エコノミスト誌記事の翻訳で、日経に「シリコンバレー去る起業家たち 」と言う興味深い記事が載っていた。
先日、ブックレビューしたアレックス・ロスは、「未来化する社会」の中で、
シリコンバレーが、ほぼすべての産業のスタートアップを引き寄せ、未来の産業がイノベーションの前途有望な培養地として隆盛を極めており、古代のローマのように世界帝国のキャピタルとして君臨しているとしていたが、しかし、この状態が継続して、新しいシリコンバレーが誕生しないのかについては、
ビッグデータに関しては、他の産業を吸収したり乗っ取ったりするのではなく、現存するあらゆる産業の成長を後押しするような用途の広いツールの役割を果たすので、その市場が今後大きく成長すれば、昔からそこにある専門知識を活性化する起爆剤となるとして、
ボストンがバイオテクノロジーの中心地として健康に関するデータ会社が集まり、テキサスではエネルギーアナリティクス会社が生まれ、ワシントンDC周辺には、法執行機関や情報機関の専門知識を基に、プライバシーや法医学に強い企業群が形成されるなど、傑出した企業が世界中に散らばる状態となり、ビッグデータの富の創造は、シリコンバレーに富が集中したインターネットの時とは、全く異なるものとなると書いていたのを紹介した。
ところが、このエコノミストの記事では、最近では、シリコンバレーを離れて、新天地へ移るスタートアップは後を絶たず、「オフ・シリコンバレー」と言う言葉が生まれる程であり、シリコンバレーで最も著名な投資家であるピーター・ティールさえ転出組だと言うのである。
それでは、シリコンバレー脱出の原因は何なのか。
最大の要因は、コスト高で、物価の高さは、世界の最高水準で、誕生したばかりのスタートアップ企業が活動するためには、米国の他の都市に比べて、少なくとも4倍の費用が掛かると言うのである。
量子コンピューティングから分子生物学に至るまで、最近の新技術はネットサービス事業よりも利益率が低いので、新興分野でのスタートアップ時の節約は死活問題であり、更に、ベイエリアの生活は、交通渋滞や麻薬問題、衝撃的なほどの格差など、不快な面も少なくないと言う。
もう一つの要因は、IT企業の寡占化で、新興企業は、アルファベットやアップル、FBの陰で、資金調達に一層苦労するようになり、巨大企業が、あまりにも高額な給与を社員に払うために、人材の獲得に苦労しているのである。このために、人材が固定し、経済界全体のダイナミズムが失われるようになり、この傾向は、中国でも同じで、アリババやバイドゥ、ティンセントによる投資がべンチャーキャピタルの半分を占め、新興企業の行く末に発言権を握っている。と言う。
最近では、米国で最も起業が盛んなのはマイアミ・フォートローダーデルで、自動運転ならフェニックスとピッツバーグ、メディア関連ならニューヨーク、フィンテクならロンドン、ハードウエアなら深圳と言った調子で、規模は小さいが、新しいシリコンバレーが生まれていると言う。
有望なアイデアさえあれば、何処にいても資金は調達できるし、IT投資家はカリフォルニア州だけではなく世界中で最新のアイデアをさがしており、新しい技術の発信地が一地域に限定されるべき理由はなく、分散することによって富は公平に分配され、発想も多様化することになろう。
ロンドンのシティが、世界の金融の中心として、繁栄を謳歌してきたのは、あのロイズ・コーヒー・ハウスに始まる膨大な裾野を持った金融インフラを構築できたからであって、いわば、シリコンバレーも今様シティなのであろうが、
今では、スマホやビデオ通話、メッセージングアプリなどシリコンバレーの企業が生み出したツールのお陰で、チームが各地のオフィスや街に分散していても十分に機能するようになった。
ロスの説くように、ビッグデータを活用するなどによって、アイデアや技術があり、昔からそこにある専門知識を活性化する起爆剤となれば、十分に新しいイノベーションの中心が生まれ出ると言うことであろう。
