時事通信が、「英EU貿易協定合意=関税ゼロ維持、来月1日暫定発効へ―離脱問題に終止符」と次のように報じた。
【ロンドン、ブリュッセル時事】欧州連合(EU)と1月末にEUを離脱した英国は24日、難航していた自由貿易協定(FTA)締結交渉で合意した。懸案として最後まで残っていた漁業権をめぐる溝が埋まった。英国がEUに事実上残留している「移行期間」の終了目前で、約9カ月半に及んだ難交渉が決着した。
FTAによって英EU間では今後も関税ゼロの貿易が維持される。英EU企業の公平な競争を維持する枠組みの導入でも一致。このほか、運輸やエネルギー、司法協力などでの取り決めも盛り込まれた。
合意したFTA案はEU加盟国が今後承認し、英議会での実施法案の可決などを経て、来月1日に暫定発効される見通し。欧州議会は来年の正式承認を予定している。
ジョンソン英首相は記者会見で「われわれの運命や法律の主権を取り戻した」と成果を強調。一方、フォンデアライエン欧州委員長は「長年の友人との新たな出発の確かな基盤だ。ついに英離脱問題から離れられる」と未来に目を向けた。
年明けに関税が復活することなどで大きな混乱が生じ、新型コロナウイルス禍に苦しむ英EU経済に二重の打撃を与える事態は回避される。2016年6月の英国民投票以来、欧州を揺るがせ続けてきた離脱問題の混迷にようやく終止符が打たれる。
焦点だった漁業権では、英海域でEU漁船の操業を認める5年半の移行期間を設置。この間に、EUの漁獲割り当ては現状から25%削減する。最近まで80%減を求めていた英国が大幅に譲歩した。また、企業の公平な競争を保つため、環境や労働などの規制で相手の水準が大きく逸脱した場合に報復関税を課せるようにする。
これで、十分に簡潔に事情を語っているので、蛇足は避けた。
さて、最後まで決着が難航した漁業問題だが、英国にとっては、6000隻の漁船と12000人の漁民による生産が、イギリスのGDPの0.5%以下にしか過ぎずハロッズ百貨店の売り上げにも達しないほどなのだが、英仏海峡両岸の漁業者にとっては、ハドックと鱈争奪戦に鎬を削っており漁業は死活問題であって、ジョンソンもマクロンも選挙では大課題となっていて、ほんの細やかな経済問題が政治を振り回しているケースである。
さて、今回は、8年間、オランダとイギリスに住んでいて、ささやかな魚をめぐる経験や思い出について、書いてみたい。
私が、オランダに住んでいたとき、小ぶりなのだが旨みが凝縮された美味しい小エビ「クルヴェット・グリーズ」が好物でよく食べていたのだが、イギリスとの捕獲争いが激しくなって高騰したことがあって、日本近海と同じで、沿岸国家同士の魚資源争奪戦を知ったことがある。
これとは別に、オランダ人のニシン好きは突出していて、ハーリング(haring)と称して、魚卵や白子がまだ発達していない若い脂が乗っている新鰊/新ニシンを、タマネギを塗して絡ませて、尾を指でつまんで持ち上げて、顔を仰向けにして丸ごと一匹を食べるスタイルが典型的で、ハーグやスヘフェニンゲン(我々日本人はスケベニンゲンと言う)周辺の海岸など屋台で見られる風景で興味深かった。
驚いたことに、オランダ最大の建設会社で、切った張った激しいネゴをして合意に至った遅い午後、社長が部下に指示してサーブされてきたのがこのハーリングで、
しかし、この時は、頭から飲み込むスタイルではなく、ピクルス付きで、ニシンを一口大に切って爪楊枝で刺して食べるスタイルだったが、お相伴したかどうか記憶にはない。
このニシン好きのオランダ人は、身を食べるだけで、カズノコは、肥料にするくらいで捨てていたのだが、日本人が住みついて関心を示し始めると、そこは、利に聡いダッチの本領発揮で、商売を始めた。
アムステルダムのオークラのレストランでも、カズノコは、それ程安くもなかったので、オランダ人は値をつり上げたのであろう。
さて、イギリスだが、フィッシュ・アンド・チップス( fish-and-chips)が有名で、タラなどの白身魚のフライに、棒状のポテトフライを添えたもので、謂わば、イギリスのファーストフードと言う位置づけか、簡易な国民食と言うことだが、マックみたいなものだと思ったので、私は、食べたことがない。
これなど、イギリスの料理・食事は不味い最悪だと言われる典型であろうか。
イギリスでは、スモークサーモンなど美味しいのもあるが、鱈の白身をぶつ切りにしたような味も素っ気もないような魚料理が主体のような経験が多いのだが、近所の商店街などには、肉屋はあっても、まず、魚屋などはない。
我々日本人は、ドックランドやドーバーまで買い出しに行ったり、特別なルートの商店から魚を買ったりして、魚の調達は大変であったし、それに、鱈はあっても、日本のようにきめの細かい魚類の調達など夢の夢であったように思う。
