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ミステリ感想-『最後から二番目の真実』氷川透

2007年01月10日 | ミステリ感想
~あらすじ~
女子大のゼミ室から学生が消え、代わりに警備員の死体が現れた。しかも当の女子大生は屋上から逆さ吊りに。
居合わせた氷川透はじめ目撃者は多数。建物の出入り口はビデオで見張られ、全てのドアの開閉は記録されていた。万全の管理体制を、犯人と被害者はいかにかいくぐったか? 奇抜な女子大生と氷川が推理合戦でしのぎを削る。


~感想~
文章はどうしようもなく下手だ。心理描写や心理の変遷はまるで人間になってない。あまりにご都合主義で、不自然とか人間が描けてない以前に、ありえない心理である。
だが、それが腹が立つかというと逆になんだか微笑ましくなってくる。回りくどく書いてるのか、軽妙に書いてるつもりなのか、単に下手なのか解らないが、なぜか癖になりそうな文体なのだ。
「ナンセンスな表現や心理だらけ」と糾弾したとき、ナンセンスという言葉自体が既にナンセンスという自家撞着にして自家中毒な様相をていしており、つまりはこんな感じの文体である。しかも数ページごとに無駄に視点が切り替わるので、非常に読む人を選ぶかもしれない。
文章のおよそ半分は脱線か余談で、それらを省くと1/3の分量に収まるだろう。ではそれが主眼かというと、用意された謎は完全無欠の不可能状況におかれているし、ぶっ壊れた人物造型のワトスン(?)役は、それはそれで魅力的だし、意味深なタイトルの意味など見どころは多い。
ただし解決にはがっかり。伏線があまりにも解りやすい。なんせ(以下ネタバレ→)いままでずっとワンパターンの文体で「氷川は○○した」「氷川は言った」「氷川は○○と思った」と名前+動詞の文体だったのが、犯人が別人に化けている場面では「男は○○した」「相手は言った」と、明らかに名詞を避けており、犯人の変装であることが一目瞭然である。
ガチガチの論理。妙な文体。ありえない人物造型。合う人は合うがダメな人はとことんダメだろう、クサヤみたいなミステリです。
……それにしても、なんでこれを書ける人が『見えない人影』なんて書いちまうんだろう?


07.1.10
評価:★★ 4
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