シリコンバレーの落日と言う記事であったので、面白いと思って一文を書いてみた。
先日、ブックレビューしたアレックス・ロスは、「未来化する社会」の中で、
シリコンバレーが、ほぼすべての産業のスタートアップを引き寄せ、未来の産業がイノベーションの前途有望な培養地として隆盛を極めており、古代のローマのように世界帝国のキャピタルとして君臨しているとしていたが、しかし、この状態が継続して、新しいシリコンバレーが誕生しないのかについては、
ビッグデータに関しては、他の産業を吸収したり乗っ取ったりするのではなく、現存するあらゆる産業の成長を後押しするような用途の広いツールの役割を果たすので、その市場が今後大きく成長すれば、昔からそこにある専門知識を活性化する起爆剤となるとして、
ボストンがバイオテクノロジーの中心地として健康に関するデータ会社が集まり、テキサスではエネルギーアナリティクス会社が生まれ、ワシントンDC周辺には、法執行機関や情報機関の専門知識を基に、プライバシーや法医学に強い企業群が形成されるなど、傑出した企業が世界中に散らばる状態となり、ビッグデータの富の創造は、シリコンバレーに富が集中したインターネットの時とは、全く異なるものとなると書いていたのを紹介した。
ところが、このエコノミストの記事では、最近では、シリコンバレーを離れて、新天地へ移るスタートアップは後を絶たず、「オフ・シリコンバレー」と言う言葉が生まれる程であり、シリコンバレーで最も著名な投資家であるピーター・ティールさえ転出組だと言うのである。
それでは、シリコンバレー脱出の原因は何なのか。
最大の要因は、コスト高で、物価の高さは、世界の最高水準で、誕生したばかりのスタートアップ企業が活動するためには、米国の他の都市に比べて、少なくとも4倍の費用が掛かると言うのである。
量子コンピューティングから分子生物学に至るまで、最近の新技術はネットサービス事業よりも利益率が低いので、新興分野でのスタートアップ時の節約は死活問題であり、更に、ベイエリアの生活は、交通渋滞や麻薬問題、衝撃的なほどの格差など、不快な面も少なくないと言う。
もう一つの要因は、IT企業の寡占化で、新興企業は、アルファベットやアップル、FBの陰で、資金調達に一層苦労するようになり、巨大企業が、あまりにも高額な給与を社員に払うために、人材の獲得に苦労しているのである。このために、人材が固定し、経済界全体のダイナミズムが失われるようになり、この傾向は、中国でも同じで、アリババやバイドゥ、ティンセントによる投資がべンチャーキャピタルの半分を占め、新興企業の行く末に発言権を握っている。と言う。
最近では、米国で最も起業が盛んなのはマイアミ・フォートローダーデルで、自動運転ならフェニックスとピッツバーグ、メディア関連ならニューヨーク、フィンテクならロンドン、ハードウエアなら深圳と言った調子で、規模は小さいが、新しいシリコンバレーが生まれていると言う。
有望なアイデアさえあれば、何処にいても資金は調達できるし、IT投資家はカリフォルニア州だけではなく世界中で最新のアイデアをさがしており、新しい技術の発信地が一地域に限定されるべき理由はなく、分散することによって富は公平に分配され、発想も多様化することになろう。
ロンドンのシティが、世界の金融の中心として、繁栄を謳歌してきたのは、あのロイズ・コーヒー・ハウスに始まる膨大な裾野を持った金融インフラを構築できたからであって、いわば、シリコンバレーも今様シティなのであろうが、
今では、スマホやビデオ通話、メッセージングアプリなどシリコンバレーの企業が生み出したツールのお陰で、チームが各地のオフィスや街に分散していても十分に機能するようになった。
ロスの説くように、ビッグデータを活用するなどによって、アイデアや技術があり、昔からそこにある専門知識を活性化する起爆剤となれば、十分に新しいイノベーションの中心が生まれ出ると言うことであろう。
シリコンバレーの落日と言う記事であったので、面白いと思って一文を書いてみた。