もう、随分以前の事になるので記憶は定かではないのだが、フランスは魚が豊富なようで、ドーバー海峡を隔てて対岸のカレー辺りからおくられて来るのであろうか、ドーバーでオマールエビを買って嬉しかったのを覚えている。
ヨーロッパで、魚料理を美味しいと思ったのは、フランスやイタリア、スペインやポルトガルと言ったラテンの国で、ドイツやオランダなどでは、ミシュランの星付きレストランくらいに行けばまずまずだが、それ以外では、意識して、魚料理を避けていた。
しかし、フルコースだと、肉のみならず、魚料理がつくので、何となく食べていたような気がする。
ヨーロッパで、いたく失望したのは、スエーデンなど北欧を旅行したときに観光地の漁港に行って、エビ・カニなどの新鮮な魚介類の料理をオーダーして喜んで食べようとしたら、塩辛すぎて、食べれたものではなく、這々の体で退散したことである。
さて、イギリスが目指したBrexitは、ひとえに、イギリスの主権を取り戻して、ブラッセルからのコントロールから解放されること。
ジョンソンが指摘したのは、「我々は、我らの法システムと命運のコントロールを取り戻し、我が海水域を完全にコントロールする独立した海洋国家になろう」と言うことで、とにかく、EUのくびきから解放された独立国家としてのステイタスの確保であった。
Brexit began as a project to assert British sovereignty and throw off the constraints of Brussels.
”We’ve taken back control of our laws and our destiny,” “For the first time since 1973," Mr. Johnson said, “we will be an independent coastal nation with full control of our own waters.”
ニューヨーク・タイムズの記事で、一寸、気になったのは、
今回の合意で、英国経済の80%を締めるロンドンの強力な金融セクターのようなサービス経済がカバーされていないことと、
The agreement does not cover services, such as London’s mighty finance sector, which account for about 80 percent of the British economy.
イギリスやヨーロッパの若者たちにとって打撃となるのは、エラスムス交換プログラムからの脱退で、1987年以降継続しているヨーロッパ全域ベースの20万人の学生の外国旅行、仕事体験、見習い研修などの機会が失われることである。
In a blow to young people in Britain and across Europe, Mr. Johnson said the country would no longer participate in the Erasmus exchange program, a Europe-wide program that has allowed about 200,000 students a year to travel abroad for study, work experience and apprenticeships since 1987.
ジョンソンは、主権を回復して、EUの経済的規則の締め付けから解放されて、英国経済を再活性化すると言うのだが、そんなに甘くもないし、英国にそれだけの能力があるようには思えない。
For Mr. Johnson and his band of Brexiteers, reasserting sovereignty, escaping Europe’s economic rule book and revitalizing Britain’s economy were the cardinal objectives.
一方、EUにとっては、単一市場を死守することは至上命題である。英国に勝手にやらせると言うことは、輸出に対してより緩やかなスタンダードを適用する競争者に、優先的なアクセス権を与えると言うリスクを冒すこととなった。
For the European Union, defending the integrity of its single market was paramount. Britain’s go-it-alone instincts meant that Brussels risked giving preferential access to its market to a competitor who applied less stringent standards to exports.
