小金沢ライブラリー

ミステリ感想以外はサイトへ移行しました

ミステリ感想-『女王様と私』歌野晶午

2006年01月09日 | ミステリ感想
~あらすじ~
冴えないオタク真藤数馬は無職で独身。
でも「引きこもり」じゃない。毎日コンビニに行くし、週1でビデオ屋、月1で秋葉原にも出かける。
今日もかわいい妹と楽しいデートの予定だった。あの「女王様」に出逢うまでは……。


~感想~
中盤のどんでん返しには「これは『世界の終わり、あるいは始まり』のリベンジだ!」と快哉を上げたものの、どんどん尻すぼみ。
K点を大きく越える大ジャンプと見せて、ありがちな地点に着地してしまった。
ここから盛り上がるぞと見せかけて、一気にしぼむしぼむ。
そこら中で言われているが、このトリックはミステリマニアならば容易に気づく。
傑作になるか否かはそれ以降の展開にかかっていたのだが、どうにも想定の範囲内。
動機も真相も結末にも、衝撃を受けるまでには至らず。
作者としては、このトリック一本に勝負を賭けたわけではなく、全体の丁寧な構成が肝なのだろうが……。
『葉桜の季節に君を想うということ』を放ってしまった氏は、そう簡単には及第点をもらえない。
それが不幸なのか、それとも作家冥利に尽きるのか。読者としてはただ、次なる傑作を切望するのみ。
どうでもいいが、多くの読者が指摘する妹の口調に、別段の違和感を覚えなかった僕は、もうネット中毒だろうか。

06.01.07
評価:★★☆ 5
コメント