熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

ジム・オニール:BRICSについて語る

2018年08月17日 | 政治・経済・社会
   2001年に、BRIC's(その後BRICS)をコインしたジム・オニールが、 Project Syndicate のinterviews記事”New Rules for the New Global Economy”で、BRICSについて、少し語っているので、記して見たい。

   途中で、BRICSグループが結成されて以降、リーダーが会合を続けているが、個々のメンバー国の経済成長なり、相互貿易や投資実績などの改善に向けて努力がなされてきたのか、問う必要があると言う。
   最初の10年間は、かなり高度成長であったが、最近の10年は、南ア、ブラジル、ロシアは、厳しい状態で、ブラジルは、依然10位以内の経済大国だが、問題を抱えている。
   相対的に、この10年くらいのBRICSの業績は、それ程、パッとしたものではないにしろ、ヨーロッパと比べれば、ずっとましである。と言う。

   因みに、2017年度IMF発表の世界GDPランキングは、
   第1位   アメリカ 19,390,600百万US$
   第2位   中国   12,014,610
   第3位   日本    4,872,135
   第6位   インド   2,611,012
   第8位   ブラジル  2,054,969
   第12位  ロシア   1,527,469
   第33位  南アフリカ  349,299

   南アは、問題外としても、ロシアの経済的パフォーマンスの悪さは特筆もので、欧米先進国型の資本主義体制の確立は到底不可能であり、中国のような、国家資本主義的な、新しい計画経済的な政治経済施策が必須な筈にも拘らず、それを推進する経済的テクノクラートが育たず、徹底的な政治腐敗から脱曲できない限り、何度も書いてきたが、ロシアの経済発展は、お先真っ暗であろう。
   ブラジルには、1974年から1979年までいたのでよく知っているが、前近代的と言うかポルトガル人による建国以来の政治経済社会体制およびそれから派生したブラジル人気質から殆ど脱却していないアミーゴ型腐敗政治がいまだに支配的で、永遠の未来の国に甘んじている。
  オニールは良く言ったが、ブラジルのように、神がブラジル人であるに違いないと言う程、BRICSは、天然資源に恵まれているなど、これ以上神から愛されて恵まれた国はない筈。
   どうしたら、国家の繁栄をもたらすことが出来るのかは、出来の悪い経済学者や経済学者でも分かっている程周知の知識、これを活用して目覚められないのであるとすると、何をか況やである。

   さて、オニールは、中国には、コメントしている。

   中国の政治経済改革は、多くのチャレンジの結果良好で、トランプの貿易戦争のレトリックに対して、中国の経常収支の黒字は、GDP比は、世界的金融危機当時の2008年の10%から、1%にダウンしていて、当時より貿易依存度が小さくなり、大いに好転していることに留意すべきである。
   むしろ、経済危機が幸いして、中国の指導者たちが、付加価値の低い輸出依存経済構造から脱却して、内需拡大など経済構造の変革に軸足を向けたのである。
   10%から6%への経済成長のスローダウンは、むしろ、経済収支の黒字を軽減して好都合であった。

   消費の拡大は、経済成長の明るいサインで、国内経済のサービス・オリエンテッドなビジネス拡大が、世界の先端テクノロジー企業の投資を誘発して、今や、テンセントやアリババなどは、シリコンバレーの競争企業に引けを取らず、中国の経済グローバル対応とその変容は、欧米メディアの報道のはるか先を行っている。
   
   Made in China 2025 (中国制造2025)政策推進の一方、一党独裁やメディア・インターネットなどの思想情報統制、中国政府の強権政治が、国民の起業家精神やイノベーションの発露を妨げるのではないかとの質問に対して、オニールは、黒白ハッキリすべきではなくて、WhatsAppを模した中国版のWeChatが、WhatsAppの10倍以上複雑化高度化していることを考えれば、中国の体制システムが、創造性を殺すなどは考えられないと答えている。

   オニールは、最大の問題だとしているのは、Hukou system(中華人民共和国の戸籍制度)である。
   都市戸籍を取得できずに、田舎から都市へ流れてくる二級国民扱いの地方民の存在で、年間所得4万ドル以上の20%には入れない国民のことである。
   15~20年くらいの間に、政府は、この制度を改めない限り、4万ドル所得の40%内にも入れない無産階級の国民が蜂起して大暴動が勃発して大混乱を引き起こすこととなろうと言う。

   中国経済については、これまで、随分、問題点などを指摘されてきたが、市場経済システムを適度に上手く活用して、国家資本主義体制でありながら、かなりうまく運営されていて、深刻な問題を避けて成長を続けて今日に至っている。
   ロシアと違って、アメリカで高度な最先端の経済学や経営学などの教育を受けた沢山のテクノクラートが実際の実務に携わっており、国民自身が、経済オリエンテッドで、利に敏い気質に満ちているので、サーバー攻撃も含めて、科学技術の導入など、最先端の国家操縦術に、ショートカットで、アクセス可能であり、余程のことがない限り、共産党政府が、国家資本主義の舵取りを誤らなければ、このまま、進んで行くのではないかと思っている。
   実際にも、購買力平価で換算すれば、GDPはアメリカに接近しており、アメリカを凌駕するのも、それ程遠くない、恐らく、2020年代であろうと思われる。

   中国は、人口が巨大なので、まだ、新興国並みの経済を内包した状態であろうが、GDP世界一ともなれば、マスとしての威力が炸裂するので、経済的覇権の確立は可能であり、グローバル成長発展軌道も、欧米流から脱皮して、中国型に大きく修正されるであろう。
   トランプが、アメリカの落日促進政策(?)を進めて、このトレンドを、どんどん加速している感じなので、良いのか悪いのか分からないが、新時代の到来は、そう遠くないであろうと思われる。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする