熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

英国、来年3月までにEU離脱通告

2016年10月03日 | 政治・経済・社会
   メイ英首相は、2日、バーミンガムで始まった保守党大会で、6月の国民投票で決まった英国のEU離脱方針について演説し、交渉開始となるEUへの通告を来年3月末までに行う意向を、公式に表明した。
   
   EU基本条約50条に、離脱条件を定める交渉は、通告から原則2年が期限と定められており、2019年3月末までに離脱が実現することとなる。しかし、問題が問題だけに、交渉は難航が予想され、2年以内に決着できるかどうかは未定で、交渉期間は、全加盟国の一致により延長できるので、この可能性は否定できない。

   EU離脱の最大の目的は、「国境管理と移民数の削減を実現する」とするEU諸国からの移民に対する規制強化であり、英国にとって実効性のある移民削減策を実現することを最優先する姿勢を鮮明にしている。
   一方、離脱交渉において、貿易や経済政策においては、これまでのように域内で享受してきたように、英国にとって可能な限り最善の条件を勝ち取ると言う。

   勿論、ドイツなどEU強硬派は、このような英国の身勝手な条件の受け入れなどを拒否しており、同じ保守党内においても、EUとの貿易関係を犠牲にしてでも移民制限を重視する離脱強硬派と、単一市場へのアクセスを可能な限り維持するとする穏健派で意見が分かれていると言う。

   ところで、元々、EU(ECC)は、ドイツとフランスとベネルックスの6か国によって形成されてたもので、英国は、大分遅くに加盟しており、賢明にもと言うべきか、ユーロにも加盟せずに、自国通貨ポンドを守り通しており、今回のユーロ危機からは、解放されていた。
   背景に、元植民地による強大な英国連邦市場が存在すると言う利点もあったのであろう。
   EU同様に経済が悪化したのは、市場原理主義者、新自由主義者の経済学に従って緊縮財政政策を取った所為であり、経済のかじ取りを誤ったからである。

   何故、英国は、移民に対して深刻な問題を抱えているのか。
   移民においても、ウインブルドン現象が最たるのは昔から英国で、すでに、多民族国家であり、豊かな他文化社会が形成されていた上に、世界共通語である英語が、移民にとっては魅力的であった。
   それに、ユーロに縛り付けられていない分、自由な経済政策が効を奏して、失業率の低い経済が維持されていたので、本国にいるよりは、仕事を得るだけでも満足した移民たちが、EU域内の移民自由化によって、特に、東欧諸国から大挙して、英国へ流入してきたと言う。
   それら移民が、ロンドンのみならず、斜陽化した地方の工業都市や農場に押しかけて、低賃金でも働き、全国規模で英国人の職を蚕食し、豊かであった福祉の悪化を招いたのであるから、イギリス人が怒らない筈がない。
   
   ミッテランが東西ドイツの再統一を認めた代わりに、コールがユーロ創設を受け入れた経緯があったのだが、このユーロ政策で独り勝ちしたドイツが、今や、ユーロの最右翼の擁護者となっている。
   スティグリツウが、新著「ユーロから始まる世界経済の大崩壊」で、ドイツの蹉跌など、ユーロの破綻とその衝撃について詳述しており、非常に面白い。
   電信柱の長いのも、ポストの赤いのも、すべて、ユーロが悪いのだと言う訳である。
   その意味では、英国は、ユーロ破綻の影響から免れ、EUから離脱と言っても、ギリシャ問題で散々話題になった、ユーロからの離脱対策と言った厄介な問題がないだけ、幸せと言うべきであろう。

   英国については、これまで、随分書いてきたが、他のEUのメンバー国家と違って、昔から、ヨーロッパ人だと思っている英国人は少ないし、アメリカや英連邦のカナダやオーストラリア、インドと言った経済大国との絆も強く、EU離脱による経済的ダメッジは、クルーグマンが説いていたように、私も、それ程大きくないであろうと思っている。
   何も知らないバカな(英国人はそう思っている)ブラッセルの役人に頭ごなしに、法を押し付けられたり、指示されるのは、もう限界で、誇り高い英国人魂を発露して生きて行きたい、と言う英国人気質の発露が、ブレグジットだったのであろう。
   英国に5年在住して、永住権も持っていた私であるから、英国びいきは当然である。
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