熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

国際人的交流の拒絶が日本の閉塞の原因?

2011年02月16日 | 政治・経済・社会
   これも昨日と同様に、リチャード・フロリダのコメントだが、世界都市構想の中で、その中心となる金融センターの要件として、有能な人を惹きつける力が大切で、開発に重要な役割を果たすのは、特に、自分たちの能力とエネルギーを改革のために注ぎ込もうとやってきた外来の有能な人たちだと言う。
   専門家たちが、アジアや中東における金融センターに対して、ニューヨークやロンドンほどの食指を動かさない例として、東京をあげて次のように記している。
   ”東京は素晴らしい都市で、インフラは目を見張る程整っており、信じられないようなショッピングができ、信頼できるガイドブックによれば世界最高のレストランもある。更に日本は革新的で、先進経済国でもある。だが、民主的な市場志向国グループ30ヵ国で構成するOECDの中で、どのメンバー国よりも移民の受け入れが少ないことを日本自体も認めている。外国人労働者は、合法・非合法合わせても全労働者数のわずか1%に過ぎず、OECD加盟国では最低である。”

   更に、ジェーン・ジェイコブズの「都市の原理」から、「どのようなものであれ、都市の生み出す多様性とは、都会では色々な人たちが互いに肩を寄せ合い、様々な嗜好、スキル、必要とするもの、供給できるものがあり、ユニークな考えを持つ人たちもいると言う事実に基づいている。」を引用している。
   ジャック・アタリも「21世紀の歴史」の中で、文明の発展進化の歴史を、「中心都市」と言う概念で展開しており、フロリダと同じように、クリエイティブクラスの知識人たちの移動集積と切磋琢磨、すなわち、異文化異文明の衝突が、都市発展の機動力となっていると論じている。

   フランス・ヨハンソンが、「メディチ・インパクト」で、
   メディチが、あらゆる分野の芸術家や学者・文化人を保護した為に、ダヴィンチやミケランジェロは勿論、画家や彫刻家、詩人、哲学者、建築家、実業家など多種多様な人々が沢山フィレンツェに集まり切磋琢磨しあった。このような文明の十字路の形成ゆえに、正に、フィレンツェが異文化や異分野の学問や思想の坩堝となり、新しいコンセプトやアイデアに基づく新しい文化を創造しルネサンスへの道を開いた。これを「メディチ効果」と称して、アイデア、コンセプト、そして、文化の交差点での飛躍的・画期的な進歩・発展を論じて、「メディチ・エフェクトが世界を変える「発明・創造性・イノベーション」は、ここから生まれる!」と説いている。

   ギリシャの黄金時代においても、創造性に満ちた革新的な文化運動を巻き起こしたこのメディチ効果と同じ様な現象がインパクトとなった筈で、人類社会の文化文明のみならず、国家や企業の発展、そして、イノベーションを引き起こす原因となっている。
   一挙に話が飛躍してしまうが、
   日本が、思い切って国を大きく開いて、多種多様な外国人が、日本社会に参入して来れば、異なる文化や領域、学問、科学技術等が一ヶ所に収斂する交差点が日本に生まれて、そのメディチ効果によって創造性が爆発的に開花するならば、それは、ビジネス、科学、文化、医療、料理、IT等々のみならず、日本社会全体のあらゆる部門に渡って革命的な変化を起こして活性化の原動力になるだろうと考えられないであろうか。

   ハイコンセプトの時代、クリエイティブの時代で、世界中は、正に、目の色を変えて知的水準の高い有能なクリエイティブな頭脳の争奪戦に鎬を削っているのだが、日本は、時代の潮流に逆行するかのように、優秀な頭脳の外国からの流入を、人的鎖国メンタリティが強いために、殆ど拒絶しているとしか思えないような状態である。
   イノベーション大国アメリカの理工系博士号を持つ科学者の38%が外国生まれであり、シリコンバレーの企業家やエンジニアの相当数が外国人であると言う事実からも、国家の発展にとって、海外からの卓越した頭脳の参入が如何に貢献しているかが分かる。
   そして、グローバリゼーションに抗するかのように、日本の若者の海外留学生の大幅減少や海外勤務拒否症候群が蔓延するなどで、日本人自身の海外へのアプローチがシュリンク気味となって来ていると言うのであるから、海外移民の積極的受け入れなどどころではなくなっているとしか思えない。
   しかし、いずれにしろ、外国からの人材の積極的な受け入れを拒否することによって、日本自身がメディチ効果を享受できないとしたなら、自ら、日本経済社会の活性化の芽を摘んでしまっていると言うことになるのではないであろうか。
   
   尤も、国を外国人にオープンしただけでは、一朝一夕に、メディチ・エフェクトが生じて、東京が、国際金融センターとして脚光を浴びる訳ではない。
   高度かつ巨大なネットワークと知的凝縮効果の爆発が必要で、金融関係のプロは勿論のこと、弁護士、会計士、その他彼らを支援する人々が密集して、臨界状態を形成することだが、ロンドンのシティを見ればわかるが、それ故に、本国が過去の遺物であるポンドにしがみついていながらも、ウインブルドン現象よろしく、世界の金融センターとして君臨し続けて居れるのである。
   血の滲むような努力が必要であろうが、日本の生きる道は、ただ一つ。クリエイティブ時代においては、ものづくりであろうと、金融サービス産業であろうと、農業であろうと、何であろうと、世界最高の高度な知的能力を凝縮した最先端の世界を目指す以外には有り得ない、また、出来ると思っている。

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