熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

事実だと思っていることの大半は思い込み~蟹瀬誠一教授

2011年02月26日 | 政治・経済・社会
   某金融関連機関のセミナーで、蟹瀬誠一教授の「グローバル経済と日本の行方」と言うタイトルの講演を聞いた。
   世界経済については、今後、どんどん成長し続けて行き、インフレが進行すると述べていた。
   極めて単純な推論で、24時間生活しながら消費している人口が今後も増え続けるであろうから、消費単位の増加によって、世界経済は拡大して行く。その消費の爆発的な増加により、あらゆるものが足らなくなり、インフレが進行すると言うのである。
   当然、日本は少子高齢化で人口が減って行くので消費が減少して行き、更に、労働人口も減少して行くので、先は暗いと言うことである。

   日本の将来については、貿易の黒字国でありながら、貿易収支の赤字相手国は、カナダとイタリアとフランスであることからヒントが得られる。
   資源国のカナダは別として、イタリアとフランスから入超なのは、ブランド製品を購入しているからで、日本には、素晴らしい文化と伝統工芸品など誇るべきものが沢山あるので、逆に、JAPAN BRANDを開発して、大いに売り出せばよいと言うのである。
   小泉前総理と会った話をして、民主党への政権交代は良かったが、たったの1年でこれほどひどくなるとは思わなかったと言っていたと言う。
   小泉さんが言っていたのかどうかは定かではないが、ついでに、菅総理については、必死に総理の座にしがみついているが、能力のない社長がやっていたら会社が潰れるのと同じで、今こそ、信頼できるリーダーを頂かないと先が見えなくなると語っていた。

   いろいろ語っていたが、私が興味を持ったのは、「事実だと思っていることの大半は思い込みだ」と強調していたことである。
   蟹瀬教授の例示したのは、まず、リーマンショックを100年に一度の危機と言っているのは、真っ赤な嘘で、トイレットペーパーや洗剤が市場から消えたオイルショックや第二次世界大戦や1929年の大恐慌など、いくらでもあるではないかと言う。
   お肌つるつると言うコラーゲンの効用も嘘で、地球温暖化説も怪しいものだと畳み掛ける。
   この事実だと思い込ませる元凶は、断片的で一部誇張するなどのTV放送の影響だと言う。
   この指摘は、当たり前で、歴史さえ事実が何か分かる筈がないし、自分の目で直接見て確かめても真実が何か分からないことが多く、要するに、自分が思い込んでいることが、自分にとっては事実なのである。

   ガルブレイスは、経済学で真実だと説かれている説など、殆ど欺瞞であると「悪意なき欺瞞」で書いており、例えば、株主主権など存在しない虚構であり、私利私欲の飽くなき追求を旨とする企業システムの支配者は、企業経営者であると喝破。彼らの報酬の高いのは自分達で報酬を勝手に決める企業経営者の悪意の賜物であり、限りなく盗みに近いと言っているなど、とにかく、経済学も経営学も、永遠に論争が続いていて、更に、どんどん、新しい仮説なり理論が展開されており、思い込みどころか、何が信実かさえも定かではなかろう。
   アカロフやシラーと言った高名な経済学者さえ「アニマルスピリット」で、経済学の通説に挑戦しており、「ブラックスワン」のナシーブ・ニコラス・タレブなど、経済学者の経済予測など、根本から信用していない。

   これに関連して面白かったのは、自分自身の直観を100%信用すると言う指摘である。
   カンボジアの戦場で、道が分からなくなった時、自分で直観した道を選んで助かったと言う話や、直観で買った東芝株への投資を通じて生活費を補ったと言った経験談を話していた。
   このブログでも、マルコム・グラッドウェルの「第1感」と言う書評で、blink、一瞬のきらめき、ちらつきと言うか、まばたきするする瞬間が、人間の思考や行動を決定すると言う重要な事実を、「輪切り」と言う概念で捉えて、人生の悲喜劇を巻き起こす「第1感」について、色々な方面から実例を引きながら、直観の科学的な論証について紹介したことがあり、また、このブログで、実際の経営でも、経営がアートである以上、直観による意思決定が極めて重要な働きをしていると言ったケースについて論じたことがある。
   私自身も、一目惚れ、すなわち、直覚の愛を信じているので、動物的直観の大切さは分かっている心算だが、しかし、直観力を磨くためには、ただの思いつきではダメなので、日頃から良く勉強して切磋琢磨して、自分自身を高めておかなければいけないと思っている。


   
コメント
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