私が、ロンドン居た時に、ある高名な下院議員が、私に、「こんなに、気質も歴史も文化も違ったヨーロッパが、一つだと思えるか?」と言った。
逆に、知人のオックスブリッジ卒の両刀使いのアーキテクト・サー・フィリップは、「ダブリンからキエフまで、ヨーロッパは一つだ。」と言っていた。
私は、一つだとは思わないが、一つであって欲しいと思っている。
【ロンドン、ブリュッセル時事】欧州連合(EU)と1月末にEUを離脱した英国は24日、難航していた自由貿易協定(FTA)締結交渉で合意した。懸案として最後まで残っていた漁業権をめぐる溝が埋まった。英国がEUに事実上残留している「移行期間」の終了目前で、約9カ月半に及んだ難交渉が決着した。
FTAによって英EU間では今後も関税ゼロの貿易が維持される。英EU企業の公平な競争を維持する枠組みの導入でも一致。このほか、運輸やエネルギー、司法協力などでの取り決めも盛り込まれた。
合意したFTA案はEU加盟国が今後承認し、英議会での実施法案の可決などを経て、来月1日に暫定発効される見通し。欧州議会は来年の正式承認を予定している。
ジョンソン英首相は記者会見で「われわれの運命や法律の主権を取り戻した」と成果を強調。一方、フォンデアライエン欧州委員長は「長年の友人との新たな出発の確かな基盤だ。ついに英離脱問題から離れられる」と未来に目を向けた。
年明けに関税が復活することなどで大きな混乱が生じ、新型コロナウイルス禍に苦しむ英EU経済に二重の打撃を与える事態は回避される。2016年6月の英国民投票以来、欧州を揺るがせ続けてきた離脱問題の混迷にようやく終止符が打たれる。
焦点だった漁業権では、英海域でEU漁船の操業を認める5年半の移行期間を設置。この間に、EUの漁獲割り当ては現状から25%削減する。最近まで80%減を求めていた英国が大幅に譲歩した。また、企業の公平な競争を保つため、環境や労働などの規制で相手の水準が大きく逸脱した場合に報復関税を課せるようにする。
これで、十分に簡潔に事情を語っているので、蛇足は避けた。
さて、最後まで決着が難航した漁業問題だが、英国にとっては、6000隻の漁船と12000人の漁民による生産が、イギリスのGDPの0.5%以下にしか過ぎずハロッズ百貨店の売り上げにも達しないほどなのだが、英仏海峡両岸の漁業者にとっては、ハドックと鱈争奪戦に鎬を削っており漁業は死活問題であって、ジョンソンもマクロンも選挙では大課題となっていて、ほんの細やかな経済問題が政治を振り回しているケースである。
さて、今回は、8年間、オランダとイギリスに住んでいて、ささやかな魚をめぐる経験や思い出について、書いてみたい。
私が、オランダに住んでいたとき、小ぶりなのだが旨みが凝縮された美味しい小エビ「クルヴェット・グリーズ」が好物でよく食べていたのだが、イギリスとの捕獲争いが激しくなって高騰したことがあって、日本近海と同じで、沿岸国家同士の魚資源争奪戦を知ったことがある。
これとは別に、オランダ人のニシン好きは突出していて、ハーリング(haring)と称して、魚卵や白子がまだ発達していない若い脂が乗っている新鰊/新ニシンを、タマネギを塗して絡ませて、尾を指でつまんで持ち上げて、顔を仰向けにして丸ごと一匹を食べるスタイルが典型的で、ハーグやスヘフェニンゲン(我々日本人はスケベニンゲンと言う)周辺の海岸など屋台で見られる風景で興味深かった。
驚いたことに、オランダ最大の建設会社で、切った張った激しいネゴをして合意に至った遅い午後、社長が部下に指示してサーブされてきたのがこのハーリングで、
しかし、この時は、頭から飲み込むスタイルではなく、ピクルス付きで、ニシンを一口大に切って爪楊枝で刺して食べるスタイルだったが、お相伴したかどうか記憶にはない。
このニシン好きのオランダ人は、身を食べるだけで、カズノコは、肥料にするくらいで捨てていたのだが、日本人が住みついて関心を示し始めると、そこは、利に聡いダッチの本領発揮で、商売を始めた。
アムステルダムのオークラのレストランでも、カズノコは、それ程安くもなかったので、オランダ人は値をつり上げたのであろう。
さて、イギリスだが、フィッシュ・アンド・チップス( fish-and-chips)が有名で、タラなどの白身魚のフライに、棒状のポテトフライを添えたもので、謂わば、イギリスのファーストフードと言う位置づけか、簡易な国民食と言うことだが、マックみたいなものだと思ったので、私は、食べたことがない。
これなど、イギリスの料理・食事は不味い最悪だと言われる典型であろうか。
イギリスでは、スモークサーモンなど美味しいのもあるが、鱈の白身をぶつ切りにしたような味も素っ気もないような魚料理が主体のような経験が多いのだが、近所の商店街などには、肉屋はあっても、まず、魚屋などはない。
我々日本人は、ドックランドやドーバーまで買い出しに行ったり、特別なルートの商店から魚を買ったりして、魚の調達は大変であったし、それに、鱈はあっても、日本のようにきめの細かい魚類の調達など夢の夢であったように思う。
もう、随分以前の事になるので記憶は定かではないのだが、フランスは魚が豊富なようで、ドーバー海峡を隔てて対岸のカレー辺りからおくられて来るのであろうか、ドーバーでオマールエビを買って嬉しかったのを覚えている。
