若手教師が新学習指導要領を読み解くひとつの方法

平成23年度がスタートしています。子どもたちはまだ学校には来ていませんが、順調に今年度のスタートを切っていくために、学校の教職員は準備を進めている春です。

春といえば人事の季節でもあります。すでに東京新聞紙上で発表になりましたが、私の勤務校でも他校に異動をしたり、ご退職をされた先生方がいますし、反対に他校から異動をしてきた先生や、新規採用で初めて小学校の教壇に立つ方もいます。

私はそのうちのお一人の指導教官となりました。さっそく「打ち合わせ」と称するお買い物のために、いっしょに神田の三省堂書店に足を運びました。「どれだけの授業知識を持っているかが教師の大事な力だよ」とアドバイスしながら、授業の参考書を購入。今の季節、教育書も売れ時なので、本の題名を見ているだけで時代の潮流が分かります。新学習指導要領に示された「思考力」について書かれた本が多かったという印象を持ちました。


さて、せっかく時間を取って三省堂まで出向いた「初任者研修」ですから、そのままあっさりと帰るのではなく、2時間ほど食事をしながら懇談。「良い授業をしたい。指導を受けることに飢えているんです!」と言った新人さんの言葉に応えるために、それはそれはいろいろな話をしました。

対話というのは、いつの時代でも言葉にできなかった「内なる精神」を「言葉」という形にして表出してくれるものですね。私の中に眠っていた教育思想を新人さんが引き出してくれました。語っている私自身が(ああ!自分の考えが整理できた!)と驚くほどに。そのひとつだけ書き残しておきます。


「学習指導要領」に書かれている内容を読解するための方法です。

すべての文言の裏(行間)に「教育の目的は児童の幸せ」という言葉を置いて読んでみてください。ここでは「総則」の文章を読解してみます。


(第1)教育課程編成の一般方針を読解する


(1)各学校においては,教育基本法及び学校教育法その他の法令並びにこの章以下に示すところに従い,児童の人間として調和のとれた育成を目指し,地域や学校の実態及び児童の心身の発達の段階や特性を十分考慮して,適切な教育課程を編成するものとし,これらに掲げる目標を達成するよう教育を行うものとする。
 学校の教育活動を進めるに当たっては,各学校において,児童に生きる力をはぐくむことを目指し,創意工夫を生かした特色ある教育活動を展開する中で,基礎的・基本的な知識及び技能を確実に習得させ,これらを活用して課題を解決するために必要な思考力,判断力,表現力その他の能力をはぐくむとともに,主体的に学習に取り組む態度を養い,個性を生かす教育の充実に努めなければならない。その際,児童の発達の段階を考慮して,児童の言語活動を充実するとともに,家庭との連携を図りながら,児童の学習習慣が確立するよう配慮しなければならない。


「児童の人間として調和のとれた育成」をするのは何のためですか?⇒児童の幸せのためです。


「生きる力」はなぜ育まなくてはならないのですか?⇒児童の幸せのためです。


「基礎的・基本的な知識及び技能を確実に習得させ,これらを活用して課題を解決するために必要な思考力,判断力,表現力その他の能力をはぐくむ」のは何のためですか?⇒児童の幸せのためです。


「主体的に学習に取り組む態度を養い,個性を生かす教育の充実に努めなければならない。」のはなぜですか?⇒児童の幸せのためです。「児童の学習習慣が確立するよう配慮しなければならない。」のはなぜですか?⇒生涯にわたる児童の幸せのためです。生涯向上していくことに価値観を見いだせる人間を育てるためです。



(2)学校における道徳教育は,道徳の時間を要として学校の教育活動全体を通じて行うものであり,道徳の時間はもとより,各教科,外国語活動,総合的な学習の時間及び特別活動のそれぞれの特質に応じて,児童の発達の段階を考慮して,適切な指導を行わなければならない。
 道徳教育は,教育基本法及び学校教育法に定められた教育の根本精神に基づき,人間尊重の精神と生命に対する畏(い)敬の念を家庭,学校,その他社会における具体的な生活の中に生かし,豊かな心をもち,伝統と文化を尊重し,それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛し,個性豊かな文化の創造を図るとともに,公共の精神を尊び,民主的な社会及び国家の発展に努め,他国を尊重し,国際社会の平和と発展や環境の保全に貢献し未来を拓(ひら)く主体性のある日本人を育成するため,その基盤としての道徳性を養うことを目標とする。
 道徳教育を進めるに当たっては,教師と児童及び児童相互の人間関係を深めるとともに,児童が自己の生き方についての考えを深め,家庭や地域社会との連携を図りながら,集団宿泊活動やボランティア活動,自然体験活動などの豊かな体験を通して児童の内面に根ざした道徳性の育成が図られるよう配慮しなければならない。その際,特に児童が基本的な生活習慣,社会生活上のきまりを身に付け,善悪を判断し,人間としてしてはならないことをしないようにすることなどに配慮しなければならない。

「人間尊重の精神と生命に対する畏(い)敬の念を家庭,学校,その他社会における具体的な生活の中に生かし」ということはなぜ必要なのか?⇒児童の幸せを他者の幸せも含めて実現していくためである。

「豊かな心をもち,伝統と文化を尊重し,それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛し,個性豊かな文化の創造を図る」のは何のため?⇒児童の幸せを社会の幸せの上に成立させるためである。

「公共の精神を尊び,民主的な社会及び国家の発展に努め,他国を尊重し,国際社会の平和と発展や環境の保全に貢献し未来を拓(ひら)く主体性のある日本人を育成するため,その基盤としての道徳性を養うことを目標とする。」のは何のため?⇒自分だけでなく地球上の人類すべてを幸せにすることによって、個人の幸せも実現することができるという考え方になる。

「児童が基本的な生活習慣,社会生活上のきまりを身に付け,善悪を判断し,人間としてしてはならないことをしないようにすることなどに配慮しなければならない。」のはなぜか?⇒他人を不幸にして自分の幸福を実現することなどありえないからだ。


(3)学校における体育・健康に関する指導は,児童の発達の段階を考慮して,学校の教育活動全体を通じて適切に行うものとする。特に,学校における食育の推進並びに体力の向上に関する指導,安全に関する指導及び心身の健康の保持増進に関する指導については,体育科の時間はもとより,家庭科,特別活動などにおいてもそれぞれの特質に応じて適切に行うよう努めることとする。また,それらの指導を通して,家庭や地域社会との連携を図りながら,日常生活において適切な体育・健康に関する活動の実践を促し,生涯を通じて健康・安全で活力ある生活を送るための基礎が培われるよう配慮しなければならない。

「日常生活において適切な体育・健康に関する活動の実践を促し,生涯を通じて健康・安全で活力ある生活を送るための基礎が培われるよう配慮しなければならない。」のはなぜなのか?⇒児童の幸せのためです。



少々安易な読解ではありますが、この「児童の幸せ」というキーワードに乗せて文章を読解していくことによって、教師の実感の度合いが高まるのではないかと私は思っています。

要するに、次のような言葉が「学習指導要領」を読解し、実践していくためのバックボーンになるのではないかと思うのです。

「教育の目的は児童をして一生涯に亘る幸福をつかませることである。」

「幸福とは個人的幸福だけでなく、社会的幸福をも実現してこそ成り立つものである。」


ここまで読んで下さった皆様、もしこの考え方に賛同していただけるならば、「児童の幸せ」というキーワードを使いながら、もう一度「学習指導要領」をすみずみまで読み直して下さい。きっと腑に落ちる文言があるのではないかと期待しています。


読んでいただきありがとうございます。
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