ジャカルタの電車運行を管轄するKCJ (ジャボデタベック通勤電鉄) の公式HPによりますと、去る19日から来月末まで約40日の予定でボゴール線の電力設備のリハビリテーションが実施されています。具体的には、デポック~ボゴール間を中心に一部の列車を間引き、電力設備への負荷を下げて少しずつ機器を更新して行く作業を行うのでしょうが、ラッシュアワーのボゴール発ジャカルタ・コタ行も数本間引かれていることから、こりゃぁ~ただでさえ発生しがちな冷房車のドア開放&鈴なり状態が激化するだけでなく、クーラーがひしめく屋根上にも黒山の人だかりとなりそうな……(-_-;)。KCJはこの夏以降も怒濤の勢いでメトロ05・6000系、そしてJRE203系を購入し、逐次現地化整備を進めているようですが、これら一気に揃った編成をデビューさせるならば当然輸送力増強ダイヤ改正が行われるわけで、その前提として逼迫気味な変電設備の飛躍的なパワーアップ(そして政府による優先的な電力融通)が必要なことは論を俟たないでしょう。したがって、このリハビリ計画と一時的な混雑の激化は、まさにジャカルタの電車シーンが新たな段階へ進むための産みの苦しみなのかも知れません。
しかし……そんなボゴール線を、電力と関係なくスタコラと駆け抜けているのが、ボゴール~スカブミ間のローカル列車用として活躍するDC「ブミグリス」。タナ・アバン機関区での検査の都合で、月・水・土(土曜は確実に。水曜に走っているシーンは今回初めて目撃しました)に限ってボゴール以北の電化区間に乗り入れ、タナ・アバンまでやって来ます。
このDC、現在では2扉化されているものもありますが、元はといえば1980年代前半にキハ40系列の3扉インドネシア版として日本にて製造されたという経緯があり、かねてから是非乗ってみたいと思っておりました。しかし、ボゴール~スカブミ間は早朝・夜間しか運行されず (スカブミで要宿泊)、地方で活躍する車両を訪ねようにも時間がかかります。というわけで、ボゴール~タナ・アバン間の曜日限定乗り入れ運用は、最も手軽にこのDCに乗るチャンス。今回の訪問は約1週間にわたり鉄活動の時間を確保していましたので、確実にこの乗り入れ運用が走る土曜の午後~夕方のひとときを乗車体験に充て、東急8500系やJR103系とは一味も二味も異なるボゴールへの山登り爆走を満喫しようと思ったのでした。
しかし……滞在中の土曜の朝にうっかり骨折してしまった私(打撲と思い込んでいたのですが。汗)。膝を曲げると激痛が走ることから、泊まっていたジャヤカルタ駅近くの宿から始発のタナ・アバン駅までタクシーに長時間乗るわけにも行かず……。そこで、中央線高架駅の撮り鉄スポットで午後のド順光を浴びるジャカルタ・コタ行電車を撮影したのちマンガライまで行き、マンガライで切符を買い直して「ブミグリス」に乗ろうとしたのでした。
ところがこの選択は、結論から申しますと大失敗 (号泣)。朝方マンガライにて撮影をしていると姿を現す「ブミグリス」は、必ずと言って良いほどマンガライに停車するのですが、これは単に信号待ちの運転停車に過ぎず、正式にはマンガライ通過扱いであることを全く知らなかったのです……。そもそも「ブミグリス」のタナ・アバン延長運転は毎日の話ではなく、あくまでボゴール~スカブミ間の利用者と鉄道関係者のみが知っていれば良い話ですので、駅掲出の時刻表には載っておらず……。そこで、何も知らない私はマンガライ駅の窓口にて「ブミグリス、ボゴール、サトゥ (1枚)」とごくフツーに切符を購入しようとしたのですが、「ブミグリス? ボゴールに行くならコミューターACの切符をどうぞ」ということで、出て来たのは冷房電車の切符。「うーむ、車内が転クロでデラックスなブミグリスは、冷房無しといえどもビズニス (2等) ゆえ、冷房電車と同運賃なのだろうか」と思い、取り敢えずは目の前で折り返して行くデポック行きの8618Fにも乗らずに (マンガライ始発につき余裕で座れたのですが・・・)、じっと足の痛みと強烈な日射しをこらえつつ「ブミグリス」の到着を待ち続けたのでした。
そして15時40分頃、必死の思いをしながらもDCの雄叫びを楽しみたい一心でやって来た私の期待が木っ端微塵に打ち砕かれる無情のアナウンスが……「ジャルール ウムヌ! クレタアピ ランスン! アワース、アワース!」 (6番線、通過列車、注意注意!) とう大音量のアナウンスの直後、タナ・アバン方向から猛スピードで突っ込んで来た「ブミグリス」が、凄まじい土埃とゴミを巻き上げながら通過して行ったという……。
複雑怪奇な大ジャンクションであるマンガライにて、一切の妥協なく高速で通過する列車を目撃したのは初めてですが、それがまさか、自分が乗りたいと思い待ち構えていた列車だとは……(T_T)。乗車率も意外や意外、タナ・アバンを15時30分過ぎに発車するという中途半端さのためもあるかも知れませんが、1両にせいぜい数人という超極楽ぶりでしたので、マンガライ駅にて先刻のデポック行8618Fに乗らずボゴール行を待っていた人々の間からも「通過かよ・・・」という怨嗟の声が上がっていました (汗)。全てを打ち砕かれた私には、足を怪我しているのに今さらメチャ混みが予想される後続のボゴール行き冷房車に乗って夕涼みに行く気力など残されておらず、改めてジャカルタ・コタへの切符を買い直して宿に戻ったことは言うまでもありません・・・。
というわけで、次回訪問以降に要リベンジ (滝汗)。とにかくエンジン全開の走りは「凄い」の一言に尽きますので(マンガライの他、パンチャシラ大でもスカブミ行の超!カッ飛んだ上り勾配爆走を目にしました)、一乗の価値があると断言出来ます。ジャカルタ市内から「ブミグリス」に乗るのであれば、とにかく運転日を確認のうえタナ・アバンから乗るに限りますので、ご参考を……。