熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

文化三昧ミラノ・ロンドン旅・・・19 シャーロック・ホームズ・パブ、パブ文化はイギリスそのもの

2005年08月04日 | 欧州紀行(文化三昧ミラノ・ロンドン旅)
   私は、晩酌はやらないし、常時酒を飲みたいとは思わないので、所謂酒飲みではない。
   しかし、会食時には、欧米人に伍して応分の酒類は頂くし、ワイン文化の豊かさとその楽しみを長い欧米生活でそれなりに学べたと思っている。
   ワインは、欧米人にとっては、酒ではない、「飲む食べ物」であって、料理との相性が良ければ、料理もワインも限りなく美味しくなり至福の時間を過ごせる。

   ベルギーの片田舎、しかし、ミッシェランの星つきの古城ホテルのレストランで、料理毎にワインを変えるフル・コースの食事を楽しんだことがある。
食前酒を頂き、最後のコーヒーまで、6時間近くかかったが、これが、何千年も大切に培ってきたヨーロッパの文化だと思った。
   ミッシュランの星を求めて、ヨーロッパの有名レストランを行脚して、美味しいワインとの出会いを楽しんだ頃が懐かしいが、決して、ロマネコンテが最高ではなくて、その土地の料理には、いくら安くてもその土地のワインが一番美味しいことを発見したのもあの頃であった。
特に、イタリアやスペインなど、料理も素晴らしいし、地ワインが、また、堪らなく美味くて、素晴らしい時間を過ごせる幸せに遭遇することがある。
   その後、日本に帰ってからは、地方に行けば、その地方の地酒を頂きながら、地方料理を楽しむことにしている。
   バッカスの時代から、酒は文化そのもの、人生を豊かにしてくれる吾らの友である。

   ところで、イギリスの華・パブであるが、私の旅とパブの関係は極めて密接で、特に求めてレストランに行くことがなければ、最近の様に気侭な旅だと食事時と余暇の大半はパブで過ごしていることになる。
   まともに食事を取ろうとすると、正式なレストランで、あまり美味しいとは言えない料理に、時間とカネを費やすだけとなり、とにかく、無駄。かと言って、ファーストフッドや日本料理店も味気ないので、気楽気ままに、何時でも食事が出来ビール等を飲んで憩えるパブが、私には恰好の休憩所なのである。
   イギリスに居た頃も、昼には、事務所に近いパブに出かけて、何かメインの一皿とビターを1パインで昼食を終えることが多かった。最も、その後、その日は外出や商談のない時である。
   イギリス人は、何故か、何も食べずに、ビールだけの昼食をとっている。

   パブであるが、正式には、Public House で、クラブ制度の発達したイギリスで、一般市民に開放されたダイニング兼居酒屋である。
   ドイツに行くと、街の中心にあるラート・ハウス(市庁舎)の地下が、大きな市民のための、ビールやワインレストランになっていて、市民が集って憩い楽しんでいるが、あの小型版であろうか。
   しかし、ソーホーのパブに、子供連れが入ろうとしたら、主人が断っていた。もっとも、随分前だが、子供が小さかった頃、ロンドン郊外のパブで、食事を取ったことがあるのだが。

   古いパブには、入り口が2つある。階級制度の名残とかで、昔は、中産階級のサロンと労働者階級のパブリックバーとに区別されていて、真ん中のカウンターは共通だが、入り口と部屋が分離されていた。
   もう、20年以上前になるが、日産のイギリス工場のプロジェクトで出かけた時、米国初代大統領ワシントンの故郷ワシントンの片田舎で、完全に2つに分離された歴史の名残を止めたパブに行ったことがある。
   仕切りなどは取り外され行き来自由になっていたが、イギリスの歴史を見た思いがしたので良く覚えている。
   客が場違いな場所に入ったら、主人はどうするのだジムに聞いたら、「あちらの方が、貴方には、もっと気楽に楽しんでもらえると思うのですが。」と言うのだと言った。

   私は、今回もそうだが、コベントガーデンやストランドなどで、観劇を楽しんだ後、独りの時は、良く、チェアリングクロス駅の近くにあるシャーロック・ホームズ・パブに行く。
   シャーロック・ホームズなど実在しないが、熱烈なファンが作ったパブで、シャーロック・ホームズ縁と思しきグッズが壁面に所狭しと飾られており、2階には、「シャロック・ホームズの部屋」まである懲りよう。別に、料理が美味い訳でもなく、特色がある訳でもないが、イギリスそのものなので弊店間際に小休止の為に出かける。

   田舎だけでなく、ロンドンのストランドやソーホー辺りのパブでも、暇な時などパブの主人やカンバン娘と話していると実に楽しい。
   今回も、あっちこっち、10以上のパブに出かけたが、夫々、特色があって実に楽しい。
   カンタベリーのトマス・ベケット・パブでは、バーカウンターの女主人が実にチャーミングで優しく、それに、主人の気の利いたサービスなど印象的だったが、豊かなイギリスの文化に触れる憩いの時間が旅の疲れを癒してくれる。

   ところで、余談だが、パブは、存続を旨としており、余程のことがない限り潰せない。
   あのロンドンのシティの開発で、どんなに素晴らしい近代ビルに再開発しようとも、元あったパブは、必ず地下か一階に収容する必要があり、ペパーコーンレイト(殆ど名目程度の安い家賃)で貸すこととされている。
   住宅の場合も、家賃は兎も角、消滅させることは罷りならない、これがイギリスの文化であり知性でもある。
   

   
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