
今回の北鉄石川線再訪はもちろん、東急7000系や京王3000系の活躍を見てみたいという目的もあったのですが、それ以上に重きを置いていたのは……今秋の廃止が決まった鶴来~加賀一の宮間の積雪期お名残乗車でありました。
かつて、北鉄石川線が「石川総線」だった頃に初めて訪れた際、加賀一の宮は正式には終着駅ではなく、ここからさらに白山下に至る「金名線」が存在していました。しかし、その実態はといえば……ネーミング通りに白山をトンネルで貫いて金沢と名古屋を結ぶという理想とはほど遠く、白山山麓を切り刻む手取川の峡谷を走る乗客僅少路線に過ぎませんでした。しかも1984年、手取川橋梁の土台を支える岩盤が崩壊の危機にあることが発覚したことで、朝夕のみの運行すら全面的に運休となってバス代行……。このため、中学校を卒業した1986年春 (年齢バレバレ ^^;) に初めて石川総線を訪れた私は「あと数年早く生まれていれば!」と思いつつ (中学時代のごく僅かな小遣いでは北陸ワイド周遊券を買うことが出来ず、18きっぷで乗れる夜行鈍行が存在しなかった北陸は遠い世界……。高校合格祝いでようやく念願の一眼レフと周遊券旅行を手にしたものです -_-;)、まだ雪がたんまりと残る加賀一の宮駅に降り立ったのでした。この時点での加賀一の宮駅は、一応まだ中間駅だったため交換設備を持ち、2番線まであったのですが、金名線の運休に伴い2番線には雪がうずたかく積もったままで、さらに南へと延びる線路や架線も、来るはずのない列車を待ちわびる寂しげな情景を繰り広げていたものです……。
そんな加賀一の宮駅、1987年の金名線正式廃止後は棒線1本の線路配置となって今日に至っているわけですが、再訪にあたっては、もし初めて降り立ったときと同じような雪景色の情景であれば、当時をしのべて最高だなぁ……と思っておりましたので、雪がとにかく少なかった今冬にあって、↑このような究極の侘び寂びと言っても良い情景が展開していたことに、ただただ感激しました……(*^^*)。

20年以上前と比べてほとんど変わり映えのない古びた駅 (変わったといえば駅名板ぐらいなものか……) でしばし激写したあとは、少々歩いて手取川の畔へ。堰堤から用水路が分けられ、道路と線路を挟んだ両側から怒濤のような水音が聞こえる……あたりが、石川線唯一 (?)・山深い雰囲気での撮影スポット! 訪れた日は、地元ファンの方にとっても待ちに待った積雪だったということで、加賀一の宮行き列車は数名の撮り鉄が撮影していましたが、折り返しの野町行きを撮影していたのはコンデジを持った地元ナンバーの方と私だけ。水音を除いて一切が静まりかえった中、一瞬タイフォンが響き渡り、カーブを縫って7000系が発車……。思うに、全国各地で展開されている東急7000系シーンの中でも、圧倒的に深閑とした雰囲気であることは間違いないでしょう……(十和田もそうだ、と言えるかも知れませんが、彼の地は起伏が緩い台地ですので、狭まった奥深さというのとは少々違うような気も ^^;)。
こんな感じで、雪の加賀一の宮再訪にしみじみと満足した後は、折角なので次の電車を待つ傍ら、駅名の由来である白山比[くちへん+羊]神社を参拝してみようかと思ったのですが、時間の関係上なるべく早く鶴来まで戻って車庫に浸っていたい (笑) というわけで……鶴来まで歩いてみることに決定。ホントは並行するバス (金名線の代替) に乗ることが出来ればベストなのですが、日中は惨憺たる本数につき、歩くしかないという……。しかし、心配する必要は全くありませんでした。もともと石川線の線路は、鶴来の市街地を大きく迂回して走っているため、鶴来と加賀一の宮の直線距離は大したことはなく、早足で15分程度、旧家が立ち並ぶ味わい深い街並みをのんびり眺めながら歩いても25分程度しかかかりません。そして、鶴来の旧市街の南の果てのさらに奥に加賀一の宮駅があるのだ……ということも良く分かった次第。
逆に考えてみると、中鶴来駅や加賀一の宮駅を鶴来市街の中ではなく周辺に立地せざるを得なかったことが、この区間での集客に大きく響き、地元民にとってもあってもなくても余り変わらず、ついに命取り・廃止決定……となったのだろうと思われます。とりあえず、神社への参拝や中鶴来駅前にある病院への通院には多少の不便をきたすでしょうが、代わりに鶴来駅前から小型のコミュニティバスを走らせれば十分間に合う程度でしょう。正月の参拝客輸送も、それこそ鶴来駅からバスでのピストン輸送や徒歩で十分という感じ……。むしろ、20年以上前の時点でも鶴来~加賀一の宮間は日中空気輸送だったことを思い出せば、よくぞ今まで残っていたものだ……というのが正直なところです。
というわけで、現実的な算盤勘定に徹すれば「廃止やむなし」と思うのですが、これでまたひとつ、鉄道シーンにおける侘び寂び的情景が失われてしまうのは残念なことであります……。