熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

「2013年版世界競争力報告」 日本は第9位

2013年09月05日 | 政治・経済・社会
   世界経済フォーラムが、「2013年版世界競争力報告」を発表し、日本は、昨年より一つ上がって9位にランクされた。
   日経によると、
   政治への信頼や、資金の借り入れやすさなどが大幅に改善したのを反映した。個別の評価項目では昨年の政権交代を受けて「政治家への信頼度」が57位から33位になった。教育や健康の水準に加え、技術革新力や顧客優先度の評価が高い一方、財政関連が低いのは従来と同じ構図。政府債務残高の国内総生産(GDP)比は前年に続き最下位だった。と言うことである。
   安倍政権の経済政策「アベノミクス」の影響が反映されているのは今年実施した聞き取り調査に限られると言うのだが、「政治家への信頼度」がアップしたと言うのなら、安倍政権のお蔭であろう。

   The World Economic Forumの「Global Competitiveness 2013 - 2014」を開けば、詳細が分かる。
   世界競争力指数を、12の項目に分けて指数化し、その内、政治経済社会構造やマクロ経済、基礎教育などの項目を「基礎要件」、更なる教育訓練、経済市場や労働市場や金融市場などの効率性・発展状況、テクノロジー要件、市場サイズなどを「効率向上要件」、そして、ビジネスの高度洗練性やイノベーションを、「イノベーションおよび洗練性要件」として、夫々、評価をしている。
   本来なら、国家経済は、最後の要件の充実に向かって発展する筈なのだが、現実には、先進国における政治情勢や国家財政の破綻懸念などの問題が錯綜していて、興味深い結果が出ている。

   第一位のスイスや第三位のフィンランドなどは、各項目とも非常に安定した優良国ではあるが、第二位のシンガポールや第7位の香港などは、前2項目は秀でてはいるが、最後のイノベーションや経済的なソフィスティケーション項目では、大分後れを取っている。
   一方、政治経済に問題山積で覇権国から凋落しつつある第五位のアメリカは、「効率向上要件ではダントツであり、洗練性要件でも高位につけながらも、基礎要件が第36位で新興国並である。

   さて、第9位の日本であるが、夫々のランク付けが、第28位、第10位、第3位となっていて、経済の効率向上要件やイノベーション・洗練性など、ミクロ的な側面では高評価を受けながらも、如何せん、マクロ経済の惨状が、一気に、日本のグローバル競争力のランクを落としている。

   ビジネスのソフィスティケーションにおいては、5年間ダントツの第一位で、イノベーション第5位、High R&D支出第2位、タレント保有第4位、世界水準の研究機関第9位、イノベーション能力第6位と言った世界屈指の最高水準の経済資源を保有しており、特許保有率も高く、企業は、最高水準のバリューチェーンを構築して事業活動を行っており、高度な付加価値製品やサービスを生み出していると、べた褒めである。
   しかし、如何せん、殆ど最下位にランクされている深刻なマクロ経済の弱体性(148中第127位)が、足を引っ張っていて、、このレポートは、切先鋭く日本経済の暗部を抉り出す。

   過去4年間、国家予算の赤字は、世界最高水準のGDPの10%を彷徨い、公的債務は、GDPの240%と言う高水準。今年度、大胆な金融政策や種々の財政出動によってこの傾向を逆転させようと試みられてはいるが、実現しそうにない。
   労働市場の硬直性と非効率も問題であり、特に、女性労働就業率は、OECD中最低である。
   劣悪な規制も問題で、特に、起業、高い税金、種々の貿易障害(第111位)、海外投資や外人所有や外人タレントの流入制限規制や閉鎖、などが、日本の国際競争力涵養を妨げている。
   政府が、これらの構造的な問題に如何に対処して、日本経済の活性化を図るかが問題であろうと、レポートは報じている。

   
   この世界経済フォーラムのレポートが、報じている日本の分析には、殆ど異存がない。
   茹でガエル状態の日本をどうするのかと言う問題だが、私には、丁度、日本がかって経験した明治維新や敗戦時代のような激動の時代が、すぐ、そこまで近づいているような足音が聞こえている。

   半沢直樹が、今、人気絶頂である。
   今様水戸黄門物語を見るようなつもりで、視聴率が高いのなら、何をか況やである。
   金融に詳しい知人に聞いてみたら、あの話は、多少誇張はあるが、真実に近いと言う。あまりにも悲しい、後ろ向きの日本。
   私たちが、企業戦士として、世界を相手に奮闘していたJapan as No.1の頃には、攻撃に次ぐ攻撃、後ろを振り返っている余裕などはなかった。

   半沢直樹が、あのようにお粗末極まりない愛之助演じる金融庁や中車演じるメガバンクのトップと対峙しなければならない、それが、真実の日本だとするならば、あまりにもマイナスのベクトルが強すぎて、進歩など程遠い世界となる。
   このレポートが、素晴らしい日本の資質や強みを称賛しながらも、それを生かし切れない悲しい日本の姿を活写しながら訴えている真実を、
   今こそ、日本全体が、自分たちの運命だと真摯に受け止めて、対処すべきだと思っている。
   

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