第71回カンヌ国際映画祭で、最高賞であるパルム・ドールを獲得した是枝裕和監督の「万引き家族」と言うタイトルの映画だが、非常に強烈な印象を与える作品であった。
はじめは、あまりにも可哀そうな映画の印象を受けたので、映画館に行くのを逡巡したのだが、行って良かったと思っている。
監督は、”新作『万引き家族』の直接的なきっかけは、既に死亡している親の年金を、家族が不正受給していた事件を知ったことで、「犯罪でしかつながれなかった」というキャッチコピーが最初に思い浮かんだ。”と語っている。
これに、幼児虐待事件を絡ませていて、日本の暗部を炙り出している。
HPを借用すると、
高層マンションの谷間にポツンと取り残された今にも壊れそうな平屋に、治(リリー・フランキー)と信代(安藤サクラ)の夫婦、息子の祥太(城桧吏)、信代の妹の亜紀(松岡茉優)の4人が転がり込んで暮らしている。彼らの目当ては、この家の持ち主である初枝(樹木希林 )の年金だ。足りない生活費は、万引きで稼いでいた。社会という海の底を這うような家族だが、なぜかいつも笑いが絶えず、互いに口は悪いが仲よく暮らしていた。冬のある日、近隣の団地の廊下で震えていた幼い女の子・ゆり(佐々木みゆ)を、見かねた治が家に連れ帰る。体中傷だらけの彼女の境遇を思いやり、信代は娘として育てることにする。
息子の祥太は、捨て子であったのを治・信代夫婦が拾って育てて、治が万引きを教えた。治は日雇い労務者だが足を痛めて働けず、信代はクリーニング店を首になり、学校に行けない祥太とゆりは、万引きに出かけて行き、亜紀は、マジックミラー越しに客と接するJK見学店で働いていて、月に一度、初枝に付き添って年金を下ろしに行く。足が悪くても、治が祥太を連れて、万引きに出勤しなければ、生活が成り立たないのである。
そして、この家族は、全く血が繋がっていないアドホックな家族なのであるが、普通の家族以上に結束が固く、丁度、終戦直後を彷彿とさせるような極貧生活だが、笑いが絶えない。この口絵写真は、つかの間の休息、海水浴に出かけた浜辺での幸せ家族の一瞬である。
隅田川の花火大会で、全員縁側に出て首を伸ばして、音だけしか聞こえない花火を見上げるシーンなども胸に応える。
しかし、店にある品物はまだ誰のものでもないと教えられたのだが、駐車場に止まっていた車の窓を割って人のバッグを盗んで嬉々として逃げて行く治の姿を見て、盗みに疑問を抱いた祥太が、わざと、音を発ててスーパーからミカンを持ち逃げして捕まる。警察が調べるうちに、安楽死した初枝の葬式が出来ずに床下に穴を掘って埋めたのが発覚し、年金詐欺などの罪を一切信代が被って収監されて、祥太は施設に送られ、ゆりは親元に戻され、治は寂しいドヤ暮らしに、幸せだった(?)家族が崩壊して、散りじりになる。
事情聴取を受けた治が、何故、子供に万引きさせたのかと聞かれて、それしか教えることがなかったのだと答える悲しさ哀れさ。
面会に来た祥太に、逡巡する治を制して、信代は、捨て子だった場所や状況を告げて後を祥太に託す母心(?)。全編、安藤サクラが、実に上手くて感動的。
幼児虐待の態度が変わらない母親を避けて、マンションのベランダに立って寂しそうに外を眺めるゆりの姿を映して映画は終わる。
幸せとは、一体どういうことなのか。
不幸な運命と境遇に泣く幼い二人の子供(芝居とは思えない巧みな芸、涙がこぼれるほど上手い)を主人公にして、是枝監督は、平和ボケの日本人に、問いかけている。


はじめは、あまりにも可哀そうな映画の印象を受けたので、映画館に行くのを逡巡したのだが、行って良かったと思っている。
監督は、”新作『万引き家族』の直接的なきっかけは、既に死亡している親の年金を、家族が不正受給していた事件を知ったことで、「犯罪でしかつながれなかった」というキャッチコピーが最初に思い浮かんだ。”と語っている。
これに、幼児虐待事件を絡ませていて、日本の暗部を炙り出している。
HPを借用すると、
高層マンションの谷間にポツンと取り残された今にも壊れそうな平屋に、治(リリー・フランキー)と信代(安藤サクラ)の夫婦、息子の祥太(城桧吏)、信代の妹の亜紀(松岡茉優)の4人が転がり込んで暮らしている。彼らの目当ては、この家の持ち主である初枝(樹木希林 )の年金だ。足りない生活費は、万引きで稼いでいた。社会という海の底を這うような家族だが、なぜかいつも笑いが絶えず、互いに口は悪いが仲よく暮らしていた。冬のある日、近隣の団地の廊下で震えていた幼い女の子・ゆり(佐々木みゆ)を、見かねた治が家に連れ帰る。体中傷だらけの彼女の境遇を思いやり、信代は娘として育てることにする。
息子の祥太は、捨て子であったのを治・信代夫婦が拾って育てて、治が万引きを教えた。治は日雇い労務者だが足を痛めて働けず、信代はクリーニング店を首になり、学校に行けない祥太とゆりは、万引きに出かけて行き、亜紀は、マジックミラー越しに客と接するJK見学店で働いていて、月に一度、初枝に付き添って年金を下ろしに行く。足が悪くても、治が祥太を連れて、万引きに出勤しなければ、生活が成り立たないのである。
そして、この家族は、全く血が繋がっていないアドホックな家族なのであるが、普通の家族以上に結束が固く、丁度、終戦直後を彷彿とさせるような極貧生活だが、笑いが絶えない。この口絵写真は、つかの間の休息、海水浴に出かけた浜辺での幸せ家族の一瞬である。
隅田川の花火大会で、全員縁側に出て首を伸ばして、音だけしか聞こえない花火を見上げるシーンなども胸に応える。
しかし、店にある品物はまだ誰のものでもないと教えられたのだが、駐車場に止まっていた車の窓を割って人のバッグを盗んで嬉々として逃げて行く治の姿を見て、盗みに疑問を抱いた祥太が、わざと、音を発ててスーパーからミカンを持ち逃げして捕まる。警察が調べるうちに、安楽死した初枝の葬式が出来ずに床下に穴を掘って埋めたのが発覚し、年金詐欺などの罪を一切信代が被って収監されて、祥太は施設に送られ、ゆりは親元に戻され、治は寂しいドヤ暮らしに、幸せだった(?)家族が崩壊して、散りじりになる。
事情聴取を受けた治が、何故、子供に万引きさせたのかと聞かれて、それしか教えることがなかったのだと答える悲しさ哀れさ。
面会に来た祥太に、逡巡する治を制して、信代は、捨て子だった場所や状況を告げて後を祥太に託す母心(?)。全編、安藤サクラが、実に上手くて感動的。
幼児虐待の態度が変わらない母親を避けて、マンションのベランダに立って寂しそうに外を眺めるゆりの姿を映して映画は終わる。
幸せとは、一体どういうことなのか。
不幸な運命と境遇に泣く幼い二人の子供(芝居とは思えない巧みな芸、涙がこぼれるほど上手い)を主人公にして、是枝監督は、平和ボケの日本人に、問いかけている。

