主主義への希求が、巨大なマグマとして爆発したのである。
   チッピングポイントを突破して、新しい均衡状態に移行しようとするエネルギーが、イスラム原理主義的な危険性を秘めていたとしても、ソロスは、恐れる必要はない言うのだが、故国ハンガリーの民主化の課程を熟知しているからかも知れない。

   ソロスは、最後に、
   原則的には、革命には慎重な質だが、このエジプトの場合には、成功するチャンスがある。
   オバマ大統領が、エジプトの人々を、いますぐにサポートすることを望む。
   民主主義とオープン・ソサエティの熱烈な擁護者として、中東に吹き荒れる熱狂に賛同して、ソロス・ファンドは、法の支配、憲法改革、汚職の撲滅、民主主義的組織の確立等の民主化に対してリソース・センターを設置する用意がある。と言っている。

   さて、この口絵で使わせ貰っているアニメは、ワシントンポストからの借用だが、砂時計から滑り落ちるムバラクや、エジプトのミイラにされかかっているムバラクなど、非常に機知にとんだ色々面白いアニメがスライド風に掲載されていて面白い。
   もう、ムバラクは、漫画になって揶揄されるディクテーター。叩き落とされるのは、すでに、秒読みの段階に入ったと言うことである。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする