情け容赦なき激変、熾烈極まりない競争、止まることなきイノベーション、そのような経営を取り巻く激烈な世界の中で、勝ち抜いて行く為には、何が喫緊の問題なのか、生き残るための経営を、最も重要だと考えている5つの課題、すなわち、理念、イノベーション、適応力、情熱、イデオロギーに焦点を当てて論じたゲイリー・ハメルの最新経営組織論が、この本。
冒頭、金融危機や経営者の強欲など近年の経済経営環境の堕落について言及し、グローバルな行動を取る人々の意思決定は、比類ない重要性を持つために、彼らは他に類例のないほど模範的な倫理基準にしたがなければならないと論じているが、金融危機は、資本主義の失敗ではなく、資本主義の番人たちの失敗だとして、資本主義の倫理が地に落ちるのを防ぐ責任は、私たち全員が責任を負わなければならないと言っているのが面白い。
5つの課題のうち、理念、イノベーション、適応力、情熱、について、多くの企業のケースを交えながら論じた部分は、ハメルの経営学のエッセンスとも言うべき非常に充実した興味深い理論が展開されていて、示唆に富んでいて面白いが、
今回は、最後のイデオロギーについて論じている「いまイデオロギーが重要である」で、階層も肩書もない、中核事業さえもないW・L・ゴアがイノベーションを連発して快進撃する様子や、マネージャーが居なくて上司さえ置かないミッションステートメントだけで自主管理して好業績を続けるモーニング・スターと言うトマト会社のピラミッドを逆さにしたようなガラス張りの組織を紹介し、官僚機構型の階層組織からネットワーク組織を垣間見せながら、未来の企業組織論を展開していて、ハメルの新境地が見えて非常に興味深い。
この章の最後に、「さらなる高みを目指して」で、36人のマネジメントの専門家が一堂に会して、世界各地の産業界の革新者たちに奮起を促すような、起死回生、いわば逆転ホームランが期待出来そうな課題を抽出したと言う25の課題が提示されていて、異彩を放っている。
殆ど箇条書きなので、その課題を読み解き精神を体得して、如何に血肉として活用するかは、夫々の経営者の問題であろうが、グローバルリーダーにとっては最高の指標であろうと思う。
さて、本筋から離れるかもしれないが、私が、特に興味を感じたのは、ハメルのイノベーション論である。
私たちの存亡は、私たちの繁栄は、私たちの幸福は、私たちの未来は、須らく、イノベーションにかかっていると言うハメルのイノベーション論である。
「アップルを解剖する」での、アップル分析が面白いので、今回は、これだけに止めて、イノベーション論は、後日に譲りたい。
インスピレーションと先見性に溢れ、妥協を嫌うスティーブ・ジョブズに注目すべきだと言う意見があり、確かに、彼が居なければ、間違いなくアップルは存在しなかったであろうが、ただし、アップルの比類なき業績は、たったひとりの創造性溢れる人物の力で達成されたわけでもないのは明らかであろう。たとえジョブズが睡眠時間をすべて削ったとしても、アップルを最も革新的な企業に押し上げた独創的なアイデアをひとりですべて思いつくのは不可能な筈である。
アップルのアップルたる所以は、特定の戦略や人物によるものではないと考えており、カギはむしろ、特定の理想に向かってひたすら邁進する姿勢にあるだろう。発明家、芸術家、デザイナーなどの世界ではこの理想は決して特別なものではないが、フォーチュン500社の世界には、ゴビ砂漠の水のように稀有である。と言うのである。
勿論、ハメルは、卓越したアップルのアップルたるゆえんである戦略の特殊性について、詳細に論じていて、類書のアップル論よりはるかに詳しくて面白い。
最後に、アップルの比類なき成功は顧客中心の発想に根差していて、イノベーションに適した独特の理念の賜物だと結論付けているのだが、
いずれにしろ、このようなコーポレートカルチャーと経営戦略を打ち立てたのは、スティブ・ジョブズであって、ジョブズあってのアップルであったことには間違いがない。
