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ミステリ感想-『i 鏡に消えた殺人者』今邑彩

2007年01月05日 | ミステリ感想
~あらすじ~
刺殺された女流作家が死の直前に書いた自伝的小説は、かつて自分が殺した従妹が、鏡に宿り復讐するという内容だった。
そして刺殺現場に残された犯人の足跡は、部屋の隅にある鏡の前で忽然と途絶えていた。


~感想~
よくまとまった、それだけに小粒な印象を受けてしまう作品。
作者が「実質的なデビュー作」と位置づけるだけに、謎・背景・トリック・真相・逆転と非常に手堅いまとまりを見せてくれる。
が、その全てがどうも予測の範疇に留まってしまった。本格ミステリとしては完璧に近い構成である。謎はトリックと溶け合い、奇想はプロットと違和感なく混ざり、終局には一ひねりも加えてくれる。しかし傑作や心に残る作品となるには及ばない。なにもかも本格ミステリとして定番の展開しか見せてくれず、逆転も完全に予想できてしまったのが不満なのだ。
こんな不満は贅沢きわまりないし、作者にとっては言いがかりにも等しいだろうけども。


07.1.5
評価:★★☆ 5
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