~あらすじ~
紀元前5世紀。相次ぐ戦乱の果てにアテナイは暗雲に覆われつつあった。
そんななか、奇妙な事件が連続して発生する。若き貴族が衆人環視下で不可解な死を遂げ、アクロポリスでは異邦の青年がバラバラに引きちぎられたのだ。すべては謎の“ピュタゴラス教団”の仕業なのか?
哲人ソクラテスが、比類なき論理で異形の謎に挑む。
~感想~
哲学者が探偵役――などと尻込む必要はない。文体はいたって平易。御手洗潔をほうふつとさせる奇人ソクラテスのキャラと相まって、簡単に読み進めていける。謎も島田荘司さながらに奇想が冴え、解決に到っては事象を再構築し別の世界を作り上げるという京極夏彦風味。よって、島田・京極のファンならばすんなりと作品世界に入っていけるだろう。
その分、終盤の哲学を利かせた論理の応酬にはちょっとげんなり。勝手な希望だが、もっと鬼面人を驚かす一発トリックを望んでいたのだが。
しかし(僕にはさっぱり解らんけど)ラストはプラトンの著したソクラテスの経歴をそのままなぞり、ソクラテス最後の選択を事件の解決と絡めたあたり、ものすごい技巧である。
書くのに非常に骨の折れるだろう労作ながら、読者に提供するのは解りやすく、楽しい物語。柳広司、ただものではない。
07.3.4
評価:★★★ 6
紀元前5世紀。相次ぐ戦乱の果てにアテナイは暗雲に覆われつつあった。
そんななか、奇妙な事件が連続して発生する。若き貴族が衆人環視下で不可解な死を遂げ、アクロポリスでは異邦の青年がバラバラに引きちぎられたのだ。すべては謎の“ピュタゴラス教団”の仕業なのか?
哲人ソクラテスが、比類なき論理で異形の謎に挑む。
~感想~
哲学者が探偵役――などと尻込む必要はない。文体はいたって平易。御手洗潔をほうふつとさせる奇人ソクラテスのキャラと相まって、簡単に読み進めていける。謎も島田荘司さながらに奇想が冴え、解決に到っては事象を再構築し別の世界を作り上げるという京極夏彦風味。よって、島田・京極のファンならばすんなりと作品世界に入っていけるだろう。
その分、終盤の哲学を利かせた論理の応酬にはちょっとげんなり。勝手な希望だが、もっと鬼面人を驚かす一発トリックを望んでいたのだが。
しかし(僕にはさっぱり解らんけど)ラストはプラトンの著したソクラテスの経歴をそのままなぞり、ソクラテス最後の選択を事件の解決と絡めたあたり、ものすごい技巧である。
書くのに非常に骨の折れるだろう労作ながら、読者に提供するのは解りやすく、楽しい物語。柳広司、ただものではない。
07.3.4
評価:★★★ 6