このあたりのアップル論をもう少し掘り下げて行くと、今回説こうとしていたハメルの経営組織論が、もう少し、はっきりと浮かび上がってくるのかも知れない。
冒頭、金融危機や経営者の強欲など近年の経済経営環境の堕落について言及し、グローバルな行動を取る人々の意思決定は、比類ない重要性を持つために、彼らは他に類例のないほど模範的な倫理基準にしたがなければならないと論じているが、金融危機は、資本主義の失敗ではなく、資本主義の番人たちの失敗だとして、資本主義の倫理が地に落ちるのを防ぐ責任は、私たち全員が責任を負わなければならないと言っているのが面白い。
5つの課題のうち、理念、イノベーション、適応力、情熱、について、多くの企業のケースを交えながら論じた部分は、ハメルの経営学のエッセンスとも言うべき非常に充実した興味深い理論が展開されていて、示唆に富んでいて面白いが、
今回は、最後のイデオロギーについて論じている「いまイデオロギーが重要である」で、階層も肩書もない、中核事業さえもないW・L・ゴアがイノベーションを連発して快進撃する様子や、マネージャーが居なくて上司さえ置かないミッションステートメントだけで自主管理して好業績を続けるモーニング・スターと言うトマト会社のピラミッドを逆さにしたようなガラス張りの組織を紹介し、官僚機構型の階層組織からネットワーク組織を垣間見せながら、未来の企業組織論を展開していて、ハメルの新境地が見えて非常に興味深い。
この章の最後に、「さらなる高みを目指して」で、36人のマネジメントの専門家が一堂に会して、世界各地の産業界の革新者たちに奮起を促すような、起死回生、いわば逆転ホームランが期待出来そうな課題を抽出したと言う25の課題が提示されていて、異彩を放っている。
殆ど箇条書きなので、その課題を読み解き精神を体得して、如何に血肉として活用するかは、夫々の経営者の問題であろうが、グローバルリーダーにとっては最高の指標であろうと思う。
さて、本筋から離れるかもしれないが、私が、特に興味を感じたのは、ハメルのイノベーション論である。
私たちの存亡は、私たちの繁栄は、私たちの幸福は、私たちの未来は、須らく、イノベーションにかかっていると言うハメルのイノベーション論である。
「アップルを解剖する」での、アップル分析が面白いので、今回は、これだけに止めて、イノベーション論は、後日に譲りたい。
インスピレーションと先見性に溢れ、妥協を嫌うスティーブ・ジョブズに注目すべきだと言う意見があり、確かに、彼が居なければ、間違いなくアップルは存在しなかったであろうが、ただし、アップルの比類なき業績は、たったひとりの創造性溢れる人物の力で達成されたわけでもないのは明らかであろう。たとえジョブズが睡眠時間をすべて削ったとしても、アップルを最も革新的な企業に押し上げた独創的なアイデアをひとりですべて思いつくのは不可能な筈である。
アップルのアップルたる所以は、特定の戦略や人物によるものではないと考えており、カギはむしろ、特定の理想に向かってひたすら邁進する姿勢にあるだろう。発明家、芸術家、デザイナーなどの世界ではこの理想は決して特別なものではないが、フォーチュン500社の世界には、ゴビ砂漠の水のように稀有である。と言うのである。
勿論、ハメルは、卓越したアップルのアップルたるゆえんである戦略の特殊性について、詳細に論じていて、類書のアップル論よりはるかに詳しくて面白い。
最後に、アップルの比類なき成功は顧客中心の発想に根差していて、イノベーションに適した独特の理念の賜物だと結論付けているのだが、
いずれにしろ、このようなコーポレートカルチャーと経営戦略を打ち立てたのは、スティブ・ジョブズであって、ジョブズあってのアップルであったことには間違いがない。
このあたりのアップル論をもう少し掘り下げて行くと、今回説こうとしていたハメルの経営組織論が、もう少し、はっきりと浮かび上がってくるのかも知れない。