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ミステリ感想-『バカミスじゃない!?』宝島社

2007年07月16日 | ミステリ感想
~概要~
世界初(?)のバカミスだらけのアンソロジー。日本が誇る(?)バカミスの雄が一堂に会した!


~収録作品・感想~
「長篇 異界活人事件」 辻眞先
先頭を切るにふさわしい怪作。完全に内輪ウケなのだが、ここまでやってくれれば。

「半熟卵(ソフトボイルド)にしてくれと探偵(デイツク)は言った」 山口雅也
下品。しかし下品さをミスディレクションにしたトリックが冴える。
その冴え方がバカミスなのだが。

「三人の剥製」 北原尚彦
ホームズパスティーシュ。ホームズ譚が終盤一気にバカミスへと転げ落ちる。
脱力の真相と無駄に重い背景がミスマッチを見せる。

「警部補・山倉浩一 あれだけの事件簿」 かくたかひろ
この程度の作品はネットにいくらでも転がっている。
1つや2つ取りだしてどうにかなるものではない。

「悪事の清算」 戸梶圭太
駄目な日本映画の見本のよう。こういうのは個人的に嫌悪しています。

「乙女的困惑(ガーリー・パズルメント)」船越百恵
3つの話が1つにつながり、そして最後にノンフィクションへ(?)
無駄に長いが一息に読ませてくれる。あまりにマンガ的な物語だが。

「失敗作」 鳥飼否宇
まさに失敗作。確信犯でバカミスを書かせるとこんなトンデモな物を出してくるとはさすが鳥飼否宇。

「大行進」 鯨統一郎
バカミスを書いてと言われたのにこんなのを出してきて。
鯨統一郎……空気読めない子!

「BAKABAKAします」 霞流一
もう「流石」と言うしかない。氏のために編まれたようなアンソロジーの掉尾を飾る、正真正銘のバカミステリ。ついでに傑作。さらについでにプロローグとは恐れ入った。


~総括~
霞・鳥飼両氏が確信的にバカミスを書いてきたというだけで読む価値十分。
多少のはずれは「だってバカミスだし」と大目に見られるのもいいところ。しかし霞氏の作品は掛け値なしの傑作である。
次回が万が一あるならば、藤岡真や蘇部健一、西澤保彦の参戦も願いたい。


07.7.16
評価:★★★ 6
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