熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

ブックオフで古書を売る、また、愚を犯す

2013年09月21日 | 書評(ブックレビュー)・読書
   秋深き頃、千葉を離れて鎌倉へ移転することにしているので、ぼつぼつ、その準備を始めなければならない。
   私にとって、最大の難問は、蔵書をどうするかで、大学時代の本は、ほんの数冊だが、留学時代や欧米時代での洋書もかなりあるし、その後も、読書が生活であるような生き方をしてきたので、書斎は勿論本の山と言うか、倉庫である。

   私の大学時代の友人たちの幾人かは、維持管理などが大変なので、住み慣れた一軒家を売り払って、マンションに移り住んでいる。
   60歳くらいから、人生の黄昏を見越して、シンプル・ライフを標榜して、すっかり、身の回りを整理して、マンションに移って、狭いながらも、身丈に合った第二の人生を楽しんでいる奇特な友人もいる。
   尤も、まだ、現役で、矍鑠として仕事に没頭している友人もいて、色々だが、もう、2世代後の孫たちが大きく成っているのだから、老兵は去り行くのみと言うことかも知れない。

   ところで、まず、手始めの整理と思って、本の山を崩し始めて、もう、読まないであろうと思った本を、7~80冊、車に積んで、近所のブックオフに持ち込んだ。
   以前に、かなり質の良い経済書や経営書をブックオフに持ち込んで売った時には、正に、二束三文で、私自身が一生懸命に読んで学んだ本が、買い叩かれて信じられないような価格で買い取られると、何か、自分の貴重な人生や生き様が、全否定されたような思いがして、愕然としたので、金輪際、ブックオフに行かないと決心した。

   ところが、年月が経つと、その思いも消えて、良く考えてみれば、酔狂な私の古書など、今時、喜んで引き取ってくれるところなどはなく、ブックオフに持ち込めば、買ってくれなくても、すべて、どんな本でも、文句を言わずに廃却処分をしてくれるのである。
   公共図書館に引き取ってくれるかと電話をすれば、廃却用古書処分の時に、並べて欲しい人に持って帰って貰いますとケンモホロロ。そのくせ、公共図書館の書棚は、私の持ち込もうとする本より充実度や品揃いが悪くて不十分であり、本の質も悪いのである。
   娘が大切にしていた宝塚関係の蔵書を、私の母校宝塚中学に電話を架けて引き取って貰ったのだが、丁寧に送付について話し合ったにも拘わらず、送った後は、着いたのか着かなかったのか、ナシの飛礫。
   公共図書館にとっては、ボランティアからの古書の贈呈などは、迷惑の限りなのである。

   知人や友人に、引き取って貰うと言う手もあるのだが、人夫々である上に、私としては、これを引き取ってこれは要らないなどと言った形での移転はしたくないので、迷惑をかけることを考えて、しないことにしている。
   経済や経営書、歴史や文化、文学・小説と言った一般的な本は、何処にでもあり気にはしていないが、歌舞伎や文楽、能や狂言、オペラ・クラシック、それに、シェイクスピアや戯曲・芝居、それに、経営書でもイノベーション関連などと言った毛色の変わった蔵書もかなりあって、自分では充実しているつもりでいるので、これらについては、時が来れば、然るべきところに、引き取って貰おうと思っている。
   いずれにしても、今回の移転に対しては、少なくとも、最低限の本に絞って、持って行く以外にないと腹を括っている。

   さて、今回のブックオフだが、3分の1くらいは、買い取り不能だと言って拒否され、買い取られたのは57冊で、トータル買い取り価格は、790円。
   西川 善文著「ザ・ラストバンカー 西川善文回顧録」が150円、ランダム・ウォーカーズほか2冊が50円、 後はすべて一冊10円であった。
   私しか読んでいない、あるいは、ページを繰ったくらいで読んでもいない、かなり良質な経済や経営書が大半(口絵写真のような本)なのだが、1冊10円である。
   定価が一冊平均1200円としても、10万円くらいであるから、100分の1以下の買値である。
   これを、ブックオフは、定価の半額、買値の60倍で売り、100円の廉価でも、10倍以上の値付けをして販売する。

   ブックオフで売っている一番安い本は、100円であるから、原価的には、そんなに悪い商売ではないと思うが、原則定価の半額で売るとしながらも、要するに、今や、百円ショップに成り下がって来ている現実を考えれば、難しいのかも知れない。
   100円コーナーが、かなりの面積を占めているし、本来の書棚の本でも500円程度に値下げされている本が多くなっており、このように価格破壊が起こり始めると、商売に暗雲が立ちこめている証拠で、全体のブックオフの経営は、分からないが、この店に関する限り、後述するように、経営状態がどんどん悪化しており、近い将来、商売が難しくなるであろうと思われる。

