この本を読んでいて、最初に面白いと思ったのは、徹底的なユーロ批判よりも、実は、ユーロに依存して繁栄を謳歌していた筈のドイツ経済が、ユーロ故に、決して褒められたような経済状態ではないと言うスティグリッツの指摘である。
まず、ユーロ圏の景気後退は、既に8年続いており、ヨーロッパが「失われた10年」に直面していることは明確で、近い将来に旺盛な成長を取り戻す可能性は考え難く、日本のように「失われた四半世紀」が取り沙汰されるリスクさえあると述べている。
ユーロ圏全体の経済成果は、実質的にすべての指標でお粗末な限りで、危機的当事国の経済成果は壊滅的で、失業率、特に若年失業率は非常に高く、一人当たり産出は、ユーロ圏全体で見ても危機前よりも低い。ユーロ圏の成果が著しく劣ると言う事実は、ユーロ圏の苦悩に共通する原因があることを示しており、それはずばりユーロだと言うのである。
ユーロ圏の実質GDPはほぼ10年の間停滞していて、2015年度のGDPは、2007年の水準を0.6%上回っただけである。
ユーロ圏の構築後、一瞬でも地域全体の成長が加速されたことはない。ユーロ創設前のGDPの成長トレンドがそのまま続いて居れば、現在の所得水準をはるかに凌駕しており、2015年で18%の乖離で、その損失は2兆3000億ドルであり、GDPの累積損失は、12兆1000億ドルを超えると、スティグリツツは、数字を示して実証している。
ユーロ圏諸国の一部、ダントツはギリシャだが、ポルトガル、アイルランドに続いて、イタリア、スペインなど一部の国が直面する経済下降は、先の世界大恐慌に匹敵するか、それを凌駕するほど悪く、危機当事国の生活水準や社会保障制度の低下などは、実体数字より悪く、スペインなどの失業率の低下要因が、有能な労働者や若者たちの大量の海外流出であり、家族との絆を断ち切り家族崩壊の危機を惹起している。
緊縮政策の強制による政府支出の大幅な削減の強要で、教育などの基本サービスを提供する公共プログラムに予算が回らず、社会計画の縮小で国の不安定性は高まる一方で、とりわけ、低中所得層の国民に大きな痛みが齎されていると言う。
さて、ドイツだが、成功だと見えるのは、あくまでもユーロ圏諸国と対比した場合だけで、絶対評価では、マイナスD程度。
2007~15年期のドイツの実質経済成長は、0.8%に過ぎず、「失われた10年」当時の日本の2001~10年期と変わらず、労働年齢人口の年期減少率が日本で1%、ドイツで0.3%であることを考えれば、ドイツの成果はいかにも貧弱だと言う。
1980年代から2000年代半ばまで、ドイツのジニ係数と貧困率は右肩上がりで上昇し続けており、ついに、OECD平均を上回っており、ドイツが競争力の確立に成功した理由の一つは、底辺層を犠牲にしたことだとまで、スティグリッツは言う。
ドイツにとっては、中国市場で需要の高い製品を生産しており、中国市場の台頭に助けられたと言う幸運もあり、更に、EU市場でのダントツの競争力を駆使するなど、膨大な輸出に恵まれて、黒字を蓄積し続けてきたこともドイツ経済を支えてきた要因であろう。
ドイツ経済については、このスティグリッツの指摘に驚いているくらいで、十分な予備知識がないので、何ともコメントできない。
ドイツは、危機当事国の根源的な構造欠陥を非難して、ギリシャなど弱小国家を徹底的に虐めぬいてきた。
硬直化した労働市場、ぬぐえぬ汚職体質、脱税者と怠慢な投資家の巣窟・・・
労働組合を弱体化させたり、労働法や租税法を改正させたり、経済の仕組みに手を出して徹底的な緊縮財政政策を強要し続けてきた。
このような改革をすれば、再び成長路線に戻れると言うのであろう。
私自身は、経済統合を成功させるためには、合衆国や単独国家のように、経済力のある政府なり、強力な国家が、経済的弱小国や危機的国家を、徹底的に援助し助けなければならないと思っており、ドイツに、その意思なり姿勢がなければ、EUが、益々窮地に立つと思っている。
ギリシャなどの怠慢姿勢だけが問題ではないと、優等生のフィンランドの経済悪化を論じているのが興味深い。
いずれにしろ、ギリシャにとっては、EUには残留しながら、かってのイギリスのように、ユーロから脱退した方が将来のためには良いと思っている。
スティグリッツは、世界経済の環境変化、とりわけ、2008年世界金融危機と中国の台頭、などに対する調整を行う際、ユーロはむしろ阻害要因となるとして、ユーロ圏の抜本的な構造改革に言及している。
