地味鉄庵

鉄道趣味の果てしなく深い森の中にひっそりと (?) 佇む庵のようなブログです。

新ヤンゴン熱鉄記 (20) 環状線一部特別車編成1

2014-10-08 00:00:00 | ミャンマーの鉄道


 ヤンゴン環状線に投入されたロングシートの新型特別車は、素朴な感覚から言っても結構ありがた迷惑な存在であり、逆に「もしこれが純粋に一般客車として投入されたのであればそれなりに歓迎されただろうに」と思います。硬い椅子で非冷房であるという点は全く変わらないのに、全車特別車の場合運賃が6倍とは……(というわけで去る8月に冷房DC化)。この点、日本の戦後ある時期までの国鉄大都市通勤電車の2等車は、同じロングシート非冷房ながらも大型でクッションが詰まった椅子であった分だけ良心的であったのでしょう。まぁ本質的には、異なる社会階層を分けて乗せるためのものであり、ヤンゴン環状線のロングシート特別車もそれと似たようなものであると解釈することも出来なくもありませんが、ラッシュ時など輸送力が逼迫しているときには正直ビミョーです (汗)。いっぽう、昭和50年代前後に首都圏に住んでいたヲタの皆様であれば、先頭車しか冷房がない京浜東北線や「偽クーラー」の東急8000系など悲喜こもごもの記憶をお持ちでしょうが、これは運賃が同じですので文句は言えません (笑)。



 しかし、ヤンゴン環状線の特別車として、本線の急行用客車と全く同じスペックのボックスシート客車が連結されていれば、この手の煩悶とは一切無縁!! ホームに入線してきた列車にボックスシート特別車が連結されているのを確認するや否や、小走りで停車位置に向かいデッキに群がる人々が結構いますし、実際に乗ってみますと車内で特別車料金を追加で払っている客が多数います (一般客車は往復100K、一般客車と混結の特別客車は片道200K)。要するに、多くの利用客が「ボックスシートの急行客車には従来の4倍払ってもそれだけの価値がある」と見なしていることを意味しているわけです。そして、駅で切符を買う時点では通常の切符のみ購入し、乗った後で追加払いすれば良いと割り切っているのでしょう (笑)。そして実際車内を見回してみますと、明らかに小綺麗な人々だけが特別車に乗っており、山のような商品を抱えた行商人や、車内で雑貨やトウモロコシの類の軽食を売る人々、そして低所得層と思われる人々とのあいだに棲み分けが出来上がっています。
 うーむ、まさに数年前のジャカルタの電車シーンと同じ現象……。ただ、ジャカルタの場合は完全に列車ごと客層を分離させ、ヤンゴンの場合は日本のグリーン車と同じく二等級制にしてフリークエンシーそのものは確保するということなのでしょう。
 なお、このボックスシート特別車も、一応新造直後からヤンゴン環状線に投入されているようで、車内が非常にキレイであることに加え、最初から車端部のトイレや流し台がありません。いずれロングシート・ボックスシート双方の新造車が増えれば、大幅な編成替えが行われ、ロングシート車は一般車に格下げ、ボックスシート車は特別車のまま、ということにもなるのかも知れませんが、あくまで個人的な予想です。実際にどうなるかはさっぱり分かりません、はい (^^;)。
 ちなみに今年3月の時点では、外国人は環状線内均一1USドルという運賃でしたので、特別車に乗って検札氏に特別車チケットの提示を求められても、その1ドル切符を見せさえすれば何も文句は言われませんでした。しかし現在では外国人もチャット払いで切符購入が可能になりましたので、ここらへんの制度運用はどうなっているのか、個人的には未確認です。スミマセン。ともあれ、ヤンゴンを訪れた外国人観光客の間で、環状線一周乗車は定番観光スポットの一つとなっていますので、そんな観光客への対応としても特別車が導入されたのかも知れません。