熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

朝日デジタル:書店ゼロの自治体、2割強に 人口減・ネット書店成長

2017年08月24日 | 経営・ビジネス
   ヤフーを開いたら、朝日デジタルの「書店ゼロの自治体、2割強に 人口減・ネット書店成長」と言う記事が目についた。
   ゼロ自治体が多いのは北海道(58)、長野(41)、福島(28)、沖縄(20)、奈良(19)、熊本(18)の順で、ほとんどは町村だが、茨城県つくばみらい市や、堺市美原区、広島市の東・安芸両区の3行政区さえもゼロだと言うから、驚く。
   千葉県の某市で、産婦人科がなくて出産に隣町に行かねばならないと聞いてびっくりしたことがあるが、医療同様に、書店の地方空洞化が進んでいるのであろう。

   読書は、私の人生そのものであるので、これまで、本のことについては随分書いてきた。
   8年前に、「本を読まない日本の大人、特に四国人」と言うブログ記事で、文化庁の国語に関する世論調査「読書量の地域格差」を引いて、
   ”月に一冊も本を読まない大人が、全国平均38%もいて、四国は最悪でダントツに悪く、60%もの人が本とは全く縁がないと言うのである。
   仕事や生活によって本と関わりのある人がかなりいるであろうから、極論すれば、四国の普通の人は、平生は本など全く読まないと言うことであろう。”
   と書いた。
   日本人の大人が、このような体たらくであれば、子供の読書離れは当然で、地方の本屋が、どんどん潰れるのは仕方がない。と言うことであろう。

   今、丹羽 宇一郎の「死ぬほど読書 (幻冬舎新書) 新書」がベストセラーだと言う。
   アマゾンの内容紹介に、次のように書かれている。
   本を読む人にしか、わからないことがあるーー。
   もし、あなたがよりよく生きたいと望むなら、「世の中には知らないことが無数にある」と自覚することだ。すると知的好奇心が芽生え、人生は俄然、面白くなる。自分の無知に気づくには、本がうってつけだ。
   ただし、読み方にはコツがある。「これは重要だ」と思った箇所は、線を引くなり付箋を貼るなりして、最後にノートに書き写す。ここまで実践して、はじめて本が自分の血肉となる。
   
   そんなことを考えて読んだことはないが、全く異存はない。
   少しでも真実を知りたい、美しいものに触れたい、真善美を求めて行脚する喜びは、何物にも代えがたい幸せであるとは思っている。
   私の場合、線を引いて付箋を貼ると言うのは同じだが、書き写す代わりに、このブログで、ブックレビューとして残しており、私自身の拙い知的遍歴の軌跡でもあると思っている。

   これは、読書癖と言うか、私の人生における習慣の一部で、生活のリズムにビルトインされてしまえば、惰性とは言わないまでも、日々の喜び生きがいになっているので、特に、それを意識することもない。

   この記事で、思うのは、確かに、「人口減・ネット書店成長」によるリアル書店への打撃は大きいと思う。
   アマゾンを叩けば、ロングテイル現象もあって、殆ど探せないような古い貴重な本まで、探せて手に入るし、今のところ、どんな本でも、送料無料か送料257円で、即刻、送られてくる。
   それに、画面には、関連本など情報満載で、新しい発見があり、町の書店とは雲泥の差。
   アマゾンのマーケットプレイスやブックオフで、新古書を見つければ、最新の新刊本が、2~3割安で買えるので、書店へ行って、再販防止で高い定価の本を買う必要もないと某読書家は宣っている。
   しかし、この「人口減・ネット書店成長」と言う現象は、何も本だけではなく、ビジネス全体に与えている影響で、百貨店の淘汰まで言われている時代であり、時代の潮流であるから、紙媒体の本の維持存続のみならず、リアル書店としての魅力を追求して本屋存続を実現する以外に方法はないであろう。
   
   ロンドンにいた時、ピカデリー通りのハッチャーズ書店(1797年創業)によく行って、時には、何時間も過ごしたことがあったが、今、私が行っている東京や横浜のトップ大型書店は、何処も、雑なスーパーもどきの雰囲気で、そんな魅力のある店は、一つもない。
   新しい知的な出会いを期待して出かけて行くのだが、やはり、書店の醸し出す文化的な雰囲気と言うか、そこで過ごす何とも言えない心地よさ知的な喜びを味わう至福観と言ったものも、大切なのであろうと思う。

   全く蛇足ついでに記すと、私の親しい友人だが、読みたい本があれば図書館へ行くと言うのが二人いた。
   京大の経済を出た老人たちだが、これでは、本屋が潰れても仕方がないと思っている。

   この口絵写真は、中国の無錫:恵山古鎮にある恵山書局と言う書店である。雑誌や一般書籍などは殆どないようで、かなり、程度の高い格調のある書店のようで、学生や学者風の客が、熱心に本を品定めしていたのだが、文化の薫り高い静謐な雰囲気が、何とも言えなかったのを思い出す。
   下の写真は、魯迅達文化人を育んだ上海の内山書店の内部と内山完造の像だが、ロンドン・シティのロイズ・コーヒー店と同じように、貴重な文化文明の一里塚の布石となったのである。
   これこそ、本当の書店であろうと思う。
   
コメント
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