   今回は、思っていたよりは酷かったが、別に買い叩かれても、それ程気にはならなかったが、ブックオフの開店当初とは、古書市場が、かなり、悪化して深刻になっているような気がした。
   当初は、新本に近い良書は、定価の10%で買い取っていたし、手垢が着いた本でも買い取って、グラインダーで研磨したり消毒したりしていたのだが、今回、私が買い取りを拒否された本は、全くの良書で、帯が日焼けしていて色が悪くなっているとか、消し忘れた鉛筆の書き込みが少し残っていると言った程度だったが、最近では、どんどん、買い取り本を撥ねているようで、古書も売れなくなったのであろう。

   尤も、この買い取り拒否は、持って帰れと言うけれど、大概の客は、廃却してくれと言って残す筈なので、ブックオフは、買い取り価格ゼロ円で買い取ったと言うことで、当然廃物利用する筈で、客が持ち込んだこんなに多くの本を拒否していては(尤も、これは、私が確認したので分かったのだが、大半の客は、ゼロ円で撥ねられているのに気付いていないと思うのだが)、客に随分失礼だし、第一商売にならない筈である。
   気が付かなかったのだが、出張買取の電話をしたら、何も聞いていないのに、買い取れない本は、持ち帰れないと念を押されたのだが、喜んで買い取ると能書きを掲げながらも、買い取り拒否の本が多いと言うことであろう。

   紙媒体の本が電子ブックに移行して行けば、当然、ブックオフも駆逐されて消えて行かざるを得ないのであろうが、グーテンベルグが印刷機を開発して、本の文化が、人間生活を限りなく豊かにしてきたのだが、その本文化が、今、曲がり角に差し掛かっている。
   ブックオフの衰退を垣間見て、そんな感じがした。

   今日、ブックオフの棚を見たら、以前にはあった新刊本の古書が殆どなく、最新の新古書や良質の本が殆ど消えてしまっていて、本の質が異常に落ちていたのにはびっくりした。
   中型書店で、膨大な本が並んでいるのだが、経済や経営に関する本に限って言っても、まともな本は、殆どない。
   定価の100分の1以下で買うと言う現状のような買い取り方をしておれば、良質で真面な客が、ブックオフを見限ることは、間違いなく、まず、行かなくなったのであろう。
   ちり紙交換ではないですよ。このようなビジネスを、れっきとした(?)本屋である一部上場企業がやっていると言うこと自体が、私には、驚異(?)でさえある。

   古書に力を入れ始めたアマゾンに、仕事を持って行かれて苦戦しているのであろう。
   アマゾンなら、殆どどんな本でもあって、書名や著者名などをパソコンに打ち込めば、瞬時に在庫と価格が分かるし、ブックオフのように単一価格ではなく価格も市場相場を反映しているし、良いと言うグレードの本を買えば、まず、ブックオフの本よりは、はるかに質の良い本が送られてくる。
   私は、世阿弥を書いた寂聴さんの新本同様の「秘花」を、1円送料250円プラスで251円で買って、楽しませて貰った。
   尤も、ブックオフで仕入れてアマゾンで売ると言う人もいるようなので、この世界は、全く分からないが、いずれにしろ、貴重な価値のある古書は残るであろうが、並の古書市場は先細りと考えて間違いなかろうと思う。

   あのヤマダ電機でさえ、ネットショップに市場を蚕食されて立ち行かなくなって、ネット価格より安くすると言う自滅とも思えるような価格破壊に打って出たのだが、リアル・ショップであるブックオフが、アマゾンなどのバーチャルショップに追い詰められて窮地に立つのは時間の問題であろう。
   結局、ICT革命によって、このように規格型で同質な商品を売買している業種では、絶対に、リアルショップは、バーチャルショップには、勝てなくて衰退して行かざるを得ないと言う厳然たる定理が働くこととなる。

   私の血肉となった本の哀れな末路を見たくないので、結局は、子供会の資金になる古紙回収に出して、弔って貰うのが一番良いのではないかと思っている。

   
(追記)最初に書いた時よりも、随分、本文が長くなってしまった。
えぼしさんから、神田神保町に持ち込んだらと言うコメントを頂いたが、その手もあろうが、持って行くのには重いし、送れば、送料の方が高くなるであろう。
9・11の頃には、被災地の施設へ送ると言う手もあったが、もう、飽和状態であろう。
私の学生の頃は、古書を定価の半値以上と言った随分高い価格で引き取って貰えたのだが、とうとう、時代が変わってしまって、紙媒体の本の終焉が近づいて来たと言うことかも知れないと思い始めている。 
   
コメント (1)
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