しかし、新自由主義、市場原理主義的な経済手法を貫こうとする実質的にはドイツのユーロが、改革可能なのであろうか。
まず、ユーロ圏の景気後退は、既に8年続いており、ヨーロッパが「失われた10年」に直面していることは明確で、近い将来に旺盛な成長を取り戻す可能性は考え難く、日本のように「失われた四半世紀」が取り沙汰されるリスクさえあると述べている。
ユーロ圏全体の経済成果は、実質的にすべての指標でお粗末な限りで、危機的当事国の経済成果は壊滅的で、失業率、特に若年失業率は非常に高く、一人当たり産出は、ユーロ圏全体で見ても危機前よりも低い。ユーロ圏の成果が著しく劣ると言う事実は、ユーロ圏の苦悩に共通する原因があることを示しており、それはずばりユーロだと言うのである。
ユーロ圏の実質GDPはほぼ10年の間停滞していて、2015年度のGDPは、2007年の水準を0.6%上回っただけである。
ユーロ圏の構築後、一瞬でも地域全体の成長が加速されたことはない。ユーロ創設前のGDPの成長トレンドがそのまま続いて居れば、現在の所得水準をはるかに凌駕しており、2015年で18%の乖離で、その損失は2兆3000億ドルであり、GDPの累積損失は、12兆1000億ドルを超えると、スティグリツツは、数字を示して実証している。
ユーロ圏諸国の一部、ダントツはギリシャだが、ポルトガル、アイルランドに続いて、イタリア、スペインなど一部の国が直面する経済下降は、先の世界大恐慌に匹敵するか、それを凌駕するほど悪く、危機当事国の生活水準や社会保障制度の低下などは、実体数字より悪く、スペインなどの失業率の低下要因が、有能な労働者や若者たちの大量の海外流出であり、家族との絆を断ち切り家族崩壊の危機を惹起している。
緊縮政策の強制による政府支出の大幅な削減の強要で、教育などの基本サービスを提供する公共プログラムに予算が回らず、社会計画の縮小で国の不安定性は高まる一方で、とりわけ、低中所得層の国民に大きな痛みが齎されていると言う。
さて、ドイツだが、成功だと見えるのは、あくまでもユーロ圏諸国と対比した場合だけで、絶対評価では、マイナスD程度。
2007~15年期のドイツの実質経済成長は、0.8%に過ぎず、「失われた10年」当時の日本の2001~10年期と変わらず、労働年齢人口の年期減少率が日本で1%、ドイツで0.3%であることを考えれば、ドイツの成果はいかにも貧弱だと言う。
1980年代から2000年代半ばまで、ドイツのジニ係数と貧困率は右肩上がりで上昇し続けており、ついに、OECD平均を上回っており、ドイツが競争力の確立に成功した理由の一つは、底辺層を犠牲にしたことだとまで、スティグリッツは言う。
ドイツにとっては、中国市場で需要の高い製品を生産しており、中国市場の台頭に助けられたと言う幸運もあり、更に、EU市場でのダントツの競争力を駆使するなど、膨大な輸出に恵まれて、黒字を蓄積し続けてきたこともドイツ経済を支えてきた要因であろう。
ドイツ経済については、このスティグリッツの指摘に驚いているくらいで、十分な予備知識がないので、何ともコメントできない。
ドイツは、危機当事国の根源的な構造欠陥を非難して、ギリシャなど弱小国家を徹底的に虐めぬいてきた。
硬直化した労働市場、ぬぐえぬ汚職体質、脱税者と怠慢な投資家の巣窟・・・
労働組合を弱体化させたり、労働法や租税法を改正させたり、経済の仕組みに手を出して徹底的な緊縮財政政策を強要し続けてきた。
このような改革をすれば、再び成長路線に戻れると言うのであろう。
私自身は、経済統合を成功させるためには、合衆国や単独国家のように、経済力のある政府なり、強力な国家が、経済的弱小国や危機的国家を、徹底的に援助し助けなければならないと思っており、ドイツに、その意思なり姿勢がなければ、EUが、益々窮地に立つと思っている。
ギリシャなどの怠慢姿勢だけが問題ではないと、優等生のフィンランドの経済悪化を論じているのが興味深い。
いずれにしろ、ギリシャにとっては、EUには残留しながら、かってのイギリスのように、ユーロから脱退した方が将来のためには良いと思っている。
スティグリッツは、世界経済の環境変化、とりわけ、2008年世界金融危機と中国の台頭、などに対する調整を行う際、ユーロはむしろ阻害要因となるとして、ユーロ圏の抜本的な構造改革に言及している。
しかし、新自由主義、市場原理主義的な経済手法を貫こうとする実質的にはドイツのユーロが、改革可能なのであろうか。