~あらすじ~
恋をした相手は人形だった。
だが、人形はエキセントリックな天才作家自らの手で破壊されてしまう。修復を進める僕の目の前に、人形に生き写しの女優が現れた。恋した人形と女優が競演を果たすとき、僕らを待ち受ける運命とは?
~感想~
著者初の長編ミステリー。……って『いちばん初めにあった海』は?
あらすじからして、文学に傾いた作品かと思いきや、意外も意外。「加納朋子がこんなトリックを?」と驚かせ、そういえば鮎川哲也賞作家だったことを思いださせてくれる。
ややネタバレになるが際だって異色なのは、物語の2/3ほどのところで全ての仕掛けが出そろってしまうのだ。普通のミステリならばそこで終わるのだが、今作は(大げさに言えば)そこからが物語の始まり。
謎が明かされ事件が解け、ではその後は? と登場人物や物語をほっぽりだしてしまうミステリも多いなか(もちろんトリックやプロットによれば、物語を最後まで描かずに、最大の効果が上げられる場面で終えるのも、正しい手段である)、後日談というか物語の後始末をきちんと終えているのは珍しい。
さらにそれによって、バッドエンドに沈んだかと思われた物語を、ハッピーエンドに転換させてみたのが面白い。
劇に例えるならば、幕を閉じ暗転した舞台に再びスポットライトが差し、第二幕が始まるような。
暖かな優しい物語ばかりではない、氏の新境地を開拓する印象深い秀作でした。
06.8.19
評価:★★★★ 8
恋をした相手は人形だった。
だが、人形はエキセントリックな天才作家自らの手で破壊されてしまう。修復を進める僕の目の前に、人形に生き写しの女優が現れた。恋した人形と女優が競演を果たすとき、僕らを待ち受ける運命とは?
~感想~
著者初の長編ミステリー。……って『いちばん初めにあった海』は?
あらすじからして、文学に傾いた作品かと思いきや、意外も意外。「加納朋子がこんなトリックを?」と驚かせ、そういえば鮎川哲也賞作家だったことを思いださせてくれる。
ややネタバレになるが際だって異色なのは、物語の2/3ほどのところで全ての仕掛けが出そろってしまうのだ。普通のミステリならばそこで終わるのだが、今作は(大げさに言えば)そこからが物語の始まり。
謎が明かされ事件が解け、ではその後は? と登場人物や物語をほっぽりだしてしまうミステリも多いなか(もちろんトリックやプロットによれば、物語を最後まで描かずに、最大の効果が上げられる場面で終えるのも、正しい手段である)、後日談というか物語の後始末をきちんと終えているのは珍しい。
さらにそれによって、バッドエンドに沈んだかと思われた物語を、ハッピーエンドに転換させてみたのが面白い。
劇に例えるならば、幕を閉じ暗転した舞台に再びスポットライトが差し、第二幕が始まるような。
暖かな優しい物語ばかりではない、氏の新境地を開拓する印象深い秀作でした。
06.8.19
評価:★★★★ 8