熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

訪日客、暮らしかき乱すと言うのだが

2018年08月26日 | 地球温暖化・環境問題
   昨日の日経夕刊に、「訪日客、暮らしかき乱す 車道に広がり踏切撮影/病院トイレ無断使用」そして「観光公害」マナー対策急務 と言う記事が、大きく報道されていた。
   口絵写真は、稲村ケ崎から江の島へ向かう帰途、車窓から写した問題となっている鎌倉高校前駅の江ノ電の踏切あたりの写真だが、確かに、いつも、中国人と思しき観光客が屯している。

   最初は、そこから、江の島が綺麗に見えるのに、そっちのけで、何故、面白くもないこんなところで写真を撮っているのか不思議に思っていたのだが、1990年代に「週刊少年ジャンプ」で連載された人気バスケットボール漫画「スラムダンク」のアニメに登場した踏切のモデルとされ、数年前から人気の撮影スポットになっている。のだと言う。
   中国・四川省の10代女性は「交流サイト(SNS)でこの踏切を投稿すれば日本旅行の象徴になる」と満足顔。登場人物にふんしてバスケのユニホームやセーラー服を着ている姿も目立つ。と言うのだから、若者たちの夢の実感体験であろう。私が、はじめてパルテノンの丘に立った感慨と同じかも知れない。
   近くの踏切に観光バスが何度も止まり、数十人単位の中国人観光客がひっきりなしに訪れ、写真撮影のために車道に広がって交通を妨げたり、病院のトイレを勝手に使ったりと、観光客増加で生じる住民への悪影響は「観光公害」とも呼ばれ、行政などが対応に追われている。とも言う。

   いわば、ここは、中国人観光客にとっては、ミシュランの星ではないが、絶対に訪問して写真を撮るべき聖地のような存在なのであって、大仏や鶴岡八幡宮よりも、鎌倉観光では、マストの観光スポットなのである。
   問題は、この場所が、観光には何の縁も所縁もなく、何の準備も整っていない住宅地の真ん中であり、タダでさえ渋滞の激しい極めて交通のビジーなボトルネックである三差路であって、住民生活の安寧を妨げ、混乱を来しかねないことである。
   
   さて、中国の観光情報誌などが、この江ノ電踏切スポットをどう扱っているのかは知らないが、ミシュランのグリーン本などを参考にして、世界中を何十か国も歩いた私自身、やはり、観光案内書やガイドブックで、三ツ星スポットは勿論、星のついた見るべきとか行くべきとか表示されている場所には、極力足を向けて訪れる努力をした。
   ミシュラン・ガイドJapanを持った外人客が、鎌倉では、東慶寺や報国寺に多いのも、このミシュラン効果である。
   このように観光スポットを目指して訪れるのは、観光客の趨勢であろうから、受け取り手が、どう判断するかは、その人夫々だろうが、私は、今回の中国観光客の江ノ電の鎌倉高校前駅東寄りの三差路詣では、当分、止めることは不可能だと思っている。
   
   したがって、これに対処する方法は、この現実を容認して、如何にして、近隣の住民の日常生活の安寧と秩序を維持するのか、そして、交通問題の悪化を避けるのか、その対策なり方策を考えて打ち出すことである。
   観光立国を標榜する鎌倉が、この問題を、観光公害などと言った後ろ向きの捉え方をして、対応を考えたら、根本から、臍を嚙む失政となろう。

   7月19日に、このブログで、同じような問題を抱えてアムステルダムが困っていると言うことで、「アムステルダム観光客急増で規制強化」を書いたが、今や、グローバリゼーションと経済成長のお陰で、世界中の人々が豊かになり移動が簡単になった所為もあって、世界中の観光地が、パンク寸前飽和状態になって、混雑を極めている。
   白洲正子が誘うような隠れ里といったような魅力的なスポットは、瞬時に、消えてしまうのである。
   余談だが、この傾向に鑑み、金と暇を持て余す団塊の世代の人に、足腰が弱ると旅の魅力は台無しになるのは必定なので、出来るだけ早い機会に、海外旅行に出立することを勧めたい。

   さて、世界中からの観光客が急増して、インバウンドの経済効果が日本経済を支えていることは事実であり、日本の国際理解と文化伝統などソフトパワーの発信にも大きく貢献しているのであろうから、外国からの観光客の受け入れは、前向きに精神誠意対処すべきだと思う。
   
   
コメント
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