熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

アゾレス海ピコ島のポルトガル・ワイン

2011年11月19日 | 生活随想・趣味
   昨日、NHKの”世界遺産 時を刻”む で、「ワイン~大地を育む生命の水~」と言うタイトルで、ピコ島の琥珀色の・ワインを語っていた。
   ピコ島(Ilha do Pico)は、1427年に、ポルトガル人が植民したポルトガルの最高峰火山ピコで知られるアゾレス諸島の島で、大航海時代に、中継地として使われていたと言う。
   2004年に、「ピコ島のブドウ畑文化の景観」はユネスコの世界遺産に登録され、ピコ島で産するワインは、ピコ・ワイン (Vinho do Pico) としてポルトガル政府の原産地統制 (VLQPRD) の対象であり、優れた品質で知られると言うのだが、迂闊にも、ポルトガルワインの素晴らしさは知っていたが、ポルト・ワイン程度しか知らなかった。

   丁度、この島は、アイルランドのアラン島を思いださせる。
   アラン島は、司馬遼太郎の街道を行くの愛蘭土紀行にも登場するのだが、岩盤で出来たこの島での農業は、土が風で飛ばされないように畑を石垣で囲み、岩盤を槌で砕き海藻と粘土を敷き詰めて土をつくると言う過酷な環境の島である。
   このピコ島も、真っ黒な溶岩を砕いて、石垣を積み、溶岩を砕いた隙間に、ブドウの苗木を置いて、その上に溶岩を小さく砕いた欠片を被せて育てると言う、そんなブドウ畑が、海岸線から山に向かって這い上がって、島を遠巻きにしているのである。
   ブドウの木が枯れないように、海からの潮風を避けるために、丁度、半畳くらいに小さく区切られた歪な長方形のセル状の畑地の周りに、砕いた溶岩の石組みが間仕切り壁のように積み上がっているのだが、それが、延々と続いていて、壮観だが、異様な景観でもある。
   
   嵐が近づき、風が強くなり始めると、ブドウの伸びた枝先を、一本一本地面に伏せて小石を置いて抑え込むと言う大変な作業があるのだが、実が大きくなり始めると、黄ばんだ葉っぱを間引いて、太陽を当てて乾燥させて糖度を上げるのだと言う。
   収穫時には、葉を掻き分けて、小さなマスカット風の実が沢山ついたブドウの房を手摘みで収穫する。
   足で踏み潰したり、古い絞り器で絞ったり、昔ながらの醸造作業が行われているようだが、美味しいと好評のようである。
   昔、ベルリンの崩壊後に、ハンガリーの田舎で、ワイン醸造工場を訪れた時に、古風な製造器具などを見たのを思い出した。
   このピコのブドウも地面を這っている。ブドウはブドウ棚に植えられているものだと思っていたのに、イタリアで、最小に地面に直接植えつけられているのを見て驚いたが、焼けつくような大地を這う方が、太陽に照りつけられて乾燥し甘くなるのかも知れないと思っている。

   ところで、ワインの起源は、グルジアだとかアルメニアだとか、或いは、イランだとかシュメールだとか色々言われているが、いずれにしろ、コーカサスから中東にかけての辺りらしい。
   キリストが、最後の晩餐で、私の血だと言ったので、キリスト教には縁が深いようで、このピコ・ワインも、修道士が始めたらしい。
   あのコーヒーもアラビア半島発祥で、イスラムの導師が、説教前に、スーフィー教徒たちに飲ませたと言うから、人間にとって貴重な飲み物は、宗教団体経由と言うことであろうか。


   とろっと蕩けるような感触のスナック・ブランと言う白カビのナチュラル・チーズを肴に、今年のボジョーレ・ヌーヴォー、樹齢65年と言う古木で仕込まれたと言うシャトー・ド・ピエール・フィランを賞味しながら、この番組の録画を見ていたのだが、チーズだけで、これ程美味しく頂けるのは、やはり、口当たりの軟らかい新酒ワインであるためであろうか。
   黄金色の白ワインではなく、とろりとくすんだ琥珀色のピコ・ワインを見ていると、脂ののった魚の刺身を肴に、味わいたくなってしまった。

   ところで、私など、晩酌の習慣はないので、酒飲みではないのだが、ワインや日本酒など、主に、醸造酒だが、食事とともに飲んでいて、本当に美味しいと思うことがあるので、世の中には、酒が飲めないと言う人があることを思えば、幸せだと思っている。
   西洋では、白人も黒人も、体内に、アルコール消化酵素を持っているとかで、酒類の消化が早くて強いようで、会食などやパーティの時などでは、殆ど間違いなく、ワイングラスを持っているのだが、日本人には、1~2割の人は、酒を受け付けないようだし、半数近くは、すぐに酔ってしまって、沢山は飲めないと言う。
   歌舞伎などでは、酒だけ、ガブガブ飲んだり、一気に飲み干すシーンが多いのだが、これなども、酒を賞味すると言う次元の酒飲みではないので、可哀そうだと思う。
   百薬の長だとは思えないが、人間が作り出した産物の中では、トップクラスだとは思っている。
コメント
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