ヨーロッパで、魚料理を美味しいと思ったのは、フランスやイタリア、スペインやポルトガルと言ったラテンの国で、ドイツやオランダなどでは、ミシュランの星付きレストランくらいに行けばまずまずだが、それ以外では、意識して、魚料理を避けていた。
しかし、フルコースだと、肉のみならず、魚料理がつくので、何となく食べていたような気がする。
ヨーロッパで、いたく失望したのは、スエーデンなど北欧を旅行したときに観光地の漁港に行って、エビ・カニなどの新鮮な魚介類の料理をオーダーして喜んで食べようとしたら、塩辛すぎて、食べれたものではなく、這々の体で退散したことである。
さて、イギリスが目指したBrexitは、ひとえに、イギリスの主権を取り戻して、ブラッセルからのコントロールから解放されること。
ジョンソンが指摘したのは、「我々は、我らの法システムと命運のコントロールを取り戻し、我が海水域を完全にコントロールする独立した海洋国家になろう」と言うことで、とにかく、EUのくびきから解放された独立国家としてのステイタスの確保であった。
Brexit began as a project to assert British sovereignty and throw off the constraints of Brussels.
”We’ve taken back control of our laws and our destiny,” “For the first time since 1973," Mr. Johnson said, “we will be an independent coastal nation with full control of our own waters.”
ニューヨーク・タイムズの記事で、一寸、気になったのは、
今回の合意で、英国経済の80%を締めるロンドンの強力な金融セクターのようなサービス経済がカバーされていないことと、
The agreement does not cover services, such as London’s mighty finance sector, which account for about 80 percent of the British economy.
イギリスやヨーロッパの若者たちにとって打撃となるのは、エラスムス交換プログラムからの脱退で、1987年以降継続しているヨーロッパ全域ベースの20万人の学生の外国旅行、仕事体験、見習い研修などの機会が失われることである。
In a blow to young people in Britain and across Europe, Mr. Johnson said the country would no longer participate in the Erasmus exchange program, a Europe-wide program that has allowed about 200,000 students a year to travel abroad for study, work experience and apprenticeships since 1987.
ジョンソンは、主権を回復して、EUの経済的規則の締め付けから解放されて、英国経済を再活性化すると言うのだが、そんなに甘くもないし、英国にそれだけの能力があるようには思えない。
For Mr. Johnson and his band of Brexiteers, reasserting sovereignty, escaping Europe’s economic rule book and revitalizing Britain’s economy were the cardinal objectives.
一方、EUにとっては、単一市場を死守することは至上命題である。英国に勝手にやらせると言うことは、輸出に対してより緩やかなスタンダードを適用する競争者に、優先的なアクセス権を与えると言うリスクを冒すこととなった。
For the European Union, defending the integrity of its single market was paramount. Britain’s go-it-alone instincts meant that Brussels risked giving preferential access to its market to a competitor who applied less stringent standards to exports.
私が、ロンドン居た時に、ある高名な下院議員が、私に、「こんなに、気質も歴史も文化も違ったヨーロッパが、一つだと思えるか?」と言った。
逆に、知人のオックスブリッジ卒の両刀使いのアーキテクト・サー・フィリップは、「ダブリンからキエフまで、ヨーロッパは一つだ。」と言っていた。
私は、一つだとは思わないが、一つであって欲しいと思っている。