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ミステリ感想-『箱の中の天国と地獄』矢野龍王

2007年03月24日 | ミステリ感想
~あらすじ~
「二つの箱のどちらかを開ければ上階への扉が開く。ただし不正解には死の制裁が」
般若の面をかぶる謎の人物に集められた男女6人が、25階建の施設から脱出するためくり広げる極限の二者択一ゲーム。
彼らはただ運を天に任せるしかないのか、それとも正解の箱を選ぶヒントがどこかに隠されているのか?


~感想~
メフィスト賞受賞作『極限推理コロシアム』受賞第二作『時限絶命マンション』。
2年続けて糞ミステリを放った龍王が、沈黙を破り満を持して世に問う第三作――。
が、意外と楽しめてしまった。知恵を絞り罠をかいくぐるのは『CUBE』死にっぷりは例によって『バトルロワイアル』舞台設定は『アイランド』そして最後に明かされる真相は『●●●』と、映画をいさぎよいほどそのまんまパクッた物語が、予想に反して楽しい。
もちろん話は薄んぺんぺらだ。謎めいた施設は謎めいたまんまで裏も表もありゃしない。一見して嫌な性格に思えるキャラは本当に嫌な性格だし、おざなりの感動と羽毛よりも軽い人命もいつもどおり。しかし今作は徹底してゲーム的に描ききってくれたおかげで、いままでの作品のように無理な感動やむちゃくちゃな感情を押しつけられず、単純にサバイバルゲームを楽しめるのだ。
途中で攻略法が明かされたと思いきやルールがひっくり返ったり、最後の最後で(映画そのまんまだけど)意外なトリックを仕掛け、ただの雰囲気作りだと思っていた舞台に意味を持たせてくれたりと飽きずに読み通せた。
気軽にさらりと読めるエンタメ作家として生まれ変わった(?)龍王。これは案外おすすめかも。


07.3.24
評価:★★★ 6
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